第11話

 それから、数週間後私は今、ノタリアにいる。

 一番早い乗り物で四日。

 車なんてものはなく飼いならされた力強いモンスターの足だった。乗り心地は車より悪く時々酔いそうだった。

 時速は40kmほど出ていた感じがする。

 それでも、四日かかったのだから相当距離があり、何よりそれでもノタリアの王国に近い方の村だということにノタリアの国土の広さがわかる。



「ここがノタリアのアラ村」

 雰囲気は物語に出てくる超田舎の村そのままで、村の住居も茅葺の屋根で出来ている。周りも山に森、川と自然も豊かな土地。村の中に畑があり、作物や穀物を栽培し、余る分を行商人に売って暮らしているとレバニラが言っていた。住居は八棟と非常に少ない。かなり小さな村だと言える。

 ちなみに今回レバニラはいない。メンバーは私とレア、それから護衛で腕の立つ者が五人いる。最小限の人数で来ている。服装もいつもとは違い、庶民が着るような安っぽく地味な格好をしている。

 それもそのはず、今回は関係のない国にバレるわけにはいかない。つまりお忍びということだ。

 レアが顔が良すぎて服装とのバランスが取れておらず、逆に目立っているような気がしている。私は誘拐……じゃなくて召喚されたときの私服を着ている。意外にも元の世界の私服はこちらの世界でも庶民の服と大差なく目立つようなことはなかった。ただ、品質は元の世界の方が上なのでどこで買ったのか問い詰められそうになったことが二回ほどあった。



「あの、ここにレンという人とミアという人はいませんか?」

 レアは村を守る自警団の男に訊いた。

「お前、何者だ?」

 警戒されてしまった。ここでミスればもう終わりだ。協力は頼めず、王国はさらに被害が拡大することになる。

 ちなみにレンというのはエルメルドール帝国第二皇子であり、ミアがエルメルドール帝国第三皇女である。

「申し遅れました。私はノアルタル王国国王ファーメアが娘、レア・ノアルタルと申します。この度はレン・アン・エルメルドール様とミア・アン・エルメルドール様に用があり、参上いたしました」

 レアは服の裾を広げるようなポーズをして自己紹介をした。

 自警団の男は村長かレンたち本人かわからないが誰かに訊きに行った。

「ねえ、今入れそうじゃない?」

 レアが自警団の男が居なくなってすぐにそんなことを言った。

 確かに、要人が村にいるにも関わらず確認の間誰もいなくなるなんていくらなんでも警備が薄すぎる。

「さすがにやめときなさいよ」

 私はレアに注意した。

 もし、これで村に入り捕縛されそのまま罪人として扱われれば国際問題に発展してしまう。しかも、悪いのは明らかにこちら側。世界中から叩かれるだろう。そしてレアと一緒に私も罪に問われる。そんなのは嫌だ。



 しばらくして自警団の男が戻ってきた。

 一人ではなく老人を一人連れて。村長だろうか。

「これはこれは、ノアルタルの姫様、どうぞこちらへ。お二方が姫様の要望を許可してくださいました故、この老いぼれがご案内させていただきます」

 老人が案内したのは村の中央に一番近い家だった。

 他との違いは外見ではわからなかった。

「……」

「お邪魔します」

 私はお邪魔しますと一言言ったが一緒に来たメンバーは誰一人として言わず、無言で人の家に入った。一人だけ文化が違い少し恥ずかしくなった。

「おお、あんたがノアルタルの魔法姫マジック・プリンセスか。んで、俺になんか用か?」

 男はレアの方を一目見てすぐに要件を訊いた。

 男は身長が高めで比較的体格が良い方の人間だった。

 それにこの性格ではここで長居するのは難しそうだと正直思った。

「ちょっと、お兄さま。名乗らず先に要件を訊くだなんて、失礼ですよ」

 隣にいた女の子がその男に対して言った。

 女の子は男に比べ身体が一回りも二回りも三回りも小さく華奢だった。


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