第54話 9層 ゴースト海賊船長

 階段を降りると、そこは、5体の海賊ゴーストが居た部屋と同じ様に船底が一つになった部屋だった。しかし、5体の海賊ゴーストが居た部屋と大きさは同じぐらいだが、天井の高さは3mぐらいある。しかも、床・壁・天井が大理石の様なもので出来ており、剣が刺さるような受け流しも有効にはならなさそうだ。


 部屋の真ん中に今までの海賊ゴーストよりも大きく、身長が2mぐらいで黒いバンダナの変わりに大きな三角帽子をかぶったゴースト?が居た。りっぱな口ひげを蓄え眼光が鋭く幅の広い襟のコートを着ている。顔の部分は透けている様に見えるのでゴーストと考えて良いと思うのだが、今までの海賊ゴーストと違い服やブーツは透けていない。しかも、ブーツの先には尖った刃物が付いていた。足癖が悪いと言うのは、このブーツに付いた剣の事を言っているのだろう。雰囲気は、正に海賊の船長と言った佇まいだった。海賊船長を観察していると、距離が離れているのを見て、ケイトとマリが先制攻撃を仕掛けた。

「ウォーターカッター」

「ファイヤーアロー」


 2人の攻撃が放たれると、海賊船長が2本の蛮刀を引き抜いた。海賊ゴーストの持っていた蛮刀は刃渡りが60cm程度のものだったが海賊船長のは刃渡りが1m程もある大きなものだった。その蛮刀を振り回し、2つの魔法を弾いてしまった。簡単には攻撃を通させてはくれない様だ。

「ミャオ、スケルトンジェネラルの時と同じフォーメーションで行くよ!」

「了解にゃ。」


 ミャオに声を掛けて、左の方から海賊船長に近づく。右からはミャオが近づいているはずだ。左から近づいた所で左右の剣を交互に振ってしかける。

「ガキン、 スカッ、」


 左手の剣が向こうの右手の剣と交差して、音を立てた。すかさず、右の剣で止まった腕を切ろうとしかが剣が腕を通り抜けて、空振りに終わる。コートは透けてはいないが、体の部分もゴーストの様だ。

「カカッ」


 ミャオが2本のシミラーで、逆方向から海賊船長の左の手の剣を弾こうと攻撃を仕掛ける。2回剣を交える音がしたが、海賊ゴーストよりも剣が重く力も強いので、剣を弾くところ迄は行かなかった。ミャオはこちらの攻撃を見ていた様で、腕への攻撃はしなかった。

「ガガッ」


 気を取り直して、こちらも2本の剣で海賊船長の1本の剣を弾く様に攻撃を変えた。海賊船長の剣が少し浮き上がったが、海賊ゴーストの様に剣を弾き飛ばす形には程遠い。そこに右のブーツに付いた剣のの攻撃が飛んできた。剣を弾く為に、両手を左上に振り上げた格好なので右の脇腹ががら空きになっていて、そこにブーツ剣が飛んできた。流れた体を更に流れた左の方向に流すことで、何とかブーツ剣を避ける。ミャオも左足のブーツ剣に攻撃されて、大きく後ろに飛び下がっていた。ゴーストなので、蹴りを出すのに逆の足を踏ん張る必要が無いのだ。踏ん張るどころか床に足が付いてすらいない。その体制で左右の足を同時に自在に動かすので、まさに足癖が悪いと言っていいだろう。

「ウォーターカッター」

「ファイヤーアロー」


 前衛の2人が一旦離れたので、すかさず後衛の2人が攻撃を仕掛ける。今度は、ケイトが縦にウォーターカッターを飛ばし、少し遅れて、そのウォーターカッターの真後ろからマリがファイヤーアローを飛ばす。ウォーターカッターを剣で弾くとその後ろからファイヤーアローが現れるといった攻撃だ。海賊船長は2本の剣をクロスさせ、ウォーターカッターを上に弾く。上に弾いたため、両手が万歳の形になった所へファイヤーアローが三角帽子を正確に狙ってくる。そこに、2本のブーツ剣をクロスさせてファイヤーアローを止める。海賊船長の足がとんでもない方向に曲がっているが、体の関節はあまり関係なく剣がどこに行きたいかで動いているようだ。人と闘っているというより、4本の剣と三角帽子が人の体の部位の距離制約に従って動いていると考えた方がよさそうだ。


「ミャオ、そちらの剣とブーツの剣の2本をできるだけ右方向に流して、こっちは左に流すから。真ん中の攻撃ラインを開ける様に動こう。」


 スケルトンジェネラルの時にやった方法だが、スケルトンジェネラルと違ってブーツの剣も対応する必要があるので、難易度は高い。再度、左から今度は無理に弾こうとせずに剣を受け流す事に専念する。できるだけ左に流そうとするが、自在に動く剣は左に流すためには、弾く必要もある。

「ガッガッカシッ」


 2回弾いて、一回流す。ブーツの剣が、上から下に真っ直ぐ切り下げてきたので(どう考えても足の軌道ではないが)ギリギリで避けながら下方向へ流す。

「カンッ」

「ドンッ」


 下に流したブーツ剣が床の大理石にあたって跳ね返るところを、すかさずブーツ剣の根本にあたるブーツのつま先を踏みつけて固定する。こちらも動けなくなるが、海賊船長の剣が一本減るので対応は可能だ。

「カッカッ」

「ウォーターカッター」

「ファイヤーアロー」


 ミャオが剣とブーツ剣を流した所で、ケイトとマリが攻撃を仕掛ける。海賊船長は、これを迎撃するためにこちらに向いていた左の剣とミャオの流しきれなかった右の剣で対応する。

「飛べ斬撃!」

「ガッ、ガッ」

「スパッ」


 ブーツの剣を踏んでいるので動けないが、こちらに向いていた剣が迎撃に使われてフリーになったので、剣で2本の斬撃を飛ばした。ウォターカッターとファイヤーアローを弾いてがら空きになった三角帽子に斬撃が当たり3つに分かれて落ちてくる。海賊船長が、光の粒子に替わって消えていった。後には、ひと際大きな宝箱が残っていた。

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