第20話 愚者ニ名の選択

「──ッッ!!」

 俺は、姉妹が放った火属性魔法である火弾ファイヤーバレット火槍ファイヤーランスを容易く断ち切る。

「……まだまだだな」

 そんな独り言を呟く。

 遅い、遅すぎる。刀を振るうまで一秒もかかった。

 これでは、いざ敵が現れた時、自分の身を守ることが出来ないな。

 それに、この日本刀の三日月宗近みかづきむねちかもそうだ。

 魔力伝導率が高く、どんなに魔力を通しやすい魔道具であっても最大50%しか通すことが出来ない。

 100%の魔力を注いでも、魔道具の武器抵抗によりたったの50%しか効果を発揮できないとか、おかしいんじゃないか? 皮肉なことに残りの50%は、空気中に放出されてしまうため送魔(魔力を送ること)ロスになってしまう。

 この三日月宗近でさえ80%が限界だ。

 魔力を注いだ時に空気中へ放出される魔力の量を如何にして、限りなくゼロに出来る方法を考えないとな。

「さっきまで、俺に対して魔法なんて使ってなかったはずだが、何故今は使う?」

 まあ何となく分かるが一応聞いてみることにした。

「不甲斐ないが、私たちはお前を舐めてたってことだ」

 エメラの姉の額からは汗が流れていた。そんなに暑いだろうか。それとも、戦闘前に辛い物でも食べたのか?

「まあいいさ。どのみちお前たち姉妹の運命はすでに、決まっているんだからな」

 俺は口角を上げ「ふっ」と笑う。

「選べ。いつまでも、ここで苦しい状況の中で野垂れ死ぬか、俺の配下になるか」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「選べ! いつまでも、ここで苦しい状況の中で野垂れ死ぬか、俺の配下になるか」

 奴は、姉さんと私に二つの選択肢を提示してきた。

 姉さんは私の方に目を向けてきたので力強く頷く。

 それを見た姉さんは、安心した様子で笑い、奴に視線を戻した。

「「私たちは、どちらも選ばない」」

 姉さんと私は奴に真正面からハッキリと言ってやった。

「それがお前たちの答えか?」

「「そうだッ! 私(エメラ)と姉さん(私)は、何者にも縛られず、翼が生えた鳥のように自由に生きるッッ!! お前なんかに自由を奪われて──」」

 私と姉さんは、地についた足に力を入れて、それぞれ私は左、姉さんは右に持ったナイフを奴に向けて重ねる。

「たあぁぁまあぁぁるぅうう、かあぁぁぁぁあっ!!」

 姉さんと共に奴との距離を目にも留まらぬ速さで一直線に詰める。

「なら、覚悟するんだな。後悔してももう遅いッ! 自分たちが、実に愚かな行為をしたということをその身をもって思い知らせてやるッ!!」

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