第155話 戦闘開始!
「おぉぉお!!」
船員たちは一斉に雄叫びを上げ、それぞれ配置につく。船長が大声で指示していく。
「ディノとイーザンも出るの?」
「まあ、仕方ないよな」
「海の上で戦闘って、経験は……あるわけないよね」
そう言いながら苦笑すると、ディノも苦笑する。
「ないな。そういう意味では今回俺はあんまり役に立たないかもなぁ」
「イーザンは魔法があるけど、ディノは剣だもんね……」
「あぁ」
そうやって遠い目をしていると、ヴァドがディノになにかを放り投げた。
「ディノ! オキ! これを使え!」
「? なんだこれ?」
見るとなにやらベルトのような? オキは知っているのか、嫌そうな顔。
「それは船と自分を繋ぐ魔導具だ。腹のところに魔石があるだろ、それに魔力を送ると船にある魔導具と反応し合って、反発する。それを使って跳躍すれば、自力で跳躍するよりももっと高く柔軟に飛べる。まあ失敗すると海に落ちるがな! アッハッハ!」
な、なんか凄い魔導具だけど、失敗すると海に落ちるって……。若干ディノの顔が引き攣ってるし……。
「上手くタイミングを計って跳躍しろ。きっとディノなら使いこなせる」
「お、おう」
ディノはヴァドから渡された魔導具を腰に装着し剣を抜いた。イーザンは魔法専門でいくようだ。魔導剣を抜きつつ、魔力を溜める。オキは嫌そうな顔をしながら、やれやれと同じく魔導具を装着していた。
「ルーサとリラーナは船長の傍にいろ!」
ヴァドはそう叫ぶと自身にもディノたちに渡したものと同様の魔導具を装着させた。
私とリラーナは言われた通りに船長と共に、状況を見守る。ルギニアスは大きくなり、私とリラーナを庇うように立っていた。
船は二匹の魔獣たちに近付き、次第に船の揺れはさらにと大きくなる。激しく揺れ、立っていられないほどのなか、私たちはルギニアスに支えられるが、船長は仁王立ちのまま二匹の魔獣たちを眺めニッと笑った。
二匹が激しく攻撃し合い、次の攻撃に移ろうかという瞬間、船長の叫びが響いた。
「行け!」
その合図と共に獣人たちは一斉に船から大きく跳躍し、一気にクルフォスへと飛び掛かった。ドグナグーンは次の攻撃に移る瞬間海中へと潜る。その間だけは二匹は離れるのだ。その瞬間をつく。
クルフォスに一斉に飛び掛かった獣人たちは、不得意だと言っていた剣や魔法で攻撃を仕掛ける。ディノも獣人たちから数秒遅れて跳躍し、剣を振るう。
クルフォスの身体は巨大ではあるが、毛並みや動きなどは他の獣とさほど大差はない。剣で斬り裂けないほどの硬さがあるわけでも、尋常ではない動きをするわけでもない。ただ放つ炎には注意が必要だが。
何人かの獣人が魔導具で動きを拘束し、クルフォスの動きが止まったところを斬り付けていく。クルフォスは激しく暴れ口を大きく開くと、皆一斉にベルトの魔石に魔力を送り、クルフォスの背後へと跳躍していく。
炎を吐き出そうかという瞬間、私は魔力感知を行いクルフォスの炎を操作した。ぐふっとクルフォスは自身の炎が放出出来ないことに、訳が分からないといった状態となる。周りの獣人たちも同様に「?」といった顔だった。
「ん? なにかしたか?」
船長がそんな状況を目にし、私たちに目をやった。
「え、あー、ハハ、ちょっと……」
リラーナもなにが起こったのか、といった顔で私を見ている。しどろもどろになるが、それでもクルフォスが激しく暴れ出したため、再び船長の視線はクルフォスへと向かった。
もう少しで留めを刺せそうかと、思っていると、海中から再びドグナグーンが飛び出してきた。
動きを魔導具で封じられていたクルフォスは、ドグナグーンの鋭い牙に思い切り噛み付かれる。
『ギュァァァァアア!!』
悲鳴のような激しい声を上げたクルフォスは大きく旋回すると、魔導具を持った獣人を薙ぎ払った。その瞬間拘束が解け、獣人に向かい鋭い爪を振り回す。獣人たちは大きく跳躍し、それを回避すると、剣で背後から翼を斬り付ける。翼が傷付いたクルフォスはバランスを崩し落下する。その瞬間、ドグナグーンの牙がクルフォスの首を貫いた。
クルフォスの首に噛み付いたまま、ドグナグーンは自身の身体をクルフォスに巻き付け、さらに締め上げていく。
唸り声を上げていたかと思うと、クルフォスが動きを止めた。
そしてその瞬間、獣人たちが今度は一斉にドグナグーンへと攻撃を開始した。
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