第5話
「この子、道端に血を流して踞ってて……。ほっとけなかったんです……」
まだあどけなさの残る女性は、仔犬の頭を撫でながらおもむろに状況を説明する。
「あっ! 突然押し掛けて済みません! ありがとうございました」
女性は杉村 葵(スギムラ アオイ)18才。今年の春に就職の為、東京に上京して来たという。仕事帰りなのか、葵はビジネススーツを着こなしている。
慣れない都心での独り暮らしは、さぞ大変な事だろう。
いつの間にか葵は幸人に身の上話までしていた。
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「頑張ってるね」
幸人もまたこの、不自然に色染めしてないショートヘアに、あどけないが芯のしっかりした瞳を持つこの女性に、親身になって話を聞いていた。
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日も落ちそうな時間帯。幸人はおもむろに口を開く。
「この子は私の方で、里親を探す事にしますね」
葵がこの仔犬の飼い主でも無く、捨て犬であるならばそれが最善であるという幸人の配慮。
「あっ! その事なんですけど、良かったら私……この子を引き取りたいんです」
葵は最初から決意してるかの様に、仔犬の頬に手を添える。仔犬も葵の掌を舐める事でそれに応えていた。
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