第5話
レアの言っていた宰相のお手伝いの本番の日がやってきた。
手伝いの内容は主に国王に対して王の一筆が必要な書類を持っていくことと会議に出席し議題の進行及び詰まったときに発言すること。
一個目はかなり簡単な内容で書類を分け持っていくだけでいい。ただしそれなりの量が予想される。
二個目がかなり緊張する。会議には国王はもちろんレアやレバニラ、それに名の高い貴族たちが出席する。幸いレアの父であるファーメア国王は王国民の細かい要望まで聞き入れ改善策を試行錯誤を繰り返し民の信頼を得ているためかなり気さくで良い人だとレアとレバニラから聞いている。
あと問題があるとすれば貴族たちだ。
隣国であるノタリアには多くの移民がいる。その移民を嫌って独立したのがこのノアルタル王国だ。異世界から誘拐もとい召喚された私は扱い的には移民に近い。その事実を今貴族たちに知られるわけにはいかない。もし、バレたら殺される可能性が高くなる。スパイだなんだと言って。一応、レアから私は王国民で城下町のはずれでスカウトしてきたと説明しているらしいが果たしてどうなるか。
書類分けの仕事は既に始まっている。それなりというかまあまあ怠い量が用意されていた。ざっと、三百枚ほど紙が積み重なっている。この中から一筆が必要な物を分ける単純作業。慣れれば早くできるようになるだろうが油断は禁物だ。紙で指を切りやすくなる。指は大事だからほんと。
朝のだいたい八時半くらいから始め、今は十時ほど。一時間半が経ちまだは百枚ちょっと捌いた程度でまだ半分にも達していない。これまでに出てきた必要な書類は十四枚かなり少ない。根気のいる作業だった。それも一枚一枚違う内容でほとんどは目を通せばそれで終わりの物ばかり。目を通すだけの物も分類分けをすることになっているが今必要なのはあくまで一筆が必要な書類。
時刻は十四時。あれから四時間経った。ようやく仕分けが終わり、国王様に届けに行くところだ。途中休憩を何度か取ったため時間もそれなりに消費した。結局、必要な書類は三十三枚になった。だいたい十パーセントくらい。
私は国王の執務室の前に来た。ここまで来たのも初めてだし、国王様に会うのも初めて。
コンコンコンコンと四回ノックをする。
「入れ」
短く低い声が聞こえたのちその部屋へ入った。
「国王様、指定の書類をお持ちいたしました」
さすがにここは敬語で話す。
「ありがとう。そんなに固くならなくていいよ。では、何についての書類か言ってから渡してくれるかな?」
かなりやわらかな声で言ってくれる国王様。私の緊張が少しだけ和らいだ。
私は一枚一枚書類を国王様に手渡した。
一時間ほどかかってすべての書類の一筆が終わった。時刻は十五時である。
ようやく最近時間を気にするようになって気づいたんだけど、この世界は一日が三十時間あって十五時がちょうど正午にあたる。今まではパンパンのスケジューリングで過ごしてきたから時計を見る余裕なんてなかった。ただ、ちょっと長くない?とは思ってた。
今からお昼だから一緒にどうかと国王様に言われたため一緒にお昼を食べることになった。断れるわけないし、断る理由も特にない。
メンバーはファーメア国王とその奥さんのリリ王妃つまりレアのパパとママ。それとレアと私。四人での食事になった。場所は国王様の執務室の隣にある部屋でここは普段王族が食事のために使用する専用の部屋。もし来客がいれば別の部屋で宴会やらなんやらする。
出てきたのはまるでフランス料理かのような一品ずつ出てくるコース料理だった。
でも終始頭の中で考えてたのはなんで私もここで食べてるの?しんどいということだった。
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