第19話 【ナガツキ・ツキミゲッコウ】


「顕現せよ、三日月宗近みかづきむねちか

 奴は、何もない空間から刀身に反りがあり、片側だけに刃が付けられた剣のようなものを取り出した。

 しかし、それは両方に刃がついている剣とは別物のように感じた。

 その剣は、三日月形の「打ちのけ(刃の模様)」をしていた。

 それを奴は腰に差し込む。そして奴は、剣を鞘から抜き出した。

「「……!!」」

 姉さんと私は、奴がさやから抜いた剣に見惚れてしまった。

 刀身の優美な太刀姿と剣の縁に沿って浮かび上がるいくつもの三日月形の文様もんようは、観る者全てを魅了するほど美しかった。

 そして、それは優雅でとても品格があった。

「美しいだろ? この刀は」

 奴が刀を撫でるようにして話しかけてきたところで、私たちは我に返る。

「そんな美しさだけが取り柄のものに、私らは負けねぇよ!」

 その言葉を聞いた瞬間、奴から突然笑顔が消え失せた。

「あ゛〜゛ん゛? お前、今なんつった?」

 姉さんの言葉が奴には気に障ったようだ。

「これが美しさしか取り柄がない刀って言ったか?」

 奴は額に青筋を浮かべブチギレていた。

「二度も俺様を愚弄ぐろうするとは──良い度胸だ……。──苦しめてやるよ。殺してくれと言われても殺さずに生き地獄を味合わせてやるよ──」

 奴はこの世の声とは思えない低い声色で続ける。

「──絶対に容赦はしない」

「「────っ!!」」

 とてつもない威圧感により私らは息を詰まらせた。

 胸が引き裂かれるような錯覚も感じた。

 額からはドバドバと冷や汗が流れ出る。

 私たちは奴を絶対に怒らせてはいけなかったと後から後悔した。

和風月冥わふうげつめい一刀流奥義──」

 奴はゆっくりと歩きながら私たちに近づいてくる。

「エメラ、撃たれる前に奴の息の根を止めるよっ!」

「分かったよ! 姉さん!」

 私たちは全力で奴に向かって走り出す。

「──きゅうノ型」

 柄に手をかけ、奴の手が触れようとする。

火弾ファイヤーバレットッ!」

火槍ファイヤーランスッ!」

 姉さんは炎の弾、私は炎の槍を生成し奴に向けて放った。

 


 奴は目を見開き、その名を口にする。



「──ッッ!!」



 鞘に収まっていた刀身を素早く抜刀すると、私たちが放ったファイヤーバレットとファイヤーランスが断ち切られた。

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