第28話
『雫』の右手から突如蒼白い輝きが迸る。
「んなっ!?」
三人は確かに見た。『雫』に掴まれていた蠢く心臓が、その蒼白い輝きと共に瞬時に凍結していたのを。
先程まで蠢いていた園田の心臓は、『雫』の掌で完全に凍りついている。
「やっ……やめっ!!」
自らの心臓が別の場所で凍りついたのを目の当たりにし、園田は“返してくれ”とでも言わんばかりに、よろよろとその手を伸ばすが、『雫』は“それ”を閉じる様に握り潰した。
まるで硝子細工を地面に叩きつけたかの様に、『雫』の掌で砕け散る凍りついた心臓。
「カ……カヒュッ」
心臓と呼応していたのか、それと同時に白眼を剥き、口から空気が漏れる様な断末魔の嗚咽を最期に、園田はアスファルトの地面に倒れ込む。
うつ伏せに倒れた園田の躯は、不規則な痙攣と共にアスファルトにどす黒い血溜まりを拡げていき、やがて完全に動かなくなった。
「…………」
あまりに現実離れした凄惨な出来事に、二人は声も出せず立ち竦んでいる。
「園田 雅司。消去完了」
“それは夢か現(うつつ)か?”
現実では有り得ない現象で、園田の命を“消去”した『雫』。
その銀色の瞳には、命を物としか見ていないかの様な。
『雫』は次なる対象に目を向ける。
それは無機質で、それでいて美しいまでに残酷な輝きを以て。
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