第36話

「業を背負いし者の魂は、死後何処に逝くんだろうな……」



ジュウベエは言葉を濁す。



分かっていた。逝き着く先は一つしかない事に。



それでもやり切れぬ想い。



ジュウベエは最後にチラリと背後を振り返る。



遠ざかっていく、その片眼に映るモノを。だがそれは同情の視線では無い。



“消去されるべき存在”



ジュウベエは視線を元に戻し、ほっと溜め息を吐いた。



「救われないな……あの子も、アイツらも……」



依頼した者と裁かれた者の因果関係。



「そして……」



その因果を第三者として裁く者。



「お前もな……」



ジュウベエが誰にともなく呟いたそれは、この三つ巴が等しく“罪”である事を意味していた。



その先に救い等無い。どんな形であれ、報いを受けねばならない事に。



「救われる必要は無い。俺がこの“道”を選んだ時から、逝き着く先は決まっているのだから……」



それは死後の地獄なのか?



だが生きる事を歩むこの現世(うつしよ)こそが、真の地獄と云えるのかもしれない。




凍る様に寒い夜の深淵――



路地裏にあった二つの姿は、その深淵の闇に溶け込む様に、その場からその姿を消していくのであった。

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