第55話 10層 ニンジャ

 ここでも、宝箱には罠があるかも知れないので慎重に開ける。ロックを解除して、腕に着ける小さな盾を構えて、剣先で蓋を押し上げる。罠は無かったようで、ひと際大きなミスリルの固まりがあった。いつも出てくる小粒のミスリスの倍以上の大きさで、重さは10倍ぐらい有りそうだった。


 ドロップ品を回収して、海賊船長を倒したと同時に出てきた階段を上がる。次の階層へ繋がっているのだろう。階段の先のドアを開けると、大きな屋敷の門が開いていた。門をくぐって中に入ると、大きな屋敷が目の前にあった。白い壁に大きな屋根。屋根の上には見慣れない波打つ板が置かれていた。

「あれは、絵本で見た事があるにゃ。海の向こうにあるヤーポンという国の城に使われる、カワラという屋根素材にゃ。絵本では、城の中にはニンジャという戦闘種族とブシという戦闘種族が暮らしているそうにゃ。ニンジャはスピード特化、ブシはパワー特化の種族で刀を使って闘うって書かれてにゃ。」


 ミャオがヤーポンという国の城に似た建物で、ニンジャとブシが暮らしている国との事だった。とにかく入ってみないと中がどうなっているのかわからない。

「中に入ろう。」


 みんなに声をかけて、両開きになっているドアを押して開ける。

「ギギー」


 きしんだ音がして、ゆっくりドアが開く。

「バタン」


 中に入ると勝手にドアが閉まった。中を見回すと大きな空間になっており、部屋などは存在しなかった。四角の大きな部屋は縦横50mぐらいの大きさで、天井の高さは3mぐらいある。奥の真ん中に半径15mほどのドーム状に改造主エリアに貼られる結界の様な半透明の膜があり、その中心に椅子に座った鎧が見える。兜も被っており、顔には鬼の面を付けいて表情は見えない。その両脇には、頬かむりをした黒装束の人型が、立て膝の形で控えている。黒装束は、左右に5体づつが控えていた。

「あそこに、座っているのが絵本で見たブシにゃ。両側で控えているのがニンジャと同じ装束をしているにゃ。」


 ミャオの見た絵本に書かれていた、ヤーパンのブシとニンジャにそっくりとの事だった。数歩近づくと、両脇に控えていたニンジャが動きだし、結界から飛び出してきた。ニンジャの身長は、ゴブリンを一回り大きくしたぐらいで、100cm程度だ。

「ミャオ、ニンジャを止めよう。」


 後衛を巻き込んだ乱戦になると、やっかいなので、前に出て後衛から距離をとる。真ん中寄りの左側のニンジャ2体に左右の剣で切りかかる。ニンジャは直刀を抜いて剣を合わせてきた。直刀は刃渡り60cmぐらいの短めのものだ。目一杯、身体に魔力を循環させ強化した腕力で2体のニンジャを跳ね飛ばす。すかさず、左を抜けようとした1体のニンジャに足を飛ばしてスッ転がす。これで3体ミャオの方も2体と切り結んでいる。

「ウォーターニードルカルテット」

「カルテットアロー」

 左からすり抜ける2体にケイトが4発のウォータニードルを、右から抜ける3体にはマリが4本の魔法矢を放って足止めしている。ニンジャは、左手に嵌めた小手を少し大きくした様な小盾で防いでいる。何とか時間稼ぎは出来てそうなので、1体ずつ倒していくことにする。まずは転ばせたニンジャに駆け寄り立ち上がろうとしているところを後ろから胴を薙ぐ。

「ザシュ」

 倒せたかの確認はせず、すぐさまケイトが足止めした2体に切りかかる。

「カッ、ガシッ」

 右からの袈裟切りを、剣で受け止めた直後に左の剣で胴を薙いだが、先のニンジャと違い前からの切り付けは何かに弾かれた。切り裂いたニンジャ装束を見ると、金属のプレートを腹に巻いているようだった。先のニンジャは後ろから切ったので、プレートにあたらなかった様だ。

「ドンッ、スパッ」

 それならと、胴を蹴って体制が前かがみになった所を上から首を薙いだ。その先のニンジャが動き出していたので直ぐに駆け寄る。

「カッ、スパ」

 今度は、剣で受け止めた直後にもう一本の剣で、足を狙って切ったら剣が通った。動けそうにないのを確認して、最初に飛ばした2体に駆け寄る。

「ウォーターニードルカルテット」

「カルテットアロー」

 ケイトとマリは、右から抜けた3体に集中して攻撃を始めた様だ。体制を立て直した2体は足を止めてこちらの迎撃をするため剣を構えている。

「カッカッカッカッ、ザシュ、カッカッカッ、ザシュ」

 高速で2体と切り結びながら隙を見て、足や小手の無い腕を狙って切り付ける。

「カッカッ、ズバッ」

「カッカッ、ズバッ」

 切り付けられて、動きの鈍った所を首を狙って倒す。首を切って頬かむりが取れた頭には2本の小さな角が生えていた。2体は光の粒子になって消えていく。


「カカカ、カカカ、ズバッ」

 ミャオの方も、あちこちを切り付けて弱っているニンジャを倒した所だった。右を抜けて行った3体に目を向けると、ケイトとマリの集中攻撃に合って、2体に減っておりその2体もあちこちに攻撃を受けてボロボロになっていた。そちらは任せておいて、残っているニンジャを見ると足を切り付けて動けない1体が残っていいたので、止めを刺す。


 全てのニンジャを倒した事を確認して、ニンジャが落とした魔石を拾う。

「10体同時攻撃には肝が冷えたよ。後衛が巻き込めれないかと心配だったけど、手数の魔法でうまく足止めしてくれたので、助かったよ」

「まぁ、数打ちゃあたるってことだわ」

「『虹の精鋭』のメンバーは、いやがる攻勢だろうね。」

「うちが、対応できるのは2体が精一杯にゃ。ツグトが左の5体を倒してくれたから、右の3体に後衛の攻撃に集中できたにゃ」

 マリが数打てばと言って、ケイトが『虹の精鋭』を例えにだして、今のドリームカルテットの構成が暗に適合できていると指摘する。ミャオは数攻撃も右に集中できたからと分析してくれたが、意外と回りをよく見ていると感心した。

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