第4話
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穏やかな室内に、突如静寂が破られる。
「こっ……この子を助けてあげてっ!!」
その動揺に満ちた声と共に、一人の女性が舞い込んで来たからだ。
両手には白い仔犬が抱えられている。
左前脚には白い毛並みに映える程の、夥しい出血が見られた。
「お願い! 助けて!!」
半場泣き叫ぶ様な彼女の腕の中で、仔犬はぐったりともたれている。
「落ち着いて。大丈夫ですから……」
幸人は動揺を与えないかの様に、優しく穏やかに諭しながら、そっと女性から仔犬を受け取った。
「痛かったね……。もう大丈夫だからね」
その有無を言わせぬ安心感のある声と共に。
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――1時間後。
診察室の白い小さな動物用ベッドの上には、左前脚にしっかり包帯が巻かれた、先程の白い仔犬が鎮座していた。
傷自体は深くなく、数針縫う事で事無きを得た。
「もう心配ありません。ただ少し衰弱しているので、充分な栄養と安静で、すぐに元気になりますよ」
「良かった……」
幸人の診断に、女性は安堵の吐息を洩らす。
幸人は女性から仔犬に目を向ける。
“この子の飼い犬だろうか?”
だが仔犬に首輪は無かった。しかも毛並みの薄汚れ方から、捨て犬である事を幸人は推測する。
元はスタンダード・プードルの一種だろう。
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