第51話 ゴーレム再び

 8層でゴーレムと対峙していた。右からミャオ、左から僕ツグトが近づき、後衛にマリとケイトが待機している。一足先にゴーレムの攻撃圏に入った僕に、右の拳を振り下ろしてきた。

「スルッ」

「ガシッ」

 その拳を左の剣で受け流すと、ゴーレムは拳の勢いを殺せずに僕の左側の地面にコブシを叩きつけた。

「カカカカッ」

 右側面が がら空きになっていた所に、右側から近づいていたミャオが、右の膝に回転しながら左右のシミラーを順番に叩き付ける。

「カカカッザシュ」

 高速に回転して切り付けたシミラーがゴーレムの膝を切り割った。

「グラッ、ドシン」

 ねじれた身体が支えきれずに僕の方に倒れてきたので、後ろに飛び下がって避けた。四つん這いで横向きのゴーレムの頭を切り落とそうと前に出ようとすると左の腕を振り上げて阻止しようとしてきたので、その左の拳を上方向に受け流すと体の正面がこちらを向いた。そのタイミングで後衛の射線を空けると攻撃を待っていたマリとケイトが同時に顎下への攻撃を撃ちだす。

「ファイヤーアロー」

「ウォーターカッター」


「ズンッ」

「ザシュ」

 2つの攻撃が両方とも顎下の急所にあたる。どちらの攻撃がゴーレムの核を潰したのかわからないが、ゴーレムは光の粒子になって消えていった。

「ツグトの受け流し、ゴーレムが対応できてなかったよ。スケルトンジェネラルの受け流しが完全に再現できているんじゃない。」

「ネズミの木の鞭攻撃を捌いた時も、受け流した先が地面に突き刺さってたしね。」

 ケイトが、受け流しの技術を褒めて、マリも7層の階層主でも対応できていたと言ってくれた。

「ありがとう、受け流しは色んな所で使える良い技術だと思う。」

「ミャオも使いたいけど、パワーが足りないにゃ。」

「ミャオはシミラー2刀の回転切りの要領で、2刀で交互に受け流したらパワー不足を補えると思うよ。」

「う~ん、練習してみるにゃ。」

 ミャオが受け流すパワーが足りないと言うので、うまく2刀のシミラーを使えないか提案してみた。


 その後、ゴーレムを倒しながら8層の鉄鉱石採掘場へと向かった。


「ゴンタ、塩持ってきたよ。今日は、『鋼の筋肉』が警戒組なんだね。」

「ツグト、冒険者らしい口ぶりになってきたな。塩助かるよ。パンは準備しているので持って行ってくれ。」

狐美コミにタメ口でしゃべれって怒られたからね。」

 この採掘場でクランを組んでいる『狐の鈴』のリーダー狐美に、前に来た時、冒険者はタメ口でしゃべれと注意されたのだ。


 塩と交換で準備して貰っていたパンを貰って、8層の階層主部屋を目指し採掘場を後にした。


 8層の階層主のビッグゴーレムは、ゴーレムの2倍の大きさがある。前に対峙したときは、長い腕から繰り出される攻撃への対応と、足を通っている魔力線に膝を切り離すのを阻まれて苦労した。


 ゴーレムの時と同じように、右にミャオ左から僕が近づいて攻撃を仕掛ける。今回はミャオが先に辿り着いたが、ビッグゴーレムの叩き付ける上からのパンチ攻撃を避けるのに後ろへ飛び下がっていた。左側から攻撃圏内に入ると、同じ様に上からコブシを叩き付けてくる。上から真っ直ぐ打ち下ろされたコブシは受け流しても大きくは軌道を変えられないので、受け流す代わりにギリギリの所で躱す。これもスケルトンジェネラルとの対戦で鍛えられた見切りの技術だ。ギリギリで躱すことで、ビッグゴーレムの足元に近づく事ができ、膝を切り付ける。

「カカカカカカッ」

 一気に切り飛ばそうとしても、魔力線に弾かれるので左右から細かい攻撃を連続で叩き付ける。

「ブンッ」

 膝を切り付けていると、空振りした拳を引き戻して膝に取りついた僕に虫でも払う様にコブシで払いにくる。攻撃を中断して、この攻撃もギリギリで躱して膝の後ろ側に回り込む。

「カカカカカカッ」

 後ろに回り込んで更に攻撃を続ける。ビッグゴーレムは足に取りついている僕を振り払うために右足を動かそうと左足に重心を動かしていく。切り付けている場所が上にあがっていくので、その体重移動が判る。切り付けたポイントが上にあがるのに併せて切り付ける所を微調整していく。

「カカカカ、ザシュザシュザシュ」

 体重移動が終わる前に魔力線に辿り着き、切り付けの音が変わったと思ったら、膝の切り離しに成功した。ビッグゴーレムが倒れてくるので、巻き込まれないように距離を取る。

「グラッ、ズッズズン」

 大きな音を立てて、ビッグゴーレムが仰向けに倒れた。


 仰向けに倒れたビッグゴーレムが起き上がれない様に、肩を切り付ける。

「カカカカッカカカカッ」

「カカカカッカカカカッ」

 左肩に切り付けていたら、右肩をミャオが切り付けていた。体を傾けながら横回転の連続切りを縦方向に変えて切り付ける技は、芸術の域に達しているだろう。

「カカカッ、ザシュ」

「カカカッ、ザシュ」

 切りは離しに成功すると、ミャオの方も切り離しに終了していた。


「ウォターカッター」

「ファイヤーアロー」

 両肩の切り離しをしている間に、仰向けに倒れたビッグゴーレムの急所を攻撃する為に、カイトとマリが切り飛ばした足に乗って、上から顎下を狙って攻撃してきた。

「ザシュ」

「ズン!」

 攻撃が次々とあたり、どちらが止めになったかは判らないがゴーレムは光の粒子になって消えていった。

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