第9話
「ジャンさま。まだ、話は終わっておりません」
レバニラは話を終わらせたジャンに対して告げる。
「レナさまは魔術はまだまだですが、魔法の才がお有りです」
「「⁉」」
レバニラの一言にジャンを含むレバニラ以外の全員が驚く。
「なんじゃと」
最初に声を出したのは国王ファーメアだった。
このことはどうやら誰にも言っていなかったようだ。レアにも。
「魔法って私と同じ魔術の
レアはレバニラに問うた。
レアは魔法が使える。
魔法を扱える者は世界に両手に数えるほどしかいないと言われている。
さらにその中でもレアは自身の持つ三属性すべてで魔法の行使ができる。
トップクラスの実力を持っていることになる。
レアの魔法の一例は召喚魔法。
召喚魔法は光属性で世界の理の外に干渉し、外の存在を任意の場所に喚ぶことができるものである。
人であればなお嫌われ自身を不幸にする可能性が多い。意識のない物であればその点に関して問題はないがそのためにわざわざこの魔法を使うことにどうなんだということになる。
「レナの魔法はどんなものなの?」
レアはみんなが思っていることを一番の友達として、いやこの世界に喚んだ者としてレバニラに訊いた。
「それは私にはわかりません。いや、理解ができなかったという方が正確な表現ですね」
「それは危険な魔法なの?」
レアは続けてレバニラに訊いた。
行使される魔法が危険であれば、世界にとっての脅威になり、世界中に公表した時点で行動に制限がかかる。最悪の場合、処刑しなくてはならなくなる。
初めて処刑した人間が犯罪者ではなく知人となればレアにもかなりの負担になる。
就任早々、失脚なんてこともあり得てしまう。
「今の時点ではなんとも言えません。無限の可能性があるようで使い方次第で殺傷性を持つこともあると。本人は”科学”と言っておりました」
この場にいた全員が息を飲み、会議室に静寂が訪れた。
会議は中断され、後日再び行われることが決まった。
翌日、玲奈にレバニラから追加の試練が言い渡された。
昨日話題に出た玲奈の魔法について危険性を検証し、対処を次の会議で決めることが目的である。
これは、レバニラとレアの二人が審査官を務めることになった。
魔法の訓練時間を使って行われる。
そのため、午後を丸々使い切る形となった。
「レナ、準備はいい?」
「大丈夫だよ!」
玲奈は準備万端だとレアに伝えた。
レバニラの合図によって追加の試練が開始される。
玲奈はまず、水を初級魔術を使って生成し、深さのある金属の入れ物の中へ入れた。
つぎに、手を水たまりへ向けて伸ばし、力を加え途中まで握りつぶす動作をし、止めた。
そして、一気に握りつぶす動作を行った。
すると、その水たまりが玲奈の手が握られたと同時につららが上へと延びたものが複数個に変化した。
「何これ?」
レアは玲奈に純粋に目の前の不思議な出来事について訊いた。
「水を凍らせて氷にしたの」
「氷?」
私の来たこの世界には人口的に凍らせる方法が存在しない。だから、魔法でも水は水で決して温まったり冷やした状態で出すことはできない。あとから、お湯を沸かしたりは出来るけど、逆に冷やす方法がなかった。
雪や氷は現象としてこの世界にも存在するが、氷を作りだすことはできない。冷ます程度は常温の水で割ったり、気温の低いところに持っていくことで行っていた。
「どうやったの?」
私はおそらく科学素人には難しすぎるこの方法をどう教えるか少し考えた。
原理としては、そもそも水魔術は水を生成し操るものではなく、空気中に含まれる水蒸気をかき集めてきて水にしている。これが水の生成。細かく言えば目に見えない水分子を操るのが水魔術というものだと初級魔術の練習中に気づいた。
水分子は水たまりの中を常温のときは少し運動している。温度が上がればたくさん動くことができる。逆に水分子が動けない状態にするとどうなるか。
答えは氷になる。
では、動けないようにするにはどうすればいいか。
答えは動けないほど、空間を圧縮する。
そうやって、今の現象が起きた。あとはイメージで派手な形を想像して変化をつけただけ。
「えーと、出した水を圧縮して凍らせた?」
玲奈はこれでレアにちゃんと伝わるかわからず、質問を疑問形で答えてしまった。
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