第56話 10層 ブシ
階層主と思われるブシに近寄ると結界に一人だけ通れる広さの穴が開いていた。結界を前にして、誰が行くか相談をする。
「ここは、1人ずつしか入れないとの事なんだけど、僕が行っていいかな?」
「ツグトが行くのは良いけど、一応、縦にならんで2人目3人目が入れないか、試すだけは試そう。」
「そうだな。一番対応できそうなのはツグトなので良いけど、複数で入れるかは試すべきだね。」
「闘いを見て、行けそうなら次に行きたいにゃ。」
僕が一番に行かせてもらうとして、ケイトが複数入場は試すべきとの意見だったので、縦に並んで一斉に入る事にする。
「ドンッ」
しかし、予想通り、僕が通り抜けた瞬間に結界が閉じて後ろのミャオが結界に阻まれた。
(よく来た剣に挑みしものよ。存分に腕を振るうが良い)
頭に直接、ブシの声が響く。
「よろしくお願いします。」
思わず、挨拶してしまった。
気を取り直して、2刀を構えて近寄っていく。ブシが座っていた椅子はいつの間にか消え、刀を抜いたブシが自然体で構えていた。鬼の面を付けていると思っていたが、ニンジャに角が生えていた事を考えると面ではなく素顔なのかも知れない。刀はニンジャが使っていた直刀ではなく、反りの入った刃渡り1mを超えるものだった。更に近寄ると、いきなり剣を上げて切りかかってくる。
「カッ、カッ、カッ、カッ、 カッ、カッ、カッ、カッ、」
「カカカッ、カカカッ、カカッ」
切り結ぶ剣の速度が段々と上がっていく。
「カカカカ、カシュ、カシュ、カシュ、」
スピードがマックスになった所で、スケルトンジェネラルの時の様に剣を受け流しにかかった。
「カシュ、カシュ、ガシッ」
「カシュ、ガシッ」
剣の切り替えし速度自体は、スケルトンジェネラルと大差がなかったので、隙を見つけては、切り付ける。しかし、全身が鎧で覆われているので、当たっても鎧に弾かれる。首の所も兜から伸びている『しころ』(名前は後からミャオに聞いた)で弾かれて届かない。
しかし、しばらく打ち合っていると、ブシが剣を振り下ろした瞬間に、『しころ』と鎧の肩当に隙間ができる事に気が付いた。
「カシュ、カシュ、スパッ」
100合を越えて打ち合った時に、やっとその隙間に剣を入れる事に成功する。しかし、剣を入れた瞬間に大きく後ろに引かれた。咄嗟に剣の先を伸ばすが間に合わず、浅く切り割くにとどまった。
(久しく現れなかった強き者よ。我に刃を届かせたのは10数年振りの事である。強きものに敬意を表して最大戦闘モードに突入する)
又、念話が聞こえてきた。何をするのかと思ったら、左右の脇のところから2本の腕が出てきた(どうやら後ろに回して折り畳んでいたらしい)。2本の腕にはそれぞれ別の刀が握られており、これで4本の腕と、その手が持つ4本の刀を相手にする必要がある。
「カカカカッ、カカカカッ、カカカッ」
最初から先ほどのマックススピードを超える速さでの打ち合いになる。
「カカカカカカカカカカカカッ、カカカッ」
更にスピードが上がっていく、受け流す所か受けるのに一杯で、反撃の暇がない。
「カカカカカカカカカカカカッ、カカカカカカッ、スパッ」
受けそこなって、浅くではあるが今度はこちらの腕を切り付けられた。
「カカカカカカカカカカカカッ、カカカカカカッ、スパッ」
今度は、こちらの足が切り付けられる。
「カカカカカカカカカカカカッ、カカカカカカカカカカッ、ドンッ」
次々と繰り出される攻撃を捌きながら、わざと後ろに体制を傾かせ足を胸に飛ばす。ブシの胸を蹴って距離を取り一息ついた格好だが、これ以上は無理と判断して更に後ろに飛び下がる。
「階層主のブシ殿、今の剣技では敵いそうにありません。修行して、又挑戦しにきます。」
相手をしてくれた階層主に礼を述べて、そのまま後ずさる。
(ワハハハ、我に、奥の手を出させた強きものよ、更に励んで何度でも挑戦しに来るがよい。)
結界を出る前に、階層主からの念話が頭に響いた。その時、鬼の顔がニヤリと笑ったのでやはり面では無かった様だ。結界は、内側から出る分には問題無いので、そのまま外に出た。
「ふーーっ」
「ズキッ」
一息入れると、一斉に汗が噴き出してきた。そこに先に切られた腕が痛む。急いで、魔力を体に循環させ、怪我をしたところに魔力を多く流すようにする。少し、痛みが引いてきた。
「無理だったよ。ミャオ、次、挑戦する?」
「いや、先にスケルトンジェネラルを一人で倒せる様にならないと、瞬殺されそうにゃ。6層で修行してからにするのにゃ。」
他の皆も挑戦はしないとの事なので、10層を後にして戻る事にした。
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