第12話
「俺は、レン・アン・エルメルドール。帝国第二皇子で現皇帝の弟だ。あいつの治める国がどんどんひどくなって耐えられなくなって出た臆病者だ」
男は堂々とした口ぶりで自己紹介をした。
威圧をかなり感じるがこれは耐えることになりそう。
「私はミア・アン・エルメルドールです。お兄さまの実の妹です。一緒に国を出ました」
そこの兄とは違い丁寧に自己紹介をしたミア。
「あ、あのー。ミアちゃんは……あ、ごめんなさい。ミアさんはおいくつなんですか?」
私はミアに対してそんなことをいきなり訊いてしまった。疑問がそのまま口に出ていた。しかも、ミアちゃんなんて無礼な。
「私は10歳です」
「「10歳⁉」」
私ともう一人レアは驚いた。
でも、どうやら私とレアが驚いた理由は違ったようだった。
私が驚いたのは、ミアちゃんが10歳だということに対して驚いていた。かわいいとか今すぐ抱きしめたいとか思ったけど、横の兄に何されるかわかんないから頑張って自制した。
レアが驚いたのは、ボソボソ言っているのを聞いた感じ、あの時生まれてかわいいとか思っていた第三皇女がもう10歳になっているという時の流れの早さに驚いていた。
感想がおばさんみたいになっているレア。
あれ?レアって私と同世代だったような……。あ、でも、この世界一日三十時間あるからな。その分のずれはあるか。じゃあ、四年、五年くらい年上?もしかして同い年でもそれくらいの年の差になる⁉
とんでもないほどの元の世界との差に私はさらに驚いた。
これはレアには黙っておこ。
「そろそろ本題に入らないか?」
男はしびれを切らしそう言った。早く帰ってほしいのかな。
『そうね』とさっさと準備をしたレア。
準備を終えたレアはとある資料を二人に渡した。
そこには帝国内の国内アンケートの回答の結果が乗っていた。
質問は簡単でしかもすべて選択式。内容は主に国内政治はどうか、不満はあるか、どこを直してほしいかなどそういった物になっている。
今の国民の状態を把握するために必要な物だ。
また回答用紙の隅っこには『これは帝国が公的に実施していることではないので正直にご回答ください』と書いてあった。
国民はこう書いてあっても現皇帝がアレのため嘘だと思い正直に書いてもらえない可能性があった。だが、これを解決するために回答用紙に直接光属性の魔術をかけ、持っている人の本当の気持ちを読み取ることにした。その結果は回答用紙の裏面に光魔術をかけないとわからない仕組みにした。帝国には光属性を使える者がほとんどいない。その変わり闇属性や火属性といった属性を使う者が多いというのが特徴でもある。
「これは!」
男は声を上げて驚いた。
それもそのはず回答にはかなり国内の状況が悪いことが書かれていた。
これは本当であることは付与した魔術の効果によってわかっている。
その内容は現皇帝に変わり、国内の状況は一変したこと。詳しくは政治の立場に置いて経験を積んでいる者でも簡単にやめさせられ空いた穴にには自分の近い者をどんどん置いて好き放題していると書かれている。それによって国民は税を大幅に引き上げられついていけずかなりの数の生活困難者と餓死者が出ていることがわかった。
今にも怒りが爆発しそうなほど顔が赤くなった男だったがだんだんと自分は止めれなかったとボソボソ言うようになった。
「私は帝国を変えるには今しかないと思う。それをあなたたちにやってもらいたいの」
レアは男と少女にそう言った。
「変えるってどうやって?兄はもう止まらないし人の話を聞けるような人間でもない」
「クーデターを起こしてもらうの。帝国民に。そのきっかけをあなたたちにやってほしいの」
「姫さまにはメリットしかない案件だな。対価として俺はなんでも望めるのか?」
「一つだけ守ってくれるなら」
「なんだ?一応聞いてやる」
「民を救って。そして、良い国交を結んでくれないかしら、王国と」
「本当にそれで救えるのか」
「もちろん。救えれば帝国はあなたのもの。なんでもできるわよ。でも、気を付けないと同じ目に遭うと思うけどね」
「私がついてるので大丈夫です!」
自信満々にレアとレンの交渉に割り込みレンを説得する方についたミアは強かった。
「そんなことにならないようにがんばるさ」
レンを一瞬で折れさせたほどに。
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