第16話
「ああ、やだやだ! せっかくスタイル抜群なのに、仮面が台無しにしてるじゃねえか勿体無い……」
ジュウベエが琉月の仮面姿に、不満の意を述べる様に捲し立てる。
「いや待てよ? 仮面の裏には絶世の美女が! いや逆も有り得そうだな……」
それはおよそ猫とは思えぬ思考回路。
「ジュウベエ……少し黙っててくれ……」
そんなジュウベエを、呆れた様な口調で幸人が諭す。
「いいじゃねぇか。どっちにしろ分かりゃしねぇよ」
“他には分からない”
それは猫の言語が漏れても、問題では無い事を意味しているのか?
「フフフ……」
二人のやり取りを、表情こそ分からぬが、微笑ましいものを見るかの様な口調で琉月が微笑の声を漏らす。
「噂には聞いていたのですが、貴方は動物と心通わせ、会話出来るというのはどうやら本当みたいですね。その黒猫ちゃんは、どんな事を話しているのでしょうかねぇ……」
そう悪戯っぽく二人に向ける琉月。
どうやらジュウベエの言葉は、琉月やその他には分からず、これは幸人のみが通じるものらしい。
「そんな事より、人と話す時は仮面位外したらどうなんだ?」
「おっ! 分かってるね幸人。やっぱ気になるんだろ?」
茶化すジュウベエを無視するかの様に、幸人は琉月に素顔を見せるよう促していた。
だがそれは下心からでは無い。
仮面のままでは、信用に値しない“何か”を、感じとっていたからなのだろう。
「人は誰しも仮面を付けて生きているもの……。貴方もそうでしょう? 幸人さん……いえ――」
琉月は仮面を取る事を拒否しているだけでなく、逆に幸人へ問い返す。
「執行部門かつ、狂座の象徴たるエリミネーター……」
その意味深な単語と含みを幸人へ向けて。
「消去人……コードネーム『雫(シズク)』さん?」
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