第4話 義妹のいる日常
体育は苦手だが勉強はそこそこできる。放課後、図書室で一時間は勉強をする。これと言って大学に入ったらやりたい事などないのに勉強だけは頑張っている。親いわく、大学に行けば進路の可能性を増やす事ができるとのこと。それでいて受験勉強して良い大学に入りたいのは、基本、勉強が好きだからなのであろう。そんな事を考えながら勉強する。
うん?
こんな時間か……。
私は帰宅の準備をして図書室を出る。その時である。偶然、妹の雪美たんと図書室の玄関ではちあわせした。
「何、お兄ちゃんも勉強?」
「あぁ、そんなところだ」
「私も、明日の英語の小テスト対策の勉強なの」
そんな事言っていたな。私にとっては意味の薄い小テストだが、雪美たんにとっては大問題らしい。
「ホント、ぶつぶつ……」
あれ、今日は私と一緒に居ても機嫌が治らない。
『不機嫌な少女』は伝説の左足で蹴る対象を探している感じである。
ここは自販機で何かおごるか、確かリンゴジュースが新しく入ったはずだ。
しかし、毎度、自販機のモノで釣るのもなんだ。私はグランドに行き、サッカーボールを用意する。
「雪美たん、伝説の左足を見せてくれないか?」
「は?」
「フリーキックだよ」
雪美たんは渋々、スカート姿でフリーキックをする。
バン!
飛んだなー。サッカーボールは放物線を描いてグランドの端まで飛んでいく。これってスカートの中が丸見えだけど言わないでおこう。
「ふ~う、壁を蹴るよりはスッキリしたわ」
雪美たんの機嫌も少し良くなった。
「お兄ちゃん、ジュースおごって」
「はい?」
「久しぶりに気合を入れたら喉が渇いた。丁度良くリンゴジュースが新しく入ったのよ」
へいへい、伝説の左足が見られたから、よしとするか。私達は自販機の前に行き、雪美たんにおごるのであった。
***
私は今、大型スーパーの下着売り場にいる。周りに有るのは色鮮やかなランジェリーである。何故、この様な事になったかと言うと、数時間前の事である。
「お兄ちゃん、起きて」
義妹の雪美たんが、私の布団の上で暴れている。
「もう少し……」
「ダメ、下着が無いの」
むむ、このタワーマンションで泥棒か?私が急いで起きると。
「私のお気に入りが痛んだの」
何だ、緊急事態ではないのか。私がもう一度、寝ようとすると。
「一緒に買いに行こうよ」
布団の上から伝説の左足がヒットする。
「うぐ!」
これ以上は不味いここは急いで起きよう。そして、朝食もそこそこに大型スーパーに出かけることになった。これが今日の苦行の始まりであった。
自転車で20分ほどにて大型スーパーに着くと。雪美たんはWバーガーで食事がしたいと言い出す。ビーガンの私は見ているだけであった。昔、ファミレスでサラダを頼んだ時のことであった。小さなエビが入っていて、全部エビを出した経験がある。
あれ以来、外での食事に難儀していた。
「お兄ちゃん、サラダ頼んだら?」
仕方がない。店員さんに念のためしつこく聞き野菜だけである事を確認した。
その後、下着売り場に移動して、雪美たんは色々あさっている。
「このクリーム色のブラなんてどう?」
何故、私に聞く。これは大混乱であった。
「着けてみるね」
おう、それでその先はどうする。
「えへへへへ、その顔、照れている、お兄ちゃんは可愛いな」
そう言うと雪美たんは試着ゾーンに入り着替えるのであった。
「彼氏さんも大変ですね」
下着売り場の店員さんが同情の声をかけてくる。彼氏さんか……ここで妹だと言ったら変態扱いなのであろうか?
「着替えたよ、見てみて」
憂鬱であるが仕方がない。私は試着ゾーンのカーテンの前まで行く。
「じゃん、下着姿を期待した?」
そこに立っていたのはさっきまで着ていた服である。どうやら、下着だけ着替えたらしい。何だ!この絶望感は!!!
イヤ、期待したのは間違い無いがここまでショックであるのか。
「えへへへへ、期待したお兄ちゃんにご褒美だよ」
すると、雪美たんはスカートを上げて下着を見せる。いかん、クラッとした。どうやら私は女子に対しての免疫が無いらしい。その場を離れると鼻血でも出てないか確認する。
よーし、大丈夫だ。
ランジェリー売り場に来た時点である程度は覚悟したのだ、ここは平常心である。そして、雪美たんは新しい下着を買えて満足そうである。私は気を取り直して美雪たんと一緒に帰るのであった。
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