第40話

「君は正しい事をした訳じゃない。でも決して間違ってもいない」



仮にあの三人を野放しにしていれば、犠牲となる者は更に拡大し、多くの憎しみは蓄積していくだけだったろう。



殺人を正当化してる訳では無い。ただ誰かが取り除く必要が時にあるという事。憎しみは終わらないが、拡大する事はそこで終わらせる事が出来る。



それは法を超えた処置。



殺人を代行する狂座は間違いなく悪だが、必要悪として確かに。だからこそ狂座は存在している事に。



幸人はゆっくりと立ち上がる。



「また……お墓参りに来させて貰いますね」



「先生……」



最後に葵と墓に一瞥し、幸人は踵を返して其所を跡にした。



「ありがとうございました……」



深々と頭を下げる葵を背に、遠ざかる幸人は右手を軽く上げて応える。



葵は幸人が狂座である事を知るよしも無い。だがその御礼の言葉の意味には、形に出来ない不確かな感謝が込められていたのも、また確か。



“それはどちらなのか?”



もしかしたら、どちらでもいいのかも知れない。



「あの子……立ち直れるかな?」



幸人の左肩で、これまで口を開かなかったジュウベエが、不意に訊ねる様に呟いた。



「立ち直れるさ」



幸人は空を仰ぐ。それと同時にジュウベエも空を見上げた。



「それでも人は生きてきたのだから……」



「それもそうだな……」



見上げた青空は何処までも澄んで青い。



「全く……いつもの事ながら後味悪ぃよな……」




10月の肌寒い日の事。一つの憎しみが終わり、新たな始まりの日の事。



地で蠢く様々な思惑をよそに、それでも空だけは平等に、全ての眼下を澄み見渡していた。



※エリミネーター “終”



~To Be Continued

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エリミネーター シンチャン @siguto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ