第17話 ひとときの安らぎ

「み、見事だ……」

 それだけ言うと奴は地面に倒れ、事切れた。

「ハァ……ハァ……」

 私は、奴の体に向かって思い切り拳を叩き込んだ。

 叩き込んだ拳は槍のごとく貫通し、奴の体に大きな穴を空けた。

「姉さんっ!」

 私は呆然とする姉さんに駆け寄って、抱き締める。

「……勝ったのか?」

 まだ勝ったことが信じられない様子で姉さんは私に聞いてくる。

「──私たち、勝ったんだよ……」

 私は姉さんに間髪入れずに答える。

「……そうか」

「うん」

 姉さんと私は、強敵に勝ったことに安堵あんどし、全身から力が抜けて地面に座り込む。

「「ぷっ、ははははははっ!!」」

 姉さんと私は、お互いに顔を見合わせながら笑い合う。

「エメラ、私たち……やったんだな……」

「そうだよっ! 姉さん、私たちはやったんだよ!」

 私は目から溢れるたくさんの涙を流しながら姉さんを肯定する。

「あっ、雨が──」

私が空を見上げると雨が上がっていることに気付く。

「止んだ、みたいだな。──よっこらしょ!」

「姉さん、体の調子は大丈夫?」

「お前ほどじゃないから大丈夫だ。調子はすこぶる良いぞ!」

「ほら」っと右肩を回して見せる。

「もう、姉さんったら」

 私は口角を上げて微笑む。

 そのとき──

「「────ッ!!」」

 私たちは通路の奥の方から近付いてくる気配に向け視線を飛ばす。

 コツッ、コツッ、コツッっと足音が一定のリズムで聞こえてくる。

「ま、まさか──」

 私は忘れていた。私たちではないアイツらと戦っていた存在を──。

「──ウソだろ……終わったと思ったんだけどな」

 姉さんは顔から冷や汗をだらだらと滝のように流し苦笑する。

 そして影から血の色に染まったメイド服を着た人物が現れる。

 血なまぐさい臭いを漂わせる男たちの首が両手にぶら下げられていた。

 その中には、あのリーダーの男の首も──。

「……お待たせいたしました。遅くなって申し訳ございません。ルイス様」

 メイドのベルファストは一言、そう言うのだった。

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