第2話 森重の、相談、とは…?

「一縷さーん!たっだいまー!!いるー!?」


「あぁ、櫂、お帰り。一縷さんなら、今買い出しに行ってもらってるけど?勉強?」


「う~ん…まぁ、一縷さんに話すわ」


「何よ。お母さんじゃ、相手にならないの?」


「まぁ、そう言うなよ、母さん。一縷さんの優秀さは母さんだって解ってるだろ?」


「それはそうね。一縷さんには、私に才能がわんさかあるものね!」


「母さん、一縷さんにいちいち嫉妬しない!」


「してないわよ。あそこまで突き放されちゃ、敵うわけないもの」


「そう思ってるなら、一縷さん、帰ってきたら、俺の部屋によこして」


「はいはい」


母さんは、別に一縷さんの事を決して嫌っているわけではない。ちょっとした嫉妬は、あるかも知れないが…。何より、俺が、母さんより、一縷さんを頼るのが、気に喰わないらしい。


「ただいま帰りました」


「あ、一縷さん」


「あ、奥様。遅くなって申し訳ございません。もう櫂ぼっちゃまのお勉強のお時間ですね」


「え、えぇ…それもそうなんだけど、櫂が、一縷さんが帰ってきたら、自分の部屋に来て欲しいって言ってるの」


「は…はい。かしこまりました。では、冷蔵庫に片づけたらすぐに…」


そう言って、一縷は、てきぱきと仕事を終わらせ、櫂の部屋に向かった。


コンコン。


「櫂ぼっちゃま。入ってもよろしいでしょうか?」


「あー、いーよー」


「失礼いたします」


「ごめんね、一縷さん、忙しいのに」


「いいえ、宿題の方は、どのあたりまでお進みになられましたか?」


「あ、や、今日は、一つ、相談があって、一縷さんを呼んだんだ」


「ご相談…。わたくしに務まるものでしょうか?」


「一縷さんなら…多分、大丈夫だと思って…」




ピーンポーン…。




「あ、インターフォン…。わたくし、ちょっと行ってまいります」


「あ、よろしく」


「はい。失礼します」


一縷は、深々とお辞儀をすると、櫂の部屋から出て行った。




ガチャリ…。




扉を開けると、櫂の同級生の、森重倭もりしげやまとが、なんだか縮こまって、玄関の外に立っていた。

一縷は、一度見た顔と名前は絶対忘れない。この時も…。


「森重さん。あ、櫂ぼっちゃまが言ってらした、相談と言うのは、もしかして、森重さんのご用件なのでいらっしゃるのですか?」


「あ…まだ…あいつから、聞いてない?」


「はい?聞いて…ない、とは?」


「あー!良いの良いの!上がってもらって!一縷さん!」


「あ、はい!かしこまりました!申し訳ございませんでした。森重さん。こんな玄関などで立ち話などをさせてしまって…」


「あ、いえ…」


「?」


一縷は、この時、森重が何か悩み事があるのだろう、と、早くも、勘づいていた。




「こっちこっち。俺の部屋」


「へー…めっちゃ広いな…」


「今、お紅茶をお入れしてまいります」


「あ、ありがと。一縷さん」


「イイエ。少々お待ちください」





「なぁ、あの人に話せば、本当に俺の解決すんの?」


何やら、コソコソ話が始まった。


「う~ん…解決って言うか…ヒントには、なると思う!絶対!…あ!」


「ん?何?」


「絶対って言葉、簡単に使うな、って一縷さんに言われてたんだよ。俺」


「なんで?」


「まぁ、一縷さんと話せば、解るんじゃない?」


そう言って、櫂はウインクをした。

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