第6話 雨の中その子は現れた
「ここからは私が質問に答えようと思います、皆さんよろしくお願いします」
『イケメンドワーフ』
『おっすおっす』
『俺のイメージするドワーフよりひげが短い』
『めちゃイケオジで私の好みだわ』
お父さんの表情は変わってないけど嬉しそうにしているのはわたしにはわかった。
「お父さん……」
「お、おう、そう魔物とダンジョンに付いてだな、まず昨日のイノシシだがあれは動物になる、今の所ダンジョン以外で魔物は見ていない、そして動物と魔物の違いは魔物は解体をしなくても魔石や素材を落とすからだ」
『あのでかいイノシシ動物なんだ』
『ダンジョンの魔物が復活するなら魔石取り放題か』
「ダンジョンでの魔物のリポップがどれくらいの間隔かはわかりませんが、気付けばまた増えているのは確実です。続けて「現地人に出会ったことは? もしくはいそうな痕跡はあった?」ですが、私達一家はまだこの世界の住人とは出会っていませんし痕跡なども見かけていません、続いて「ゴロタって小さくなれないの?」ですが、実は小さくなれますと言っても気づいたのは昨日なので最近までは出来なかったのは確実だ」
その後はあーだこーだと議論が白熱していっている、お父さんもわかることはその都度答えている。わたしはそれを眺めながらゴロタを膝の上に載せもふもふしている。
そろそろ次の質問に答えたほうが良いかなと思っていたら、急にキャンピングカーのドアが少し強めにゴンゴンと叩かれる音がした。お父さんもお母さんもその音が聞こえたのか立ち上がり警戒をしているのが見える、一方ゴロタは特に反応がないからモンスターではないのかな?
そう考えているうちにまたゴンゴンとドアが叩かれた後に「すみませーん誰かいませんかー」と雨音とドアのせいかくぐもった女の人の声が聞こえてきた。わたしたちはびっくり顔を見合わせた後にお父さんが「今開けます」と言ってドアへ向かう。お母さんはいつでも対処出来るように精霊魔法を使っているみたい。
お父さんがゆっくりドアを開くとそこには雨でびしょ濡れのセーラー服と所々に皮の防具を着けた女の子が立っていた。
「雨がすごいからとりあえず入って、美久さんタオルを貸してあげて、それとその濡れた服は着替えたほうが良いかな」
「あ、車の中びしょ濡れに、ごめんなさい」
「はい、これ使ってね、それとこっちね」
お母さんがバスタオルを渡しながら少し強引に女の子の手を取り奥に連れて行く。女の子は戸惑いながらも大人しくついていった。わたしは暖かい飲み物を用意することにしてキッチンへ向かい、お父さんは濡れた床を拭いている。
お湯が沸いたからティーポットにお湯を注ぎ紅茶を作り人数分のコップを用意したところでお母さんと着替えを済ませた女の子が戻ってきてソファーに座る。
「あの、えっと、私、雛山雛子って言います、突然訪ねてきた私なんかに服をお貸し頂きありがとうございます」
「気にしなくていいですよ、つかぬことをお聞きますがあなたも日本人ですか?」
「えっ! みなさんも日本人なんですか? でもドワーフにエルフにヒューマン?」
「この姿はこの世界に来てからこうなってしまって」
「そ、そうなのですか、初めてのパターンです、えっとそうです私も日本人です、この世界には1年くらい前に迷い込みました」
そこから色々情報交換が始まった。あっ大変だ配信したままだった、急いでモニターの前に行き流れ続けているコメントを確認するとすごいことになっていた。その中に警察関係を名乗る人の赤チャットがあって、雛子さんは1年ほど前から失踪届が出されているという情報を教えてくれた。
そこからはバタバタだった、雛子さんに配信スキルのことを説明して、続いて警察から連絡を受けたという雛子さんの妹さんを名乗る人のメッセージが来たり、妹さんとのやり取りで泣き始めた雛子さんを宥めたりと大変だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます