第151話 ガルヴィオの魔導具
「あの魔魚が今回魔導具に反応したやつではないのね?」
「ん? あぁ、あの程度の魔魚には反応しない。船が襲われる危険性の高いやつ……まあ、魔力が高いやつってことだが、そんな魔獣や魔魚に反応するようになっている」
なんとなく分かってはいたが、やはり出航前に魔導具に反応したという魔獣や魔魚は魔力が高いやつってことか……。そうなると本当にいたとなるとかなりの危険を伴うってことよね……大丈夫かしら。
「ま、行ってみないことには分からないからな。探りながら進んでいるから、まあそんな心配すんな」
ヴァドはそう言いながら私の頭をワシワシと撫でた。
「ちょ、ちょっと! 子供扱いしないでよー!」
「んー、さっきディノが撫でてたじゃないか、アハハ」
物凄く背が高く屈強なヴァドと並ぶと本当に大人と子供のように見えてしまい、なんだか情けない気分になってしまう。
「おいおい、レディーはもっと大事に扱わないとなぁ」
いつの間にか背後にいたオキが恭しく私の手を取り、手の甲に口付けるふりをした。
「「「!?」」」
「「気持ち悪っ」」
「酷っ!」
ディノとイーザンとルギニアスは驚愕の顔となり、私とリラーナは悪態をつき、オキはわざとらしくショックを受けた、といった顔をする。
「アッハッハッ! 本当に仲が良いんだな、お前ら」
ヴァドは大笑いをしているが、オキとは仲が良いという誤解を生んでしまい苦笑する。まあ、まさか尾行されていた側と尾行していた側とは思わないわよね。
船は特に問題もなく順調に進み、周りで泳ぐ魔魚や魚たちも特になにもなく、穏やかな時間が過ぎて行った。
魔獣を感知するという魔導具が船長の元にあるということで特別に見せてもらい、リラーナが興味深く観察していた。
その魔導具の魔石は風魔法と土魔法と雷魔法が付与されてあるようで、地脈を感じ方角を知り、風魔法と土魔法と雷魔法の合わせ技で、どうやら魔獣などの魔力を感知することが出来るということだった。
それはガルヴィオ側にも同じ魔導具があり、それと連動させ同時に発動させると位置と魔力を感知することが出来るといった代物だった。
「はぁあ、本当に凄いわね。こんな三種類の魔法の合わせ技なんて考えなかった」
「ひとつの魔石にはひとつの魔力付与しか出来ないからね。まさか違う種類の魔石を一緒に使用して同時に連動させるなんて考えないよね」
「攻撃系には同時に発動させることはあるがな」
私とリラーナが話し合っているとイーザンが呟いた。
「あぁ、そういえばイーザンの魔導剣は炎と雷を同時発動してたっけ」
振り向くとイーザンは頷いた。そうだ、イーザンの魔導剣は炎系の魔石と雷系の魔石が埋め込まれてあって同時に発動していた。
「おそらくそれと似たような感じなのだろうな。同時にいくつもの魔力を発動させ、それらを融合することで違う力を生み出す」
「はぁぁ、なにそれ、凄過ぎる」
リラーナが魔導具を見ながら溜め息を吐いた。
「ハハハ、お前たちさすがだな。一発でそこまで見破るか」
船長が声を上げて笑う。
「でもさすがにどんな魔力が発動しているかは分からんだろ?」
ニッと楽しそうに笑う船長の挑戦的な目。確かに風魔法と土魔法と雷魔法、それらが一緒に発動したからと言って、それがどう融合してどんな風に発動しているのかは分からない。
「今も発動しているんですよね?」
「あぁ」
感知してみてもはっきり言ってよく分からない。それぞれの魔力は感じるがそれが発動し融合してしまうと今まで感じたことのない魔力となっている。この魔力がどうやって魔獣や魔魚の魔力を感知しているのかも分からない。
「悔しいけど分かりません」
「アハハハ!! 正直でよろしい! さすがに教えてはやれんけどなぁ。まあ考えるのは自由だ。船にいる間は自由に見せてやるから考えてみろ」
船長は楽しそうに笑った。私とリラーナはお互い顔を見合わせ、ぐぬぬと言った表情。
「きぃぃ、悔しい! 絶対解明してやる! それで私も作ってやるんだから!」
リラーナはそう意気込んだ。そんな姿にディノとイーザンは苦笑していたが、オキとヴァドは船長と一緒になって笑っていた。ルギニアスは相変わらず呆れた顔だったけど。
夜になり食堂で夕食をいただく。船のなかということで、大したものはないんだがな、とヴァドが笑いながら言った。
「それでも昔よりは保存食が豊富になったから美味いものが食えるようになったらしい」
「らしい?」
「ん? あー、俺は元々船員じゃないしな。昔のことは詳しく知らない」
「え、ヴァドって船員じゃないの?」
「言ってなかったか?」
「えぇ! 聞いてないよ!」
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