第44話 9層 海賊船
9層に昇ると、そこは、海が広がっていた。階段を出たところに、堤防があり、堤防に船が連なって繋がっている。しかし、それらの船はどう見ても動かなさそうな、一目で壊れているとわかる船の墓場であった。
「この船に乗るのか。。。」
「乗ったら、沈むんじゃないだろうな?」
僕が、船に乗り込みたくないと言うと、マリが沈まないか不安の声を出す。
「もうすぐ日が暮れるので、とりあえず中を覘こう。」
ケイトが冷静に日が暮れそうと言うので、とりあえず一番近くの船に乗り込み、甲板にあるドアを開けて船底への階段を下りていく。中は、壊れた甲板の隙間から漏れてくる日の光があるだけで、薄暗かった。
船底に降りた所は部屋になっており、部屋の反対側にドアがあり次の部屋に続いている様だ。これを一部屋づつ覗いていくと思うと気が滅入る。仕方がないので、部屋の中に入る。薄暗い中に浮かびあがる人影が見えた。肩までのチョッキを着てダボっとしたズボンに頭には黒いターバンを巻いた、如何にも海賊といった姿で身長は150cmぐらいの男だ。しかし何か様子がおかしい。
よく見てみると、足が床に着いていない。手には蛮刀を携えている。後ろからマリが声をかける。
「それは、海賊ゴーストだよ。体への攻撃はすり抜けるが、刀は実態があるので気を付けて。」
この階層にいる魔物はゴーストで、体への攻撃がすり抜けるのでやっかいだ。更に手に持った蛮刀は実態があり、避けそこなうと怪我をする。
ゴーストは音もなく宙を浮いたまま、こちらに近づいてくる。
「ブンッ」
いきなり、蛮刀を振ってきた。どの程度の威力があるのか見るため、あえて剣で受け止める。
「ガシッ」
重くは無いが、確かに実態を持った剣だった。蛮刀を弾き、持っている手に切りつけてみる。
「スカッ」
剣は、腕をすり抜けていった。腕はすり抜けるが、蛮刀は持ったままだ。
一旦、ゴーストの前から引いて、後衛の攻撃に任せてみる。
「ウォーターカッター」
ケイトが攻撃を仕掛ける。狭い室内なので、縦方向に撃ちだしたウォターカッターを、海賊ゴーストが蛮刀で防ごうとする。
「ガシッ」
攻撃を受け止めたゴーストが壁に飛ばされる。宙を浮いているので、踏ん張りが効かないのだ。
「・・・攻撃がすり抜けるのに、わざわざ受け止めたという事は、今の縦の攻撃のラインに攻撃の効く場所がある。ケイト、剣を弾くので、もう一度、縦カッターを撃ち込んで。」
ケイトに攻撃を頼んで、ゴーストに向かう。
「ガシッ」
「ウォーターカッター」
再度近寄ってきたゴーストが仕掛けてきた攻撃を弾くと同時に横に避ける。横に剣を弾かれたゴーストは、ウォターカッターを防ぐことができずに攻撃を受ける。
「スパッ」
体は攻撃がすり抜けるが、黒いバンダナが真っ二つに切り裂かれてずり落ちてくる。
バンダナが落ちると、ゴーストは光の粒子になって消えていった。魔石と宝箱が残されていた。宝箱を開けると、中は空だった。
「中は空、ハズレを引いたにゃ。」
ドロップする宝箱はハズレもある。ミャオが文句を言いながら、蓋を閉じると宝箱も光の粒子になって消えていった。
「ミャオ、今の宝箱には何もなかったけど、中には針が飛んでくるとかの罠が仕掛けられている事もあるので、開けるときは慎重に開けないと怪我をするぞ。」
マリが宝箱の危険性を指摘してくれた。
「黒いバンダナも実態が有って、壊すと倒せるようだ。他のゴーストも同じか検証したら8層に戻ろうと思うけどどうかな?」
皆に提案すると、同意を得られたので次の部屋に進む
次の部屋は何も出なかったので、更に次の部屋に進む。ドアを開けると、反対側に階段が見え、甲板に戻る様だ。小さな船なので、3部屋で終わりみたいだった。部屋の中に入るとクローゼットが勝手に開いて海賊ゴーレムが出てきた。今度はミャオが前に出て、闘う。
「カン」
左のシミラーで蛮刀を弾いて、右のシミラーで下から黒いバンダナを切り上げようとすると、ゴーストは上方向にスルスルっと動いて躱した。ジャンプとかでは無く、浮いて前に出てくるのと同じように上にも動けるようだ。
「ファイヤーアロー」
天井付近に止まった海賊ゴーストにマリが攻撃を仕掛けた。ファイヤアローがバンダナに刺さりバンダナはそのまま燃えて無くなった。本体のゴーストも光の粒子になって消えていく。魔石と宝箱がドロップしていた。宝箱は毎回ドロップするようだ。
今度は、ケイトが宝箱を開ける。カギの付いて無いフックを外し、少し離れ短杖で蓋を突いて開ける。特に、罠では無かったようなので、気を付けながら覗き込むと、親指の先程の金属の塊が見えた。
「これは、ミスリルの塊の様だ。これは、当たりだね。」
ミスリルに知識のあるケイトが、粒を見ながら言った。
部屋の先にあった、階段を昇っていくとやはり甲板だった。降りてきた階段を探すが見当たらないと言うか、堤防の方を見ると間に最初に乗り込んだ船が見えた。船底へ潜って、昇ると次の船に繋がっているようだ。堤防に戻ろうとすると、今昇ってきた階段を降りて戻るしかない様だった。試しに、最初に乗った船に飛び移れないかと船尾から手を伸ばすと階層主のエリアに有る様な見えない壁があった。仕方が無いので元の階段から戻る事にした。
通ってきたときは、何も出なかった2つめの部屋で海賊ゴーストがドロップした。今度は僕が前に出てゴーストと対峙する。
「ケイト、マリ、刀を弾くので順番に攻撃してみて。どの程度の攻撃が効くのか弱い魔法から順に試してみて。」
後ろに声をかけて、ゴーストとの闘いに入る。
「カン」
ゴーストは力が強い訳でないので、蛮刀を弾くのは比較的簡単だ。
「ウォータニードル。」
最小のMPで放てる攻撃をケイトが仕掛けた。バンダナに突き刺さり、後ろの壁に突き刺さり縫い留める。少し遅れてバンダナに引っ張られてゴーストが壁に突きあたる。
ウォータニードルの魔力が切れて消えると、穴の開いたバンダナを付けたゴーストが何も無かったような顔で近づいてくる。ゴーストに向かって行き、再度蛮刀を弾く。
「カン」
「シングルアロー」
今度は、マリが攻撃を仕掛ける。ケイトの時と同じ様に魔法の矢は、バンダナに突き刺さり、後ろの壁にゴーストを縫い留める。魔法の矢の魔力が切れて消えると、穴の開いたバンダナを付けたゴーストが何も無かったような顔で近づいてくるのも同じ構図だ。
「バンダナを切るか、燃やすかしないと駄目みたいだね。バンダナを剣で切れるか、試してみるね」
後ろに声をかけ、今度は、剣で切れるか検証してみる。
「カン、ズパッ」
蛮刀を剣で弾き、下から切り上げると上に逃げられるので、上段から切り下げてみた。剣にあたったバンダナはしたの方向に海賊ごと動いていく。床に足が付いた所で止まるかと思ったが、足がそのまま床に沈んて行く。しかし、実態のある剣が床に着いた所で床に引っ掛かったようで動きが止まり、そのままバンダナを両断できた。
魔石と宝箱がドロップしたので、今度は、僕がら空箱を開ける。ケイトと同じように、 カギの付いて無いフックを外し、少し離れとところから剣で蓋を開ける。
「バンッ」
大きな音がして、箱から
「やはり、罠にあたる事もあるようだ。開けるときには、盾を構えた方がよさそうだ。」
礫にあたりそうになった事を皆に伝えて、海賊船を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます