第5話 Let's PLAY!

「あ、善太。プレイヤー・ランドの場所って変わってない?」


「……うん」


「良かった!」


ウェイアの中はもちろん人が多い。

春休み中ということもあり、子供連れの親子も少なくはない。


「プレイヤー、ランド?」


しおりが周りを見渡しながら2人に聞く。


「ゲームセンターやで」


「ああ、ゲームセンターか。行くの初めてかも」


「あれ、そうなん?」


「うん」


「じゃあ、いろいろやろっか!」


「うん!」


初めてのゲームセンターに嬉しそうなしおり。


「お前、行ったことあるのか?」


「もちろん。京都にもあったし」


「そっちにもあるのか」


「角野くん、ゲーム得意そう」


「……えっ」


しおりの発言に善太が固まる。

なぜか美奈はにやにやしている。


「まあ、それは行ってからのお楽しみ、やで」


自分のことのように言う美奈。


「何でお前が言うんだよ」


「お?それは得意ってことやんね?」


善太は一瞬黙り込む。


「……たまにチームのメンバーと行く程度だし」


「楽しみやな~」


「はあ……」


相手にすることはもうやめたらしい善太。

プレイヤー・ランドは3階。

エスカレーターで上り、カラフルな灯りが見えた。

近づくと、特殊な音も聞こえる。


「善太、まず何からやる?」


「……パズル・ビルド」


「あっ、それやったことある!最高コンボは?」


「……たしか200とか」


「マ、マジで!?うち50いくかいかんかやねんけどなー」


「200コンボって、すごいの?」


何も知らないしおりが聞く。


「そっ。平均は30とかやねんけど……」


平均は30。

それに対し善太は200。


「……え」


「……そりゃその反応になるわ」


美奈も苦笑い。


パズル・ビルドはステージによって変わるが、基本は下にゆっくり落ちてくる「パズル」をボタンで方向や場所を操作しながら置いていくゲーム。

ただ置いていくだけではなく、色ごとに固めておく必要があり、頂上まで行ってしまうと、ゲームオーバー。

ある程度の色のパズルが揃うと、「コンボ」となりそのパズルは消え、スペースが生まれ、それがスコアになる。

店にもよるが、近日のハイスコア、コンボ数はランキングになっているらしい。


「じゃ、うちからやって良い?お手本やるわ」


「「うん」」


美奈は100円を入れる。

ゲームスタートのBGMが流れる。


『ステージ選択』


全部で5個ある。

美奈は2番目に高いレベル4を選んだ。


「レベル4!」


しおりが驚く。


「うん。難易度が高い方がコンボは狙いやすいからな」


「まあ、たしかにな」


善太もそこは同じらしい。

画面が切り替わり、背景は変わり、BGMは速くなる。


『ゲームスタート』


上からパズルが落ちる。

初級ステージなら遅く落ちるが、難しくなるごとにスピードは速くなる。

しかし、それには全く動じず美奈は黙々とパズルを操作していく。


「結構手際良いというか、慣れてるね」


しおりが楽しそうに言う。


「そうだね。……そうか、お前はそういうタイプなのか」


善太がつぶやく。


「そういうタイプって?」


「ほら、すぐコンボさせるようにパズルを置いてるだろ?」


ある程度の数、列を揃えればコンボする。

美奈は数を揃えることに集中している。

たしかにすぐコンボはできる。


「うん」


「たぶん、積み重なって頂上まで行くことを避けたいらしいけど、それだとハイスコアとコンボ数は狙えない」


「どうして?」


画面を見ると、美奈が置くたびにコンボしている。

その度にスコアとコンボ数は少しずつ上がっている。


「……連続コンボの方が、スコアが高くなるからだよ」


「そ、そうなの?」


「そう。同時にコンボ数も稼げるからね」


時間切れの効果音が鳴る。


「あ~無理やったな~」


「お疲れ、ミィナ」


結果は50コンボ。

スコアは50万。


「じゃ、しおりやる?」


「うん」


美奈はしおりと善太の会話を聞いていたのだろうか。

……いや、集中していたのなら聞いてないはずだ。


しおりは100円玉を入れる。

初めてやるゲームに少し緊張している様子。

ステージ選択は早速4だった。


「4から行くん!?」


美奈は驚いているのに対し、善太は少しだけ驚き、すぐクールな表情に戻った。


『ゲームスタート』


しおりはパズルを操作し始めた。

初心者にしては速く、手際が良い。

……さすがの善太も、これには驚いていた。


「しおり、何してるん……?」


美奈が不思議そうに画面としおりを見ている。

しおりは数を揃えてコンボしつつ、パズルを列に揃えている。

しかし、まだスコアはそこまで高くない。

善太が嬉しそうに笑う。


「まさか、連続コンボ狙っとる!?」


「そういうこと」


善太が得意げに言う。


「な、何で教えてくれんかったんよ!?」


「初めてやる人にやり方を教えるのは当たり前のことだと思うけど」


「……あとで別のゲームで勝負や!」


「僕がこれをやってからね」


だいぶ悔しい様子の美奈。

すると、聞いたことのない音が鳴る。


「コ、コンボ数が……!」


最初は50台だったが、連続コンボにより一気に100まで行った。

それにより、スペースが広くなった。


「こ、こんなん初めて見た……」


やはりあの会話は聞いていなかったのだろう。

……聞いていないのが普通だが。


時間切れになり、しおりのターンは終了。

結果は150コンボ、スコアは100万ほど。

初心者にしては高い結果だ。


「しおり、お疲れ。初めてやのにすごいやん!」


「あ、ありがとう。角野くんがコツを教えてくれたからすごくやりやすかった。だから……ありがとう、角野くん」


しおりは善太に向かって小さく微笑む。

あれはコツというのだろうか。


「……ぼ、僕もあそこまでできるとは思ってなかったから正直ビックリした」


顔を赤くしながら善太は言う。


「ほら、次善太やで」


「うん」


美奈としおりは善太のプレイに期待をしている。

善太は100玉を入れる。

ステージは最高難易度の5。

画面が切り替わり、明らかに最高難易度という感じのBGMに変わる。

……善太の表情が一気に変わった。


『ゲームスタート』


パズルが今までよりも速く落ちる。

早くやらないとすぐに積み重なってしまう。

善太はタイピングするような速さでパズルの操作していく。


「5の初めて見たけど……やばいわ」


「うん……」


まだあまりコンボはせず、列を作っているだけだった。

しかも、だいぶ高く列を作っており、もうすぐ頂上だ。


「そろそろやばない?」


「……そう?」


「えっ?」


しおりの声が若干変わった。


「あれ、縦にも横にもコンボになるんじゃないかな」


「……ほんまや!」


頂上まであと少しのところで善太が一つ、パズルを置くと一気にコンボしていく。

これもまた聞いたことのない効果音。

縦と横同時にコンボ。

スコアはどんどん上がり、コンボ数もどんどん増えていく。


「え、あの子すごくない?」


「あんなスコア見たことない……」


周りの人も善太のプレイに驚いている。

中学生くらいだろうか。


「え、またあれ作る気!?」


残りは30秒。

善太はまたあの列を作ろうとしている。

時間的に間に合うかは微妙だ。


「間に合うかな……」


善太の手の動きがさらに速くなる。

同時にパズルの列もどんどん高くなる。


「……残り10秒」


1つの列につき、3~5秒はかかる。

残り3列。

やっとここで善太の表情に焦りが見える。

残り5秒。

この時点で残り……一列だった。

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