第8話

 宰相になるための確認試験を兼ねた会議が行われた翌日の午前、玲奈れな以外のメンバーが昨日と同じ会議室に集まっていた。

「儂は次の会議からレアに今の宰相の立場から暫定国王として動いてもらうことを検討している。それに伴って空いた宰相の席にレナ殿をつけようと思っているが、みなどう思う?」

 国王ファーメアが今回の問いを主に貴族たち五人に向けて問うた。いわば、玲奈に対する宰相の信任決議といったところだ。

 出席者は国王ファーメア、王妃リリ、次期国王レア、宰相補佐兼王宮執事レバニラ、財務担当ベルン・ベット、外交担当ガイ・ジード、国営産業担当ジャン・ヴォルト、王国軍団長セダン・クリカ、民間産業担当兼大商人チャウン・チャウ。計九名。

 出席者の七割つまり七人の承諾を持って玲奈の宰相になれるかどうかの運命が決まる。



 今回の進行役はリリが行うことになった。自薦である。

「まず、前提として我が娘のレアの国王就任について問います。異議のある者は挙手をお願いします」

「「……」」

 誰一人として手を上げるところか身体を動かす気配すらすることはなかった。

 レアの国王就任に文句なしということである。

「次に現在レアが就任している宰相の席がレアの国王就任のため空席となるため、ここに新たにレナ・シライを宰相として向かい入れることについて問います。異議のある者は挙手をお願いします」

 さっと静かに手を上げた者が四人いた。

 貴族五人のうちセダン以外の四人だ。

「では、まずベット家ベルンから」

 リリによって発言権を得たベルンは国王を含めたみなに問うた。

「まず、あの小娘どこから連れてきた?」

「それはお母さま、私から」

 そう言ってベルンの疑問にレアが答えた。

 もちろん真実を隠して。

「平民風情に国の一旦を預けるなんぞ貴族として五大名家として恥ずかしいわ。私は反対させてもらう」

 貴族の出ではないという出自のみで許さない貴族たちのプライドはとても醜いものだった。

「っ!」

 レアは苛立ったがリリに制止されたことで出そうになった言葉を抑えた。



「次、ジード家ガイ」

 リリは話を進め、次の異議を聞いた。

「あれに外交関係の把握ができているのですか?」

「お母さま、これも私から」

 リリはレアに頷き、レアの発言を許可した。

「昨日の帝国の問題について発案したのは彼女です。外交関係の把握は問題ないかと」

 レアの回答は本当は足りていないが問題はない。だって彼はそういう人だから。

「ならば、何も問題はありませんね。私は彼女の宰相就任に賛成します」

 ガイという男は自分にとって仕事の邪魔になるのかならないのかそれを確認したかっただけで、最低限知識さえあれば誰でも良いというスタンスだ。実際の外交はすべてこの男が仕切っている。



「次、ヴォルト家ジャン」

 リリはさらに円滑に進めていく。

「彼女の国内情勢の把握はどれくらい進んでおられるのですか?それと、もう一つ。彼女の魔法の実力をお教え頂きたく存じます」

「それは、奥様。わたくしから説明をさせて頂きたいのですが」

 ここで初めてレバニラが口を開いた。

「レナさまは私が国内の状況を一つ漏らさず教えましたので問題ないかと。テストも実施おりますゆえ。それと魔法の実力についてでしたな」

 ジャンは自らの質問を確認されたことに腹が立ちながらも首を縦に頷いた。

「魔法は一般的にそう呼ばれていますが、魔術と魔法と分けられていることはみなさんご存じの通りです。一般的な魔法である魔術について、レナさまは水と光の二属性扱うことができます。それぞれ中級魔術までマスターしております。

 レバニラはレナの魔術実力を詳細に述べた。

「それでは少し不安ではありませんか?」

 ジャンはレバニラにそう言葉を投げかける。

「そうですな。魔術に関してはまだまだです」

「では、私は彼女の宰相に反対させて頂く。民に不安が募り、他国にも我が国が舐められる」

 ジャンは玲奈の宰相に反対する旨をここで表明した。

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