第10話

「へえー。そんなことができたのね!」

 レアは玲奈れなのさらに詳しく難しい説明でも持前の頭の良さで理解した。

 最初からちゃんと説明すればよかったと何度も思った。

「ねえ、レナ。これ何に使えるの?」

「そうね。食べ物の保存とか?」

 そうこの世界に氷がなかったということは物を冷やすという文化がなく、食べ物も日持ちせず、すぐに腐っていた。

 新鮮なものだけしか食べられないのでどれもすごくおいしいというのはこの世界の特徴だと私は思う。



 翌日、再度玲奈の宰相になれるかどうかの試験の結果を鑑みて会議が行われた。

 メンバーは前回と変わらず、同様に進められた。

 前回の『レナの魔法は危険か?』という疑問についてレアが自分なりの見解を貴族たちに述べた。

 レアは『使い方次第では危険度は高いが彼女にその意思はなく、危険度は低いと思われる。また、この国及び世界に新しい常識を与え発展に導く可能性が多いにある』と報告した。

 これにレバニラも同意し、貴族たちにも彼女の見解の信憑性の高さをアピールした。

 この報告がきっかけとなり、貴族の一人であるセダンが玲奈が宰相になることに賛成した。また、前回挙手し意見を言うことができなかったチャウンが玲奈宰相を支持すると言い、自分の立場を守るためにジャンが反対意見を撤回し賛成派に回った。

 これにより、玲奈が宰相として承認されるための七人に達し、正式に承認された。



「レナ!決まったわ!あなたを宰相にできたわ!」

 会議終了後、王城の書庫にいた私にレアが押し掛けた。

 書庫にはたまたま他に誰もいなかったことで私はレアに怒ることはなかった。

「そう」

 私はこれでしばらくはまた殺されそうにならないと思った。

「それで、私はなにすればいいの?」

「お、やる気だね」

 レアは少し考えるように目線を上に向けた。

「じゃあ、これしてもらうかな」

 そう言ってレアから渡されたのは指示書だった。

 インクもそれなりに時間が経っている感じがした。

 賛成派が勝つことがわかっていたのか昨日のうちに書いておいたんだと思う。

 というかこっち側に四人いて折れない限り負けないといったところかな。そして、折れることも多分。



 私はレアから渡された指示書通りに仕事を進めていた。

 お昼を挟み、ちょうど眠くなってきたころだった。

 私は今、レアの公務室の中にある資料の整理とその中にあるレアの欲しがっている資料を探していた。

 もろに雑用を押し付けられた。

 これぐらい自分でやってほしいものだ。

「あ、あった」

 探していたものが二つ同時に見つかった。

 一つは帝国の帝都の詳細な地図。

 もう一つはノタリアのとある村までの道中が書かれた簡略的な地図。

 帝都の地図はなんとなくわかる。

 クーデターを起こさせるのに多分必要なんだろう。

 でも、もう一つが全く分からない。

 ここに何があるのか私は疑問を募らせた。



 レアが探していた資料を持って、書庫に戻った。だが、そこに彼女はいなかった。

「全く、どこに行ったんだろ?」

 そう言って、ふと中庭を見ると私の作ったベンチにレアがうつむいて座っていた。

「どうしたの?レア」

 レアは私の方に顔を向けた。

 とりあえず、自分の名前が聞こえた方を向いたという感じだったけど。

「レナ!聞いてよー。今度ノタリアに行くんだけど、いろいろ説明しないといけなくて、政治に興味ない人達だからちゃんと聞いてくれるか心配で……」

 私はレアの話をスルーして、レアに頼まれていた資料を見つけたことを報告した。

「ありがとう!でも、スルーってひどくない⁉あなたにも一応関係あるのに」

「え、もしかして私も行くのノタリアに」

 レアは頷いた。しかも、指を四本立てて。

 そう、ノタリアは国土がとんでもなく広い。

 おそらく、さっき見つけた村まで四日かかるという話で私もレアと一緒に行かなくてはならないのだろう。

 レアは国王代理として、私は次の宰相として、対帝国皇帝に向けて。

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