第17話

暫しの沈黙が、深淵の室内を支配する。



「確かに……な」



おもむろに口を開いた幸人は、琉月の問いに一切の否定を見せない。



表では名医として評判の温和な獣医。だがその実は、消去代行請負組織“狂座”に組みする、コードネーム『雫』としての裏の顔。



「……今回のターゲットとクライアントの説明を」



“一体どちらが本当の顔なのか?”



その冷たいまでに熱の無い瞳には、あの穏やかな獣医としての顔は何処にも存在しなかった。



「フフフ……では本題に入りましょうか」



そう“仕事内容”を詰め寄る幸人に、琉月は幾枚かの資料を手渡す。



「…………」



その何枚かをサッと見回す幸人。



そこには三人もの顔写真と、その人物達の経緯・年齢に至るまで、あらゆる個人情報が網羅されていた。



三人共に二十歳と記されており、写真で見る限りまだ若い。



だがその目つきは共通して悪く、人を見下したかの様な、典型的な“悪人顔”である事は否めない。



「しかしあったま悪そうな面してんなコイツら……。ピアスに金髪、しかもきっちり染め上がってねぇし、典型的な屑でございますって雰囲気丸出しな連中だな」



幸人の左肩で同じく資料を眺めながら、その顔写真から見た三人の印象を鼻で笑うジュウベエ。

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