第21話

「まあこちらも商売ですし、依頼は金銭で承っております。今回クライアントの依頼金は、これまで貯蓄してきた預金50万円。手数料その他諸々を差し引き、執行者のエリミネーターには、50%が取り分として支払われますが……如何がなさいます? 本来、貴方程のランクの者が請けるべき内容では無いのですが……」



琉月はビジネスの話へと移行する。そしてそれは本来、コードネーム『雫』には不釣り合いな依頼だという事も。



「引き請けよう……」



幸人は二つ返事で依頼を請ける。そこに迷いは無い。



「……噂通り変わってますね。上位になるほど、実入りの少ない依頼は請けないのが普通ですが……。それは情でしょうか?」



「うわぁ……嫌な性格してやがるぜ」



それが分かってて、敢えて幸人へ依頼を持ってきた琉月の真意に、ジュウベエが吐き捨てる様に嫌悪感を顕にした。



「関係無いな。憎しみに金額の大小は無い。その金に込められた想いを、俺が代わりに遂行する……それだけだ」



そう言い放ち、かくして依頼は成立する。



ジュウベエには、幸人がこの依頼を請けるであろう事は分かっていた。



“幸人は金額では動かない”



見ているのは、依頼者の憎しみの果てにある深淵の闇。



「なんにせよ、クライアントは大変喜ぶでしょう。恨みを晴らせるのですからね……」



「喜ぶだと? 憎しみは憎しみを呼び、果てしなく連鎖するだけだ。それは決して終わる事の無い、人の業……」



そう、この代行が無意味であるかの様に呟きながら、幸人は掛けてある銀縁眼鏡に手を添え、それをゆっくりと外していく。

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