友だちになっちゃった(嬉)!!

 ん? 何かジライ踏んだ系? アタシやばい? 怒られる?


「えっと……B組、だよ」

「マジで!?!? 一緒じゃん!!!! やったーーーー!!!!」


 こんな素敵な子と同クラだったの!? なんで名前覚えてないのアタシ!! いやそういえば新学期始まって二か月なのにクラスメートの顔と名前一致してなかったわ! でもそれでもやっていけてたから気付かなかったわーー!!

 そう、やっていけちゃうのよ。アタシ賢いから。

 こっちーは少し驚いた顔をしてる。どした? こっちーもクラス一緒でうれしくて固まっちゃったか??


「な、なにも言わないの?」

「どうして? 逆にこっちーはアタシと同クラだってよく覚えてたね」

「クラスの人の顔と名前は一致してるから……」

「アタシよりかしこ人間……だと……!?」

「かしこ……? よく分からないけど、どうしてなにも聞かないの?」

「なにが?」


 本気の本気で何言ってるかわからないんだけど?

 賢いアタシでも、超能力者じゃないんだよ。だから言葉で言って!! さんっ、はいっ!


「私の顔……? その理由……」

「……なぁ~~~んだそんなこと!!」


 え、とこっちーが顔を上げた。

 いや~~~焦った焦った!! やけにシンケンな顔するから、実は人間じゃないんですとかアタシをコロスためにここで待ち伏せしてましたとか、そんなこと言われんのかと思ったわ!! 全然大したことないじゃんね。


「アタシだって今は教室にいないし」

「で、でもそれは今だけでしょ? 本当は、教室にいたはずで、私は、いなきゃいけないはずがいつもいなくて……」

「『ハズ』って何? アタシがどこにいたっていいじゃん、こっちーがどこにいたっていいじゃん!! 誰もそんなん気にしないよ。先生はね、あきらめてるから!」

「それは誇れることではないような」

「こっちーのことまだよく知らないけど、学校にはこうして毎日来てるんでしょ? それだけで偉すぎ!! 天才か?」


 布団から出たの? 着替えて化粧もしたの? こっちーのことだから朝ごはんも食べてそう。そんなおかたいローファー履いてさぁ、最寄駅から学校まで歩いてきたわけ? 誰がどう考えても偉すぎない? 授業にも出ない学校に行くためにそんな。いろいろ頑張るなんてさ。天才がここにいた。

 そんでそんで、アタシ賢いから分かっちゃった。


「もしかしてこっちー、ここの飼育小屋にいるウサギさんたちお世話してるでしょ?」

「う、うん……先生に『せっかくだからどう?』って任されてて」


 ハーーーッEP増えちゃったな。

 EPって「エラスギポイント」のことね。


「ここの学校ってバカばっかだからさ、飼育小屋掃除担当も生物委員会も信用ならないワケ。絶対あいつらサボるから。それでもセンセーがこっちーは信用してるんでしょ? すごいわぁ。今ちゃんと教室で着席してるやつらより、断然すごくない?」


 こっちーは、自分のいたい場所でしたいことをしてる。

 それってめっちゃ、アタシのしたい生き方!! うらやましいし最高以外の言葉が出ない。アタシの持ってる全語彙を魔法で「最高」に変えて、ぶつけたっていい。

 サイコー。こっちーが気に病むことなんて、どこにあんの?

 言いたいことを言いきる。

 すると。



 つーっ……と、こっちーの瞳から涙がこぼれた。



 ……はぇ!?!?


「えぇぇぇぇぇ泣かせた!?!? アタシエラそうだった!? 怖かった!? マジでごめんよく言われんのよ金髪だしピアス開けてるし化粧バチバチだし服はゆるいし人のこと怖がらせんのよアンタはジチョウしろって!! ジチョウの意味知らんけど!! ジチョウします!!!!」

「ふみゃああああああ」

「ち、ちがっ……ごめ、おちついて、ふふっ……ネコがびっくりしてるよぉ」


 こっちー、泣きながら吹き出すという高度な技を習得。さすがだぜ。

 その秘儀を得たこっちーもさすがだし、泣いてる人を笑わせるアタシもさすがだぜ。もう誰も勝てねぇよ。

 機嫌を悪くしたおネコ様はアタシの腕にツメを立ててる。こらやめ!! シャツがやぶれてお色気あやなになっちゃうでしょーが。

 一通り泣いたらしいこっちーに、ネコを抱いてもらう。

 すっかり二人ともおとなしくなっちゃって。くっ、ネコに関してはアタシに拾ってもらってる恩を忘れてやがるな。早くどっかで健康になって幸せに暮らすことになっちまえ、バーカバーカ。


「……そんなこと言ってもらったの、初めてだった」


 声が震えてる。でも顔は、笑ってる。



「私でよければ、お昼いっしょにいいですか……あっちゃん」



 ……ふふ。

 答えなんて一つしかありえなくないですか奥さん。お姉さん。世の中のレースアンドジェットマン。(※レディースアンドジェントルマンby作者)


「もちろんだよ!! お昼だけと言わず、放課後も一緒にかーえろ!! 学校の近くに美味しい和菓子屋があるんだよぉ」

「あっちゃんには、他に友だちがいるんじゃないの……?」

「え? 元々の友だちとこっちーと、別々に仲良くしなきゃいけない理由があるの?」


 もしかして、そういう処理能力がないと思ってる? 一人ずつじゃないと頭パンクしちゃうとか。まさかぁ!!

 ほら、アタシって賢いからさ。

 その辺うま~くやっていけるわけよ。だからどーんとこの最強ギャル・日向亜矢菜に任せなさいって。

 今度はネコのいない胸を張る。するとこっちーは、また笑ってくれた。そうそう。それで良いのだ。

 それにしても。


「そこは『あっちー』って呼ばないんだね」

「さすがにちょっと恥ずかしいかな」

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