第15話 正式な申し出
残ったオアザたちと村長、それにアナトミアは、マコジミヤ達が出て行くと、そろって息を吐く。
「はぁ……疲れた」
「まさか、捕らえようとするとはな。怪我は無いか?」
「大丈夫です。これくらいは想定はしていたので」
オアザの言葉に、アナトミアは笑顔で返す。
この程度の痛みは、許容すべきだろう。
今回の話は、アナトミアが計画したモノだったからだ。
「お役人さん達が来るというので、色々試したかったのですが、思ったよりもヒドかったですね。死罪を言い渡されるなんて」
国に雇われているドラゴンの解体師ではなくなったアナトミアがドラゴンを解体すればどうなるのか。
法律上は問題ないとオアザから聞かされていたが、実際は役人達はアナトミアを捕らえようとした。
「私も、勉強になった。あのように、平然と法を無視する役人がいるとはな」
マコジミヤが、あまり良い役人ではないのは知っていたが、問題は討伐部の役人達だ。
「マコジミヤを、止めることさえしなかったな。彼らの言うことに疑問さえもたなかった兵士達もだが……」
「兵士のような人達は上官には逆らえないですし、討伐部のお役人さん達も、別の部署のことなので管轄外として静観していたのでしょう」
アナトミアも、お役所でドラゴンの解体をしているときに討伐部の役人は何人も見たが、話しかけるほど仲が良くなった者は数人しかいない。
「それにしても、あの様子ではドラゴンの解体に困っていないのですね」
「そうだな。ドラゴンの解体師殿に泣きつく展開も考えていたのだが……」
マコジミアが、アナトミアをすぐに死罪にしようとしていたことから、ドラゴンの解体作業に問題は発生していないのだろう。
「別のドラゴンの解体師が見つかったのでしょうね」
「そう簡単に見つかるようなモノではないと思うが」
「私が出来ているので、他の人も出来るでしょう」
ドラゴンの解体は特殊な作業ではあるが、人に出来ない事ではない。
実際に、アナトミアも技術を身につけているのだ。
「作業の手順をまとめさせられたこともあるので……」
今思うと、アレはアナトミアを解雇させる準備だったのかもしれない。
今後のドラゴンの解体のためだ、と言われて書いていたのだが、それで自分が職を失う羽目になるとは思いもしなかった。
「そんなこともしていたのか」
「はい。まぁ今更ですね」
気分を変えるために、アナトミアは話題を変えた。
「それにしても……シュタル・ドラゴンの素材は、王様へ贈られるのですね」
「ああ、旅の途中だしな。土産として、いくつか手元に残しているが……」
オアザは、アナトミアの方に向き直る。
「これから、私は西のパリフィムへ向かうが、ついてきてくれるか?」
これまで、教えてこなかった目的地を告げて、オアザがアナトミアに問う。
その問いに対するアナトミアの答えは一つだ。
「道中、ドラゴンの体があれば、解体をしてもよろしいですか?」
ドラゴンの解体が出来るかどうか。
アナトミアの質問に、オアザは笑う。
「もちろん。許可する。存分に解体してくれ、ドラゴンの解体師殿」
「ならば、喜んで雇われましょう。ドラゴンの解体師として」
こうして、アナトミアは正式にオアザ専属のドラゴンの解体師になるのだった。
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