第27話
「オイ園田ぁぁ!! なんだよそれえぇぇぇ!?」
「ひっ……ひゃあぁぁぁ!!!」
二人の金切り声で、ようやく事態が動き出した。
「あぁ!?」
園田 雅司は己を慌てふためく目で見ている二人に、状況を理解出来ぬまま視線を落とす。
「なっ……何だよこれえぇぇぇ!?」
その視線の先に見た光景に、園田は絶叫を上げる以外に無い。
園田の左胸部分に、ぽっかりと空いた赤黒い空洞。
その周りを侵食する様に、突き破られた衣服から徐々に赤い染みが拡がっていく。
「お前気付かなかったのかよぉ!?」
二人にも、そして園田本人にも、ようやく状況が理解出来た。否、理解するしかない。
『雫』が手に持つ、その“何か”の意味に。
「いっ……嫌だ! たっ……助けっ!!」
状況を理解出来た園田は、ぽっかりと空いた左胸を押さえながらさ迷い、訳の分からない嗚咽を上げている。
『雫』が右手に掴み掲げている赤黒い物体は人間の、園田本人の心臓そのものだった。
気付かなかったのも無理は無い。
抜き取られた本人はおろか、本来在るべき場所から離れた心臓ですら、まだ気付いていないかの様に『雫』の掌で蠢いているのだから。
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