第6話

 午後になり、二個目の課題が始まった。

 先ほどの食事の際に国王様と王妃様と仲良くなることができた。

 レアは二人にも私のことを話していたらしく事情は分かっているとむしろすまないと謝られた。こっちが戸惑ってしまった。それを収めたのがレアと。いうかこうなった原因はレアなので当然これくらいはしてもらわないと困る。


 会議は主に会議に出席し議題の進行及び詰まったときに発言することなので、レバニラにもらった資料と進行するための手順のシートを見てやることで問題はほとんどない。あとは円滑に会議を終わらせることが目的。

 まず最初の議題に入った。

 最初の議題は王国内で蔓延している違法薬物についてだった。

 どこの世界にも国にもある問題でかなり苦労しているらしい。

 このノアルタルでは製造も販売も禁止されているので入ってくることはないし、存在するわけがないのだが、どうやらノタリアとは反対の隣国であるジュヴィ国で密かに製造され、流れてきているようだった。移民の多いノタリアでも蔓延し問題になっている。何十年の間、ジュヴィと話し合って全く上手くいってないとのことだ。

 これに関してはジュヴィとの対話は続け、王国側も撲滅を支援することがこの会議で決まった。

 この違法薬物は摂取すると幸福感に包まれるという物で依存性がかなり高いらしい。名前は確か幸福天こうふくてんだったかな。俗称は幸せ。多幸感がメインの薬物でかなりリアルな幻覚や幻聴が起きることがあるらしい。元の世界の覚せい剤や麻薬などとそう変わらない物だとわかる。それはダメ・ゼッタイ。



 議題は二つ目に移った。

 二つ目は反対側の隣国であるノタリアと貿易関連の話。

 ノタリアは昔から移民を受け入れており、かなりの人数を抱えている国だ。

 移民の人数はノタリアの人口の三十パーセントに達すると言われている。

 その国で今起きているのが食糧の問題。

 ノタリアの国土面積はこの大陸イチでかなり広く畑や川も多い。だが、すべてを国内で賄えるほどではないらしく輸入をせざるを得ない状況が続いている。

 その問題の解決とまではいかないが王国にもできることがある。

 それが嫌で出来た国だとはいえ国際的には放置できない。

 貴族たちはみな険しい顔をしていた。

「だから、移民なんて受け入れるものじゃない。食い物が無ければ野垂れ死ぬのみ」

 どこかの貴族の一人がそう言った。

 他の貴族も『そうだ。そうだ』とそれに同意する旨をこぼす。

 ただ、国王様だけは違った。

「行商人に話を通せ。余ったまたは余りそうな食物が出たときには定価の二十五パーセントでノタリアに回せと。売れた物の税は取らぬとな」

 さきほど書類のときとは違う雰囲気で王の威厳を貴族たちに浴びせるように言った。

 この貴族たち五人はそれぞれ大臣のようなものを背負っている。その貴族たちの監査も宰相の仕事になる。ただ、すべての人事権は国王が持っているので歯向かえば消されるのは貴族たちの方。王の言葉には誰も反論することなくこの議題が終了した。



 重苦しい雰囲気の中、会議の進行を進め最後の議題に入った。

 最後三つ目議題はエルメール帝国についてだった。

 帝国は二年前、前皇帝が崩御しその息子が現皇帝となった。

 その際、政治体制がまるっきり変わった。

 そして、度々王国へ侵攻しているという情報があった。

 王国と帝国は直接は隣接してはいない。それは間に大きな湖があるため。この湖は古来より誰の物でもなくみんなの物と言われており、国際条約にもどこの国もこの湖を国土として所有することはできないとある。

 だが、二年前現皇帝はこの湖とその先の村を自国の領土であると主張した。

 その先の村というのは代々湖の管理をしてきた一族の住む村であり、王国の領土だ。

 管理については王国側は完全に彼らに一任しており支援するだけに留めている。

 今回の件も彼らからの報告により発覚したことが多い。

 慎重に判断下さないといけないことがこの空気から伝わってくる。

 前面戦争になるかもしれないのだから。

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