第5話 女子の部屋
さて、タワーマンション内の川上の部屋に行く事が決まった。雪美たんが現れて、数週間後の事である。よいよ、雪美たんの部屋か……。
義母の初美さんと四人でエレベーターに乗る。タワーマンション内を移動して。川上の部屋に着く。ガシャと鍵が開き中に入る。間取りは同じでふぁっといい匂いがする。待てよ……間取りが同じと言う事は、雪美たんの部屋はこっちか。
「ダメ、お兄ちゃん!」
もう、遅い。こないだ下着の買い物事件で舐められてしまった。ここは兄としての威厳を保つのだ。私がドアを開けると。女子の部屋が広がっている。
念願の女子の部屋に入れたぞ。
しかし、少し散らかっているのが生々しい。このままだとパンツでも出てきそうなので直ぐにドアを閉める。うむ、満足した。私はダイニングキッチンに行き、まったりと座る。
「むーーー」
雪美たんは少し不機嫌である。
「あらあら、すっかり、仲良しさんね」
初美さんが関心していると鍋に入ったカレーを温め始める。川上の家でカレーパーティーの始まりであった。
そして、私は川上の部屋にて冷蔵庫の前に立っていた。そう、雪美たんの部屋は興味があったので開けたが。冷蔵庫となれば違う。見ていいモノかと悩んでいた。いやいや、親同士が結婚したのだ。もう家族だ。私がビーガンである事は覚えていたらしく。テーブルの上には一皿だけサラダが置かれていた。しかし、ドレッシングが欲しいのである。
「初美さん、ドレッシングはこの中ですか?」
「植物由来のモノね、奥の方にあるわ」
自分で開けろともうすか。ここは遠慮し過ぎかもしれない。私が冷蔵庫に手をかけるとドアを開けてドレッシングを取り出す。席に戻ると手にしたドレッシングをサラダにかけて食べる。雪美たんは一足早く食べ終わったらしく。テレビの方に行ってしまう。そして、私がサラダを食べ終わると。少し居心地が悪い。テレビの方には雪美たんが居るし。親の二人は仲良く喋っている。
「和人さん、お風呂に入っても良いわよ」
「えぇ」
「タオル用意しますね」
断り切れずにお風呂に入る事になった。お風呂に入ると汗だくであった。それはお湯の中で色々妄想していたからだ。
「顔が赤いな、ベランダで休むといい」
「ありがと、雪美たん」
私はベランダに出ると風を感じる。ふ~う、お風呂の中で考えていた妄想を語ることを止めた。男子の妄想など要らないな。おや、この部屋からだと電車が走るのが見える。このタワーマンションは駅前に立っているのだ。私がベランダから戻ると父親が自室に戻る支度をしていた。私は上川の部屋に来るのは初めてである。それは父親にとっても新しい生活の始まりであり。このタワーマンションは四人で暮らすには狭いので、ある意味、家族の生活はバラバラであった。これは家族の関係としては新しい形だ。
「お兄ちゃん、今夜、電話をかけていいかな?」
義妹の雪美たんがモジモジしながら寄ってくると、私の手を取り手のひらに『の』の字を書いてくる。謎の儀式が始まったのかと首を傾げる。そう『の』の字である。
「雪美たん?」
私が問いかけようとするとサッと逃げてしまう。
「とにかく、今夜の電話は問題ないがいいか?」
「はい、お兄ちゃん」
そんな会話の後、玄関を出てエレベーターに向かうのであった。
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