出会っちゃった!!
***
市内でもめっちゃバカって有名な某私立高校。
進学校を目指す塾生には「すれ違えばバカが移る」と言われ、名前を書いただけで受かったという伝説もあり、教師は教壇に立つ前に小学校の授業計画を立てるという逸話まであるバカもバカを極めたチョーバカ高校だ。いっそおもしろくない? アタシは好き。
でも、みんな頭わるいってだけでそこまでやべーやつはいないよ! ちょっと時たまタバコくさいやつとか先生とウワサになってる女とかがいるだけだよ!
授業はマトモよ。授業は。アタシだってしょっちゅうサボってるわけじゃない。じゃあなんで今アタシが授業サボって学校の飼育小屋前にいたかって?
それはネコの飼い主を探すため以下略よ。え、全然略せてない? 細かいことはいいのよ。
だってさ、飼育小屋に来るような人間っつったら絶対動物好きじゃん? そんな人ならネコもらってくれる確率も高いんじゃないって思って。確率だって!! やっぱアタシかしこじゃない!?
そんなこんなで、二限目始まりの鐘も鳴った。
さよならオダセン。歴史のオダセン。授業でなくてごめんね、アタシは今を生きてるんだ……。
「二限も始まっちゃったよ……いいの……?」
「いーのいーの!! ってかてか、それいうならアナタもじゃね?」
お、明らかに「ギクリ」っつって女の子が肩を震わせた。
女の子って呼び方長いしダサすぎん?
「ま、いーや!! ねぇねぇ名前は? ネコとか以前にお友達から始めよ! あ、スマホ持ってる? 連絡先こーかんしよ~あSNSでもいーよめっちゃ通知うるさくしたらごめん切っといて」
「っ? ?」
いけない。アタシのマシンガントークが炸裂してしまった。アタシのマシンガンは本物のマシンガンよりマシンガンだからさ。こうしてマシンガンしちゃうってわけ。
まずは名前だけね、名前。カモーン!!
「はい……あの、
やば、声もかわいいし名前もかわいいとか最高か?
じゃ、次はアタシの番ね!
「アタシは
拍手! 紙ふぶき! ありがとーーー!!
アタシの脳内が紙ふぶき畑になったところで、こと氏が「あやな、ちゃん」と繰り返した。ちょっと、固いって! このイケてるカラーしたネクタイが目に入らぬか!?
「アタシたち同学年だよ! ど・う・が・く・ね・ん。意味わかる? 同い年ってことよ! 敬語はなしでいこ!」
「は、はい……うん」
「そのちょーし! ってか敬語使えんの? 頭良すぎか」
そりゃアタシだってですますくらい使えるけど。でも他は全然わかんない。難しくない? 「ハイケンする」とか何? って感じ。はいはいしながらケンケンすんの?
アタシのマシンガントークはまさかの独り言にも適用される。ひたすら思ったこと言ってたら、ずっと困り顔だった表情がくすっとゆるんだ。いーじゃんいーじゃん!
「あ……ごめんなさい、笑って」
「い~んだよ! めっちゃかわいいんだからさ。ねぇねぇ『こと』って楽器の『琴』って書くの?」
「そうだよ」
「やば~! おしゃ~! ってか書けないわ~!!」
「あやなちゃん、は?」
「アジアの『亜』に『矢』に『菜』~!!」
「『あ』以外何も伝わってこなかった……」
あははごめん。なんも思いつかなくてさ。「矢」の「や」に「菜」の「な」としか言えないんだわ。
「こっちーって呼んでいい?」
「こっち!?」
「ことちゃんでこっちゃんだからこっちー!!」
そんな呼ばれ方初めてって顔してんね。
マジで? むしろアタシはこれ以外思いつかないわ。独創的なあだ名生み出しちゃったってこと? さすがアタシじゃん。
「でもそうなると、あやなちゃんは『あっちー』になるよ?」
「ぶはっっ」
ちょやめてww それは不意打ちww
あっちーって何アタシアツいの? ウケる。確かに心はアツいぜ!?
「こっちーとアタシで『あっちこっち』じゃん。『あっちこっち』コンビとしてよろしくね」
「ふふ、なんだかお笑い芸人みたい」
「お? 大会目指すか?」
狙うなら一番でヨロシク。
くすくすと笑うこっちーは楽しそうだ。さっきまであんなに戸惑ってたのに。やっぱアタシ世界笑顔にしちゃうんだよな。天才。
それから、アタシの腕の中にいるネコを覗きこんだ。
「ネコちゃん、かぁ。……こんにちは」
「みゃあ」
「お、こっちーのこと気に入ってるっぽい」
小さな腕をよたよたこっちーに伸ばしている。
拾ったのはアタシだぞ? 浮気者め。
「私ね、昔ネコ飼ってたんだぁ」
「そーなん!?」
「うん。だからね、家族みんなネコって嫌いじゃないよ。育て方も分かってるし……そうだなぁ、家族に話して『いいよ』って言われたら、もらおうかな」
ほんと!? マジのマジに!?
一人目にしてもらい手発見とか、ツイてる~~! アタシってば神にも愛された女~~! いやいやこっちーに感謝だけどね、まずは。
まだ飼えるって決まったわけでもないし。でもひとまず良かったなぁぁぬこぉぉよしよし。
「こっちー何組? ネコのこと含めていろいろ話したいからさ、お昼いっしょに食べよーよ!!」
「えっ」
すると、またこっちーの顔がくもった。
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