第45話 活動方針

 日が暮れるのを待ち、8層の階層主エリアに降りる。野営の準備をして、食後に今後の方針を話し合った。

「8層の階層主であるビッグゴーレムだけど、膝の中に太い魔力線が走っていて、一撃では切り話すのが難しかった。でも、何度か切り付けると魔力線を切り離す事ができる。問題は、大きなコブシの攻撃を避けながら何度か切る付ける為に、後方からの支援が無いと難しいといいう点だ。」

 今日、ビッグゴーレムと闘った感想を皆に言って、今後、安定的に9層を攻略できるかを話し合う。

「マリと僕が交互にウォータニードルやシングルアローを撃ち続ける事で、ビッグゴーレムの防御を顔に集中させるのは可能だよ。」

「ケイトは両手でウォーターニードルを撃てるから右と左を時間差で撃って、その合間に私がシングルアローで攻撃をすれば、攻撃の継続はできると思う。ただ、威力の低い攻撃では防御を捨てて膝を狙う前衛の迎撃に向かわれる危険性はあるよ。」

「そこは、状況を見て、威力の高い攻撃を混ぜる必要はありそうだね。そうなると、僕の両手で撃てるウォーターニードルからウォーターカッターに切り替えるときに攻撃の隙間が出そうだね。」

「私のクロスカッターなら威力は十分にゃので、ツグト一人を前衛にして、3人で後衛をするのはどうかにゃ?」

「ミャオが後衛に加わってくれたら、強い攻撃も混ぜながら喉下に攻撃を集中して、防御をさせられる。ツグトが一人前衛になるけど、そこはどうだ。」

 ケイトが、前衛が一人になることを心配して聞いてきた。

「片手を防御に回して、片手で僕を攻撃してくる場面はあると思う。その時は、回避するなりするので、逆に後衛からの攻撃で残った片手を潰してもらうとかで、対応できるだろう。では、明日、もう一度ビッグゴーレムの攻略をしてみて、いけるなら8層の鉄鉱石採集は断って9層より上を目指すでいいかな。」

「当面は、それで良いよ。詰まったらその時に考えよう。」

「私もそれで良いわ。」

「ミャオも同意なのにゃ。」

 3人が同意してくれたので、9層以上を目指して攻略する事にした。



 翌日、8層の階層主エリアを一旦出て、再度、ビッグゴーレムと対峙する。一人で、ビッグゴーレムに近づいていき、ビッグゴーレムの防御エリアに入る到達すると同時に後衛からの攻撃が始まる。

「ウォーターニードル。ウォーターニードル。」

「シングルアロー」

「クロスカッター」

 喉下に狙いを絞った攻撃を嫌がったビッグゴーレムが左の手を防御に回すが、その手にクロスカッターが炸裂し、手の岩が崩れる。たまらず、右手も防御に回し始めたのを確認してビッグゴーレムの足元に滑り込む。

「ガッ、ガッ、ガッ、」

 魔力を流した左右の剣で、左の膝を交互に打ち付ける。右手を喉下の防御に回し、クロスカッターで傷ついた左のコブシを再生しようとした様だが、再生する間も無く崩れた左手を膝を攻撃している僕に叩き付けてくる。

「ガシッ」

 そのコブシを受け流すのでは無く、崩れた所を狙って更に破壊を試みる。左のコブシが完全に崩れた。

「ウォーターカッター」

「ファイヤーアロー」

「クロスカッター」

 後衛の皆が、防御が片手になっているのを見てすかさず威力の高い攻撃を集中させる。右手の防御に攻撃が集中し、右のコブシが崩れた所に顎の防御をクロスカッターが切り崩す。

「ガッ、ガッ、ガッ、」

 崩れた左のコブシを喉下の防御に戻したのを見て、膝への攻撃を再開する。すでに切り崩している膝を更に切りつけると魔力線を切り裂く感触があり、左の膝を切り裂くことに成功する。

「ズッ、ズズン」

 左から、こちらに倒れてくるので慌てて後ろに飛び下がる。

「カッ、カッ、カカカカカ、ザシュ」

 倒れるのを見て、前に回ってきたミャオがビッグゴーレムの首を切りつけ切り落とした。

「ウォーターランス」

「ファイヤーアロー」

 首が無くなったのを見て、ケイトとマリが首の断面に攻撃を入れた。

「ズガン」

「ボシュッ」

 2人の攻撃があたり、ビッグゴーレムが光の粒子になって消えていった。ドロップは無かったので、魔石を拾って9層へ上る。


「ビッグゴーレムは何とかなったね。昼までは、9層を探索して、昼前になったら降りて帰ろう。」

 今回は3泊の日程だったので、帰りの時間を考えると探索は午前の3時間程度で打ち切りになる。


 海賊ゴーストを相手にしながら、海賊船の中を探索する。海賊ゴーストは、前衛が剣を弾いて後衛がバンダナに攻撃するパターンで対処するスタイルが自然と定着した。当初、火魔法を使う事で船が類焼しないか心配したが、ファイヤーアローが壁や家具に突き刺さってもバンダナだけが燃えて類焼する事は無かった。家具を壊しても、一旦部屋を出て戻ってくると元に戻っているので、船や家具もダンジョンの一部で燃えにくくなっていて燃えても元に戻るようだった。一番時間がかかるのは、ゴーストを倒した時にドロップする宝箱の対応の方だった。


 その後、4体のゴーストを倒して、2隻目の船を踏破したところで、時間になったので引き返す事にする。帰りにも2体のゴーストを倒して、2つのミスリルを手にできた。


 8層へ降りて、昨日の採掘場所に立ち寄る。午前中は、昨日掘削組だった一片ひとひらの夢が警戒組で洞窟を守っていた。パーティリーダーのヤンクに声をかける。

「昨日は、お世話になりました。今日は、ヤンクさん達が警戒組なんですね。」

「おぅ、ドリームカルテットだったな。昨日、こっちの戻ってくるかと思ってたが、上に昇れたのか?」

「はい、何とかビッグゴーレムは倒せました。」

「そうか、D級は大概ここで足止めになるんだが、それじゃぁ上での活動になるか。」

「はい、ゴンタさんには、採掘クランに誘って頂きましたが、当面は最上層の10層を目指して活動したいと思います。でも、ここは通るので、必要なものがあればパンと交換で持ってきますよ。」

「そうか、それはありがたい。来週も来るのなら塩を1kgでパン12個と交換でどうだ。」

「わかりました。それでは、来週はメンバーの昇級試験があるので、水の日か木の日になると思うけどそれで良ければ、塩持って上がります。」

「それで、大丈夫だ。それと、ゴーレムの対応方法教えてくれてありがとな、今朝もゴーレム倒したが、倒すのが大分楽になった。そうだ、今は『狐の鈴』が採取しているから、リーダーの狐美コミに会っていけ、スレン、採掘場に案内して狐美に紹介してやって。」


 一片の夢のメンバーで前衛のスレンさんに案内してもらい採掘場へ行き、『狐の鈴』が採掘している所でリーダーの狐美さんを呼び出してもらう。

わらわが狐美じゃ。主がドリームのツグトかえ?」

「こんにちは、ドリームカルテットのリーダーをしているツグトです。」

「ゴーレムの弱点はゴンタから聞いている。妾達も、討伐が楽になって有り難く思っておる。ありがとうなのじゃ。」

「お役に立ってよかったです。今後も、こちらに寄る事があると思いますので、よろしくです。」

「冒険者同士じゃ、敬語はやめてたもれ。それと、採掘クランには参加しないのかぇ?」

「わかった。当面は10層目指そうと思っている。」

「そうかぇ、ビッグゴーレムを攻略できたのじゃな。残念じゃが、上を目指すのであれば致し方かるまい。では、上に行くときには、寄ってたもれ。」

「はい、来週、又来るよ。」


 そう言って、採掘場を後にしてギルドに戻った。

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