第52話 魔獣の森へ!
全ての準備が整い、ついに特殊魔石の採取の日がやって来た。
その日は朝からリラーナが気合いを入れた朝食を用意してくれ、しっかりとお腹いっぱいに食べて元気いっぱいに!
前夜、興奮して眠れないかと心配になっていたら、急にひょっこり姿を現したルギニアスが、またなにか魔法でも使っているのか、そっと額に手を触れるといつの間にやら眠っていた不思議。ルギニアスって本当に不思議だわ。いつかもっと色々ルギニアスのことを教えてもらえるかしら……。
着替えを終え、準備も整うとリラーナに見送られながらついに出発!
「気を付けてね! 頑張って、ルーサ!」
「ありがとう、リラーナ! 行って来ます!」
扉の前で大きく手を振って見送ってくれているリラーナに手を振り返しながら、ダラスさんと共に出発する。
「護衛の奴等とは街の外で待ち合わせているから行くぞ」
「はい!」
ダラスさんに付いて王都の入り口、街の外へまで歩く。朝もまだ早い時間のため、少し肌寒く、店もようやく準備が始まったかといった雰囲気だ。朝靄の漂うなか冷たい空気が心地良い。
街の入り口付近まで来ると、すでに朝陽も昇り陽射しが差し込んで来ていた。陽射しの暖かさを感じるようになってきたかと思っているとき、街の入り口に二人の男の人が立っていることに気付く。
「あいつらだ」
ダラスさんはその男性を見ながらそう言った。
「よっ! おはよう」
「ダラスさん、久しぶり」
一人はダラスさんと同じ歳くらいだろうか、白い短髪に緑色の瞳をした男性。腰に長剣を下げ、屈強な身体付き。
もう一人はダラスさんよりは少し年下そうな、赤い短髪に琥珀色の瞳をした男性。こちらはなにやら簡易的なローブに杖を持っている。魔導師さんかしら。
「ゲイナーとシスバだ」
「よろしくな、お嬢ちゃん。ダラスの弟子だってな」
「ルーサちゃんだっけ、僕は魔導師のシスバ、よろしくね」
お嬢ちゃんと呼んだのが剣士のゲイナーさん、優しそうな魔導師さんがシスバさん。
「ルーサです、今日はよろしくお願いします」
「ダラスがようやく弟子を取ったって聞いたら、またえらい予想外の子だったなぁ」
そう言いながらワハハと笑うゲイナーさんは、私の頭をワシワシと撫でる。大きな身体に大きな手、腕も太いしさすが剣士といった感じだけれど、陽気な感じが親しみやすい。
「本当にね、びっくりだよ。ダラスさんが女の子を弟子にするとはねぇ」
やはりここでも予想外で驚いたという二人。本当にダラスさんて弟子を取るように全く思えない人だったのね……。
しかしそれを説明する気は全くないダラスさん……。メンタルが強い……。
「無駄口を叩いてないで、行くぞ。今日はルーサがいるからな。暗くなる前には撤収するつもりだ」
「「了解」」
ダラスさんの言葉に二人は顔付きが変わった。
「さて、お嬢ちゃんの初陣だな!」
「頑張ってね!」
二人に背中をポンと叩かれ、緊張の出発!
歩いて街を出たことは今までなかった。街の外へ出たのは精々ローグ伯爵領までの道のりと魔石採掘場くらい。それも馬車だ。歩いて街の外を出歩いたことなどない。基本的には毎日の忙しさで街の外まで行く機会などほとんどない。
そう思うと新鮮で仕方がなかった。街の周辺は比較的に舗装されている道が続き、歩くのにも馬車が通るのにも不便はない。しかし少し離れてくると舗装もなくなり砂利道が続く。それでも切り開かれているところはまだ歩きやすいらしい。
少し離れた場所になってくると草むらが鬱蒼としていたり、崖や岩だらけのところもあるそうだ。
今日行く森は王都からそれほど離れていないらしいが、魔獣や魔蟲が住む森なので手入れはほとんどされておらず、薄暗く鬱蒼としているらしい。森の周りには結界が張られ、定期的に騎士団が見回りをしてくれているらしく、森のなかに住む魔獣たちが王都に来ることはないそうだ。
森の結界には入り口があり、魔石精製師は許可をもらい中へと入ることが出来るらしい。
王都から舗装された道を外れ、しばらく歩くと徐々に草木が増えて行く。さらに進むと鬱蒼とした大きな森が現れた。
巨大な森には立ち入り禁止の札が掲げられ、柵が張られている。騎士の人が二人立っているのが見える。
ダラスさんはその人たちに近付くと、首元から何かを取り出した。ペンダントのようなそれを首から外すと騎士に見せた。
「魔石精製師のダラスだ。魔石採取のため、中へ入らせてもらいたい」
騎士はダラスさんから渡されたそれを確認すると、再びダラスさんに返した。
「確認致しました。四人ですね。どうぞお入りください。なにかあればこちらの魔導具で連絡を」
「ありがとう」
ダラスさんは騎士からなにかを受け取ると、森へと足を踏み入れた。ゲイナーさん、シスバさん、私と続き、二人は騎士と顔見知りなのか、軽く手を上げ笑顔で挨拶をしていた。
騎士の人たちは私を見ると少し驚いた顔をしていたが、にこやかに「お気を付けて」と声を掛けてくれた。
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