第19話
「オイ幸人! この子はもしかして!?」
書類上の顔写真。其処に記された名前。
ジュウベエにも見覚えがあった。
“杉村 葵”
「ちょっと待てよ? この子がウチに来たのは一昨日のはず……。この短期間で一体何が? まさか……あの後か!?」
流石にジュウベエも動揺を隠せない。
クライアントは僅か二日前、幸人の診療所に仔犬と共に訪れたていた、まだあどけなさの残る少女その者だったのだから。
「今回のクライアント、杉村 葵は二日前の午後八時頃、この三名に性的暴行を受けた事が、事の依頼の発端となっております」
「まっ……まじかよ……」
戸惑うジュウベエをよそに、事の顛末を淡々とした説明口調で語る琉月。
「勿論、全ての裏は既に取ってあります。クライアントが貴方の診療所に所縁有るという事も。だから貴方へ一番にこの話を持ち掛けた、という訳では無いのですが……」
私情では無いだろうが、その口調には何やら意味深な含みを感じられる。
「前言撤回。やっぱ胡散臭えし、なんか気に食わねぇわコイツ……」
ジュウベエが琉月に向けた言葉の意味。
それは“試している?”という、悪意にも似た品定め的な裏の真意を、敏感に感じ取っていたからに他ならない。
「オイ……幸人?」
だが幸人は沈黙を保ったまま。表情の変化を見せたのは、最初の一瞬だけ。
琉月の真意にも気付かないはずが無い。
ジュウベエが怪訝そうに幸人を見上げたのは、いつもの“消去人”としての顔しかなかったからだ。
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