第52話 9層 船の迷路

 9層の海賊ゴーストの攻略は、前回で確立していた。前衛が海賊ゴーストの蛮刀を大きく弾き、後衛の射線を空ける。

後衛が海賊ゴーストの黒いバンダナを攻撃して終了。体力やMPも前衛後衛がそれぞれ2人いるので、交代しながら進み消耗を抑えられる。むしろ、出てくる宝箱の罠対応に時間がかかるぐらいだった。


 船の墓場で、船底に降りて船の中を探索し、奥まで進んで階段を昇ると何故か別の船の甲板に出てくる。再度、船底に降りてを繰り返してしばらく進んでいると5隻目の船の奥に2つの階段があった。

「分かれ道になっている。」

「マッピングが必要かもにゃ?」

「マッピングは後衛の仕事だから、私がやるわ」

 分かれ道になっている事を伝えると、ミャオがマッピングが必要と言い出し、マリが自分がやると言ってくれた。そう言って、木の板を取り出すと、鉄筆で記入を始めた。

「どっちみち、全ルートを探索する事になると思うけど順番は左からで良いか?」

「それでいいわ」

「問題ない」

「問題無いにゃ」

 左から順に、行き当たりで戻ってきたら次はその右という順で探索する事に決めて、先に進んだ。


 しばらく進むと階段の無い、突き当り部屋に到達した。そこは、広めの部屋で、一度に2体の海賊ゴーレムが出てきた。しかし、前衛も後衛も2人いるので、2組に分かれて対応することで、問題無く討伐できた。宝箱を開けた後、突き当りの部屋を調べたが、特に何もなかった。左はハズレだったということだ。仕方がないので、分岐の船まで戻る事にした。


 そうやって、進んで行くと2分岐の部屋や3分岐の部屋にも出くわして、マッピングしながら攻略を進めていった。

「もうすぐ日が暮れる。8層の階層主部屋に戻るなら、もう戻らないと真っ暗になるよ。」

 新しい船の甲板に出たところで、マリが言った。

「そうだね、何艘分戻らないといけないのかな?」

「3つ目の分岐を過ぎてから、行き止まりにあたってないので、9艘分戻る必要がある。」

「時間的には、途中で日が暮れるかもにゃ。」

 ケイトが現在の船の位置を聞いたので、マッピングしてくれていたマリが位置を答える。ミャオは、途中で日が暮れるかもと心配していた。

「ちょっと待って、甲板で魔物に出くわした事って無いよね。ここって、安全かも知れない。」

「でも、夜はわからないよ。」

「だよね。そこで、甲板で野宿するけど、交代で見張りを立てるってのはどうかな。何かあれば、皆を起こして対応するってことで。」

「試してみる価値はあるね。ここの迷路は深そうなので、毎日入口まで戻ってたらロスが大きいわ。」

甲板で寝る事を提案したら、ケイトは夜の甲板の状態が心配していたが、見張りを立てるというと、マリは試す事に賛成してくれ、皆も納得してくれたので、突き当りの船まで行って一艘戻ってきたところで、野営する事にした。


 甲板に火が付くと火事になるので、魔石コンロで夕食の準備をしていると、となりの船に人が出てきた。

「こんばんわー」

大きな声で挨拶すると、聞こえたようで手を振って挨拶を返してくれた。

「あら、ツグト君じゃない。今は、ドリームカルテットだったかしら。」

 Cランクパーティの『虹の精鋭』のヒーラーをしているサーさんだった。サーさんは、以前Dランク昇級試験を受けた時に試験官をしてくれた人だ。『虹の精鋭』のメンバーをダンジョンで見かけないと思ったら、9層を活動拠点にしている様だ。サーさんと話をしていると、『虹の精鋭』のメンバーが次々と甲板に出てきた。

「おぅ、ツグトじゃねえか。今度、Cランクに上がったんだってな。このギルドで2組目のCランクパーティができて嬉しいよ。」

 『虹の精鋭』のリーダーをしているスバルさんは、ドリームカルテットがCランクに上がった事を知っていた様だ。

「『虹の精鋭』も甲板で野営ですか?」

「あぁ、甲板には魔物が出ないからな。でも、今まで出なかったてだけで、階層主部屋と違って、油断はしないようにな。」

「交代で見張りを立てるので大丈夫。」

 隣の船へは、結界の様なものが貼られていて、移動はできないが大きな声で呼びかければ、何とか会話はできた。9層の情報を聞くと、階層主の話を教えてくれた。

「階層主のゴースト海賊船長は、足癖が悪いから気を付けろ。それと、10層の階層主部屋は一人ずつしか入れない。無理だと思ったらすぐに出てくることだ。ここで活動を始めてから今まで、倒せた話を聞いた事がない。俺たちも、誰も倒せてないしな。」

「貴重な話、ありがとう。気を付けて進むよ。」


 向こうも、食事の準備をし出したので、こちらも野営の準備に戻る。


「8層の階層主部屋で合わなかったから、9層の階層主部屋を拠点にしているのかと思っていたよ。やっぱり、甲板の上は安全の様で、一安心だね。」

 皆を安心させるために、『虹の精鋭』が同じく甲板で野営する事を伝えた。


 夜になると交代で見張りをして、寝る事にした。ミャオ、ケイト、僕、マリの順で、見張りをすることになった。最初と最後は纏めて睡眠がとれるので、言い出しっぺの僕が3番目でケイトも2番目を申し出てくれたので、この順番になった。


 夕食が終わり、寝る準備を整える頃になると、真っ暗になるかと思っていたら満天の星が出ていて、暫くすると月も出てきたので、何とか視界は確保できた。途中のダンジョンで採取したヒカリゴケが必要になるかと思っていたが、月の光の方が明るかった。

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