第34話 スケルトンジェネラル
次の日、午前中にもう一個魔晶石を採取して午後には帰途についた。ギルドで、3個の魔晶石を提出する。
「え、魔晶石を3個も!3日で3個はすごいよ。普通は、3日かけて一個あればいい方なんだけど。」
「運がよかったんですよ。」
ライラさんに、驚かれたけど運がよかったで流しておいた。魔晶石の探し方は、パーティの秘密って事にしておいた。久々にギルドの食堂で普通の食事にありついて2人前を平らげた。
次の日は、休みにして食料の買い出しなどをして過ごした。勿論、干し魚も買い出しておいた。
木の日、昼前には6層にたどり着いていた。昼になるころには6層の洋館前で弁当を広げていた。
「ケイト、ついに6層のボスエリアだね。」
「ボスはスケルトンジェネラルだったよね。近接型の剣士タイプって事なので、後方からの支援をするよ。」
「了解。では、行こうか。」
洋館の扉を開ける。この扉は、先にパーティが入っていると開かないのだが、今は人がいないのですんなりと開く。中に入ると勝手に扉が閉まる。これで、ここから出る迄は外からは開かない。ただし、攻略を諦めて出るのは自由だ。中に入るとランプの光で照らされたホールが見える。階段があり、2階には扉があるので、あれが7層への扉だと思う。奥に置かれていた椅子が一脚あり、その椅子に座った姿のスケルトンジェネラルが姿を現した。
「ウォーターカッター」
「飛べ、斬撃」
座ったままのスケルトンジェネラルに先制攻撃をかける。先制攻撃をすると同時に、身体強化を掛けた状態で突っ込む。同じタイミングでスケルトンジェネラルはスラリと立ち上がり両手に持った黒い刀身の剣で2つの攻撃を弾く。立ち上がったスケルトンジェネラルは、外に居たスケルトンより2回りほど大きく、骨の色も黒に近い灰色をしている。盾の替わりに2振りの剣を持っている。この剣はスケルトンが持っていた黒い骨と同じ色をしていた。右手に持った剣で袈裟懸けに切りかかる。スケルトンジェネラルから見て左からの攻撃を遠い方の右手の剣で右に受け流しながら、左に一歩動く事で、剣の勢いを殺さずに右の方へ受け流す。
「スルッ」
ケイトが盾に水の魔力を流し込んだ時の様に、剣が流されて体が泳ぐ。流れて半分背中を見せている右側から、今度はスケルトンジェネラルの左手持った剣が攻撃を仕掛けてくる。防御が取れない。咄嗟に体が流れた方向に飛び込んで前転しながら躱す。
「ブハーッ、ハー」
全身から冷や汗が流れる。そんなに、打ち合った訳でも無いのに息が乱れ、心臓の鼓動が早くなる。スケルトンジェネラルの剣に目を凝らして、水の魔力を纏っていないか観察するが、その様な様子は見られない。水属性の魔力で流したのでは無い。さっきの攻撃を思い返す。剣がかち合った時に手への衝撃は感じなかった。とりあえず、剣を流されることが分かったので、剣の振りを小さくする事で、流される力も弱くなる様にして攻撃を続ける。
攻撃しながら観察すると、剣の腹で受けられている。かち合った時の角度が絶妙で剣を振る方向とほぼ同じ角度で剣を当てるので当たった瞬間に衝撃が無い事が分かった。剣が当たってから、徐々に剣の角度を変えて外側に弾くように持っていかれる事で、振った方向に勢いを足されて体ごと流される様だ。剣の振りを小さくしたおかげで、そこまでは解ったが解った所で、流されるのは同じだ。剣が流されるたびに飛び下がったりと大きくフォローをする必要があり、体力が削られていく。
10合、20合、30合と打ち合うが、フォローが遅れて反撃をかわし損ね、掠った傷が増えていく。このままでは、こちらの体力が無くなってやられてしまう。そう思って、勝負に出る。最初に仕掛けた時と同じ速さで攻撃を仕掛ける。最初の時と同じ様に、体が左に流される。背中に向けて右から攻撃が来るが。流された勢いを利用して、体を回転させ左に持った盾で剣を受け止める。受けた剣をシールドバッシュで弾き飛ばして、体制を崩してやろうとしたが、逆に剣を引かれてたたらを踏む。がら空きになった左わき腹にもう1本の刀が飛んでくる。思いきり盾を突きだしているので、引き戻しが間に合わない。衝撃を減らす為に身体強化の魔力を強める。
「ガシッ」
左のアバラの辺りに剣があたるのが判った。衝撃を和らげるために反対側に飛ぶ。
「ゴロゴロッ、ガシッ」
飛んだ先の壁に当たって止まる。スケルトンジェネラルの方を見るが、追撃はして来ない様だ。ゆっくりの立ち上がり、体の状態を確かめる。
「痛ッ」
左のアバラが何本かやられたみたいだ。ケイトの方へゆっくりと歩いていき、声をかける。
「ケイト、撤退しよう。」
「あぁ、最後に一度試させて。」
そう言うと、ケイトが攻撃を仕掛ける。
「ウォーターニードルカルテット」
4発のウォーターニードルで攻撃を仕掛ける。その攻撃をスケルトンジェネラルは、2本の剣で弾き飛ばした。1本の剣で2本のニードルを受け止めて弾くのだが、同時に飛ばされたニードルを剣を斜めにする事で着弾のタイミングをずらし、難なく弾いてしまう。タイミングがずれると言っても剣の傾きの距離だけなので、それを別個に弾くのは、名人の域に達していると言っていいだろう。
「撤退しよう。」
ケイトも納得がいった様で、出口に向かって下がっていく。追撃が来ないか警戒しながら後ろ向きに下がっていくが、追撃の意思はなさそうだった。
洋館を出て一息つく。身体強化を解くと、アバラに痛みが走る。
「ツゥ」
「ツグト、痛むのか?」
「あぁ、アバラが折れたみたいだ。」
アバラの位置を周りの筋肉で正常位置に戻す為に、再度、身体強化をかける。すると痛みがましになった。怪我の位置に魔力を多く流すように制御すると、魔力循環をしているのに魔力が減っていく感覚があった。
「??・・・魔力循環したら、魔力が減っていく。」
「過剰に流しすぎじゃないの?」
「あ、でも、痛みも引いていく。暫く、魔力流して見るよ。」
暫く魔力を流していると、痛みが無くなった。痛みが無くなると、魔力を流しても魔力が減っていく感じも無くなった。魔力循環を止めてみる。
「魔力循環で痛みが引いた。魔力循環を止めても痛みが復活しない。」
「まるで、治癒魔法みたいだね。」
ケイトに言われて、ハッと気付く。怪我が治った?左の腕を回してみるが痛みが無い。体を捻ってみるが痛みは走らなかった。恐る恐る怪我をした所を押えてみるが全く痛みは無かった。
「本当に治ったみたいだ。自己治癒魔法って魔力循環なのかも?」
魔法の属性は火/水/風/土/無の5つだが、稀に治癒魔法を使える人がいる。使える人が少ないので、通常は魔法の属性に数えない。身体強化をすると、怪我をし難くなると言われているが、怪我自体をし難くするのとは別に、細かい怪我を治す効果もあるのでそう思われているのかも知れない。
細かい傷が沢山あったのを確認すると、ほとんどの傷が治っていた。酷かった傷も傷口はふさがっている。ふさがった傷口に傷薬を塗っておっく。低級の怪我ポーションを使おうと思っていたがその必要は無さそうだった。
「傷の手当を終えたので、下の階に戻ろう。」
「本当に怪我大丈夫なのか?見た感じは大丈夫そうだけど。」
「魔力循環は、自己治癒の効果があるみたいだ。村に居た頃、ゴブリンとの闘いで怪我をした事があったけど、あの時も怪我が早く治ってた。当時は薬草のおかげだと思ってたけど、今思えば、戦闘の中で魔力循環を多用してたので、そのおかげだったのだと思う。今回の怪我も、低級ポーションじゃ足りないかと思ったけど、ポーションを使わずにすんで助かったよ。動くのには問題ないので、行こう。」
「僕が前を行くので、ツグトは後ろから付いてきて。」
「魔力がごっそり持って入れたので助かるよ。」
下の階を目指して進み始めた。
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