真っ赤な口紅
「どうしたってそんなことをなさったの」
私の浮気を糾弾する彼女は、その豊満で放漫な胸を下品なコルセットに押し込めて唸る。
「誤解だよ、ただ、道案内してただけさ」
「あら、あなたは道案内しただけの女性……いいえ、あんな地味で田舎くさい女の…手を握っていたわ。あなた…あんなことを他の方にもしておいでなの?」
「かわいい嫉妬をしないでおくれ、これ以上君を好きになっちゃあ、僕……」
「いやよ、あなたのその歯の浮いた台詞にそう何度も騙されるウブじゃぁないわ、あたし」
ズロースがはちきれんばかりに熟れる脚がシルクのシーツを波打たす。瞳に映る期待の色を私に悟られまいとひた隠して。
「あたしを捨てるの?」
「捨てないさ、決して」
君のお気に入りのルージュが底をつくまではね。
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