第43話 ビッグゴーレム

 ゴーレムの魔石を回収したゴンタさんが戻ってくる。

「ふぅ、鉄鉱石はドロップしなかったな。」

「お疲れ様です。すごいパワーですね。でも、何故、喉下の急所を潰さないのですか?」

 ゴーレムを粉々に解体した戦い方を見て、不思議に思ったので聞いてみた。

「・・・え?、急所って何?」

 粉々に粉砕するとドロップ率でも変わるのかと聞いてみたが、まさかの急所を知らないだけだった様だ。

「いや、ここのゴーレムは喉の下に急所があって、そこを攻撃すると倒せるでしょ。」

「えぇー!!本当か?」

「僕たちは、そうやって倒してきましたよ。」

「・・・そうなのか。重要な情報なので、ここのクランのメンバーに共有していいか?」

「命に関わることのなので、是非、共有してください。あまり、知られていない情報の様なので、ギルドにも報告しておきます。」


 そんな、驚きの事実もあったが、時間も遅くなってくるので礼を言って別れ8層の階層主部屋を目指す事にした。


 掘削場所から少し洞窟を先に行くと、再度、開けた場所が出てきた。ここは、階層主エリアの様だ。広場の向こう側に、階段が見える。エリアに一歩踏み込むと、今までのゴーレムの2倍程の背丈があるビッグゴーレムが現れる。身長が倍(4m)と言う事は、重量は8倍になる。

「ズシン、ズシン」

 ビッグゴーレムが歩く度に、地面が揺れる。後衛に近づけさせる訳にはいかないので、身体強化をして、ビッグゴーレムに近づく。コブシの岩も倍の大きさがあり、人の頭ぐらいに見える。そのコブシを無造作に振ってきた。


 見た感じは、通常のゴーレムがコブシを振るのと同じ様に見える。しかし、倍の長さの腕を同じように振るという事は、倍の速度が出てるという事だ。間近で見ると、振られた腕のスピードは途轍もなく早く感じる。初見のパンチを何とか躱すと、ドッと冷や汗が出てきた。

「ウォータニードル」

「シングルアロー」

 後方からマリとケイトの攻撃が放たれる。しかし、身長が高い分距離があるのと動きが早いせいで、喉下から狙いが逸れて、肩辺りに着弾する。少し肩の岩が削れるが、あまりダメージが入ったように見えない。ミャオが反対側から近寄るが、こちらにもコブシの攻撃が放たれて、慌てて後ろに飛び下がっていた。


 とにかく動きを止めようと、再度、飛び込んでコブシを躱し膝を狙う。膝の高さが1mぐらいの所にあり、ゴブリンの首と同じ高さになる。ゴブリンの首を跳ねる要領で、剣を振る。人の胴体ぐらいの太さがあるが、ゴッグの核に切り込むのと同じぐらいの感覚で切りつける。剣が入っていくが、途中で剣を弾く抵抗があり、途中で止まる。そこに、ゴーレムのコブシが飛んでくる。慌てて剣を引き抜き、迫るコブシに2本の剣を合わせ横へコブシを流しながら後ろに避ける。


 今、切りつけた膝を見ると、剣が入った所が削れているが魔力線がそこからあふれ出していた。通常のゴーレムに比べて体の中を走る魔力線が太く、その魔力線のところで剣が止められた様だ。見ている間に、魔力線が近くの石を集めて切り裂いた膝を修復していく。ミャオの方も、動きを止めるために足元に潜り込もうとしているが、コブシに阻まれてうまく潜り込めていない。


 膝の修復を終える前に、再度攻撃をしかける。飛んでくるコブシに剣を合わせて、横に流す。コブシの攻撃が重すぎて剣を流すよりも、こちらの体の方が流される。近づいてはコブシで押し戻されてを2回繰り返す内に膝の修復を完了したようだ。


「ウォータニードル」

「シングルアロー」

 再度、後方からマリとケイトの攻撃が放たれる。僕とミャオを攻撃するために少し前かがみになっていたビッグゴーレムが、マリとケイトの攻撃を喉元から外すために姿勢を上げる。自然と腕も上に上がった隙に再度足元に潜り込み膝を攻撃する。

「ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、」

 先ほど剣が途中で弾かれた事に対応するために、一度で切り裂こうとせずに、軽く切りつける攻撃を左右で連続して繰り返す。2度3度同じ所を切りつけると魔力線にあたった時の抵抗を感じるが、4度目5度目で魔力線ごと断ち切っていく。魔力線ごと断ち切ったところで、再度前かがみになりコブシの攻撃をしてきたので、後ろに下がる。膝を切られたビッグゴーレムはバランスを崩し、こちらに倒れてくる。

「ズズン」


 更に後ろに飛んで躱すと、頭が目の前にあった。腕をついて、たちあがろうとするビッグゴーレムの横に回り込み、首に剣を振り下ろす。

「ガッ、ガッ、ガッ、ズパッ」

「ゴロン」

 左右の剣を繰り返し切りつける事で、切り落とした首が転がって下に落ちる。それでも、上半身を持ち上げ様とするビッグゴーレムに、回り込んだミャオが肘に剣を付きたてる。

「カ、カ、カカカカカカ、ザシュ」

 片方の肘を切られたビッグゴーレムは体を横倒しにして倒れる。

「ズズン」

 腹を正面に向けたビッグゴーレムに向かって、マリとケイトが攻撃をしかける。

「ウォータニードル」

「ファイヤーアロー」

 横倒しのビッグゴーレムの首下あたりに攻撃が同時に入る。

「ズッ、ガガン」

 ここに来て、複合魔法エクスプロージョンが成立した様だ。首下の急所を破壊されたビッグゴーレムは、光の粒子になって消えていった。


 魔石の他に、鉄鉱石がドロップしていた。その鉄鉱石が8倍の重量に合わせて、ゴーレムのドロップの8倍の大きさがある。

「これ持って、動くの大変だよね。」

 ケイトがうんざりした声を出す。

「お金にはなるんだから、分けて持っていこう」

 ケイトをなだめて、今までドロップしたゴーレムの鉄鋼石を合わせて4人で分けて持つ。


 広場の後ろにある階段を昇ると、いよいよ9層デビューだ。

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