第43話 精製魔石の組式
最近ルギニアスが出て来てくれないなぁ、あのとき「魔王は敵だ」って言ったことがよくなかったのかしら……あのときはルギニアスが魔王だなんて全く思っていなかったから、ああ言った訳で……本当にルギニアスが魔王……なの?
いやいや、そんなはず……ルギニアスが人間たちを殺そうとしていたなんて想像も出来ない。そもそも封印はどこにされているのかしら……私の周りに出てくる意味も分からないし……本当に魔王なのだとしたら……私はどうしたらいいんだろうか……。
お父様とお母様の行方も分からないままだし……もう! なんでこんなに分からないことばかりなのよ! 誰か教えて!
「なに百面相をしているんだ」
ギクッ。
ゴリゴリと精製魔石に勤しんでいたらダラスさんにいきなり声をかけられビクッとした。ゴリゴリしながらかなり考え込んでいたようだ。すっかり魔石原石は粉々になっていた。
「あ、いえ、なんでもありません!」
慌てて笑って取り繕う。
「そういえば……」
ゴリゴリと精製魔石を精製するのにも慣れてきていたため、先日研究所棟へ見学に行ったときに気付いたことをダラスさんに確認してみることにした。
「この前研究所棟に行ったときに気付いたんですけど、精製魔石って『構築』ですよね?」
「…………フッ、『精製』が分かってきたな」
ダラスさんが珍しく少し笑った! それを見て嬉しくなり私も満面の笑みに!
「お前の考えは?」
作業の手を止め自分の考えを、頭のなかで整理しながら口にしていく。
「えっと、まず精製魔石を精製したときに、結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力を同時に送ることが凄く難しかったんです。だから別々に送るのではなく、体内で先に混ぜ合わせ、練り上げて送ると成功したんですよ。そこから研究所棟でお話を聞いている間に、魔石を精製するには様々な要素を組み合わせていって、そこから練り上げていくんじゃないかな、と。だから『構築』していく、ということではないかな、と思って」
「ふむ、大体は合っているな」
「やった」
思わずガッツポーズ。そしてダラスさんは作業台に紙を置いて、色々な記号のようなものを書き説明していってくれる。
「結晶化の魔力を〇とする、魔力付与対応の魔力を×とする、そしてその魔力付与の種類によって変わる要素を△とする。ただしこの△はこれだけではない。そこに様々な要素があり、それらの組み合わせによって×が出来る。
〇と×が基本としてあるが、×は△であったり▽であったり、▲や▼でもある訳だ。
〇+×(△▽)
〇+×(▽▼▽)
〇+×(△△▼▼)……
であったりと、様々な形がある。そこにさらに魔素となるための元を組み合わせていくと魔力だけで練り上げて精製する魔石が出来上がる」
実際自分でろ過蒸留の精製魔石をしているので、今言われたことはおそらくやっているのだろうけれど、こうやって書き出して説明されるとなんだかとんでもないことをやっている気分になる。熱が出そうだわ……。
「魔素の元というのは……」
そんなものを精製出来るのかしら、と疑問になってしまう。
「魔素の元はこの魔力を組み合わせる前に練り上げる基本となる核だ。そこに先程の魔力の
ダラスさんが一度手本を見せる、と椅子に座り集中し出した。
「魔力感知しながら追ってみろ」
そう言ったダラスさんは両手でなにかを包んでいるかのように、身体の前に拳一つ分の隙間を作るように両手を構えた。そして目を瞑り集中する。
言われるままに魔力感知を行ってみる。意識をダラスさんの身体、手の先に集中させる。
ダラスさんの身体のなかになにかがチリチリと揺らぎ出したのが分かる。これは……あの天然魔石を感知したときに感じた魔素……? 魔力とは少し違う力。それがダラスさんのなかで少しずつ大きくなってきたかと思うと、今度はまた違った力を感じる。
これは魔力ね!
結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力。それらが同時に体内に溢れ出し、じわじわと魔素を感じた辺りに集まってくる。魔力付与対応の魔力はそれをさらに深く感知すると、なにか不思議に色々な気配を感じた。これが様々な要素……。
次第にそれらすべての魔力が一か所に集まり混ざり合っていく。そして一つとなったそれはダラスさんの両手に集まっていき、掌から外へと放出されていく、魔力の気配が目に見える訳ではないのだが、その中心、ダラスさんの両手の中心部分にはチリチリと激しい魔力の渦が現れた。
とても小さな魔力渦。そこにとてつもない魔力量が集まっていることが分かる。小さな魔力渦は次第に大きくなっていき。激しい光を伴っていた。大きくなっていくと次第にそれは赤い魔力だと判別出来る。
赤い魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げダラスさんの手に収まった。
※組式=作者造語です
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