第十五幕 軍犬隊の日々
私は、柳亜(りゅうあ)。
軍犬隊の、隊長格その一人である。
我ら、軍犬隊(ぐんけんたい)の指名は怠惰の箱舟のルールを破るクソ共に目にものを見せたり。総隊長のダスト様の、掃除の手伝い等多岐に渡る。
そうだな、例えば迷子の女の子が居たとしよう…。
まず、我らは隊長と副隊長が慈母の笑みを浮かべながら親御さんの名前や何処ではぐれたのかを聞くのだ。
その間、他の隊員は円陣で周りを固め外を警戒に当たるのだ。
その後、ダスト様に連絡し全隊がフロアをローラー戦術で探す。
女の子は、隊長と副隊長が責任をもって詰め所につれていきオレンジジュースを出す決まりになっている。
我らは鍛え抜かれた精鋭だ、種族性別年齢全てを問わず。
例え迷子の親探しでも、ダスト様から情報を頂き十分以内に集合そして包囲。
親御さんは、首に縄をくくってでも引きずり倒してでも詰め所につれていくまで。
そうだな、例えば残業禁止のルールを破り残業しようとしている奴が居たとしよう。
この怠惰の箱舟では、ルールは絶対であるっ!!
ダスト様の許可があれば、融通は利かせる事になっている。
我らが責任をもって撤収準備及び、建屋の施錠を行い叩き出し等を行う。
医療等で、エリクサー等の最高レベルの治療でも即時回復が見込めない等の理由があれば我ら軍犬隊のエリートが回復に当たり解決しだい休みを強制的に取らせる。
その為に、出られない休憩室まで我らの詰め所にはあるのだ。
そうだな、例えばルールを破って書類をちょろまかした商店などがあったとしよう。
我ら、軍犬隊は周りの建物や地面に八百万層にも及ぶ結界を張り巡らし砂粒一つ影響がでないようにしたのちにありったけの戦力で誅殺する。
ルール破りに慈悲などあるわけがないのだっ!!
具体的には魔法隊の魔力が尽きるまで、神級魔法をぶちかまし。機械兵の直径三百メートルある極太ビームを大量にぶち込み。のちに、全員で抜剣そして突貫する。
もちろん、逃げるものや隠れるものが居ても大丈夫なように絶対逃がさない。
我ら軍犬隊の機械兵も、ビームを打ち切ったのちそれぞれの銃や弓を持って突貫する。
もちろん、魔法隊や機械兵以外にも特殊戦闘班もいてそいつらは拳や蹴りで突貫につきあうがどいつもこいつも魔法を殴り飛ばして弾を握り潰してビームを避ける様な奴ばかりだ。安心して全軍で突撃できるというものだろう?
我らは、十万の軍を一人でなぎ倒せる事が平隊員の最低レベルの入隊条件になってるからな。
我らの制服はきまっておらん、ただ全員が鉢巻かマフラーに大きく「犬」と書かれた特殊な識別コードの入ったものを着用している以外は各々の最高戦力を常に出せる服装をしているだけだ。
特殊戦闘班の中には黒いブーメランパンツ一枚で角刈りの奴もいるぞ、まぁもちろん武器もなく素手に素足だがそれでも戦えるからこそ許されているのだがな。
突貫前に武器を掲げるのが殆どだが、そいつは右手人差し指を一本立てて天に突き上げてからいくな。
我ら軍犬隊に、弱者はいらぬのだ。
我らはルールの守護者、ルールを守らせる為だけの軍なのだ。
我か?我はいつも黒いズボンに上は白いドレスを着ておる。
それに白い薔薇のレースが全身に渡るドレスに合わせて白い鉢巻に黒い文字で犬とかかれたものをつけておるがそれがどうかしたか。
恰好なぞ、どうでも良い。
あらゆる仕事に適性があり、それを一人で行う能力があればよい。
あらゆる戦いに適性があり、それを一人でなぎ倒す力があればよい。
あらゆる状況に適応ができ、それを集団で一糸乱れぬ団結があれば良い。
我らが個であり、軍であり、犬である。
我ら全軍が一つとなっても、光無には届かぬであろうが。
それでも、我らは負けてはならぬ。負ける時は死ぬとき以外にない、それが守護者というものだろう。
もちろん、我らにもルールはある。
シフトと呼ばれる、時間割は全員の希望どうりに行われ守れないものは次の日に解雇だ。
それは隊長であっても変わらない、ルールの守護者がルールを守れないなどお笑いだからだ。
足りない人員はダスト様の分体が入って穴を埋める、ダスト様は我ら等居なくても分体を無限に生み出してリンクしている。
元が一匹なのだから、当然我らよりも一糸乱れぬ軍として動く事ができる。
あくまでも、軍犬隊といえどこれは怠惰の箱舟の仕事のうちの一つに過ぎん。
我らは、鍛錬し錬磨しそして怠惰の箱舟のルールを守らせる為の軍。
もちろん、それだけではない。
我らは、遊園地フロアのヒーローショーにも友情出演する事があるのだ。
ここ、怠惰の箱舟は大多数のものが忘れているがダンジョンである。
ヒーローショー専用に本物の悪の結社と怪人を創り出し、本当に爆発させる。
とはいっても、ショーなので死んでもいないし怪我もしないぞ?
しっかし、黒のブーメランパンツ一枚の益荒男(マスラオ)が思いのほか人気があった事に少し驚嘆を禁じえなかったが。
創造部隊なんかは、効果的に光をいれたり。蹴りの前に無意味な魔法陣を通過させるようなギミックや効果音とかを創り上げて組み込む事もしている。
本来の戦闘において、ポーズは邪魔になる事が殆どだがヒーローショーの部隊ではむしろポーズをとるとそれを感知してギミックが発動するので即興も割と柔軟にこなせるようになっている。
私などは余り好きではないのだが、怪人もヒーローも仕事が終われば一緒に遊びに出かける事もあるぐらい仲がいい。
今のシリーズだと、C8(コアエイト)だったな。
生み出された怪人や悪の結社も別に悪事を働くわけではなく、慢性的に人気のない職についたり別シリーズのヒーローショーで再び出演する事もある。
遊園地フロアで、風船を配って居たりポップコーンとかの屋台をやってたりもするし。
パレードで手を振ってる事もあるし、手品をしながら歩く事もあるしな。
大体遊園地フロアといっても、エリア別にゆっくり動く乗り物や上下して音楽が鳴るだけの乗り物だけの場所もあれば。全長6キロ以上にも及ぶ木造ジェットコースターのあるフロアもあるぞ。
玉入れや輪投げもあるし、そういうのはエリア別に分かれているな。
エリアが多すぎて案内役が今の高性能魔法板を持たされる以前は背中に薪の様に案内本をしょっていたのは今でも笑い話だが。
移動は腕輪で一瞬だし、基本一日フリーパス方式だからなここは。
乗り放題、食べ放題、飲み放題。八時間遊び放題でショーの値段もその中に入ってる、だが人気のアトラクションはどうやったって混む。
まぁ、ここは混んでくると同じものがもう一台どっかのエリアに増設されて列で待ってる奴の半分がそっちに飛ばされるんだがな。
おかげで待ち時間がニ十分を越える事は無い、本当にうまくできている。
まぁ、ここにもローカルルールはあるぞ?
ゴミを投げ捨ててはいけないとか、結構当たり前の事ばかりだがな。
そのルールを破った時こそ、我ら軍犬隊の出番だ。
遠慮なく、容赦なく、蹂躙させて頂くとしよう。
ここでは煙草を吸う事自体は大丈夫だ、喫煙室や休憩室なぞ随所にある。
ダメなのは投げ捨てやガム等の吐き捨てだ、そういう悪は我らの誅殺の対象になる。
怠惰の箱舟は権利をポイントで買った場合を除き、ルール破りを許さぬのだから。
権利にもちゃんと日時は刻まれているし、ポイ捨ての権利があるものは地面に落ちることなく捨てた瞬間に亜空間に消える様になるんだから地面に落ちた時点が誅殺案件である。
未だかつてそんな下らん権利を買った者はおらんが、ポイントで買えぬものが無いのも事実だ。
ただな、例えば監視をとめる権利を買ったとしても監視自体が止まっても。
この怠惰の箱舟では、全ての生物の動きはログとして出力されている関係で手間になるだけで何をしたかってのは判るようになってるんだ。
まぁルールの守護者たる、我らと上層部ぐらいしか知らんだろうが。
要するに監視するのを止めるというのは、ダスト様の監視を止めるという値段に過ぎない。
ここは、ダンジョンだからダンジョンマスターの部屋に行けば判るのだ。
私ですら、ここがダンジョンである事を時々忘れてしまう事が多いのだがな。
(我らは、犬)
軍ではない、ただの忠犬。
規律正しく、群れてはいるが猟犬ではあっても軍等ではない。
精強にして、精鋭たれどもそれはやはり狩人としてであってあるのは不文律だ。
守護者として、見過ごせぬものを狩る。
我らは、止まらぬ。我らは、引かぬ。
我らは、例え首から上だけになろうとも眼の光落ちる時まで。
人は守らず、仲間も守らず、己でさえ守りはしない。
守るのは、ルールだけ。
どれだけ無様であろうとも、それが犬というものだろう。
しかし、それでも。
「ここの女神は生き死にや当たり判定すらその権能でルールとして定義し、それを強制でき、それを全ての存在に同時に行う事が出来るというのだから首から頭が落ちたとて死ぬ事は無い。通用する事になっていなければあらゆる武器や魔法や権能すら無意味だというのだから、我らの首が落ちる等と言う事はないのだがな」
心が壊れるかどうかすら、その意思一つ。
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