第10話 新たな舞台

「お嬢様。先日のニュースはご覧になりましたか」



黒いリムジンが真昼の城川の街を走る。

乗っているのはしおりと、その執事の柊が運転をしていた。

しおりはぼんやりと窓の外を眺めていた。


「誘拐事件のこと?」


華奢の様子からは想像もできない大人びた声。


「ええ」


「もちろん。よく見つかったものよ」


「先ほど連絡がありましたが、結愛様が見つかったそうです」


しおりの視線の先が柊に変わる。


「結愛、お姉ちゃんが……?」


さっきの大人びた声とは全く異なったか弱い少女の声。

純粋な瞳が揺れている。


「どの記事も名前は伏せていましたが、見つかったのは結愛様かと。相月家は今ヨーロッパに向かっているそうです」


「……そう」


しおりは目を伏せ、また窓の景色に目をやる。


住宅街を抜け、大通りに出る。

そのまままっすぐ進むと、4階建ての校舎が黒い門の奥に聳え立っていた。

「城川私立城川学園」と書かれた札が気高い雰囲気を引き寄せ、門の隙間から銅像がちらりと見える。

校舎の横には別の校舎も建っていて、辺りは私立特有の独特な空気を纏っていた。



北校舎と本校舎の間の広い駐車場。

本来なら教師専用だが、今回は特別に許可を得て駐車している。


柊が後頭席の戸を開け、中からしおりが出て、周りを見渡した。

春休みだからか、校舎内は静かで灯りもついていない。

しおりは何も言わずに本校舎は歩き出した。


ピカピカの廊下を歩くしおりと柊。

なぜか空気が張り詰めている。


「噂には聞いていましたが、とても綺麗な設備ですね」


「歴史長い私立一貫学園だもの。さすがってところね」


柊もしおりも綺麗な設備に感心している。

角を曲がると、奥の部屋に男性が立っていた。

紳士的なおじいさんで、髪には白髪が混じり、柊より年上のようだ。



「お待ちしておりました、藍原様」



そう言って、城川学園の校長はにこやかに微笑んだ。



幼馴染み探偵団① 終わり

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