第33話 ドリーマーとの再会

 6層から5層へ降りる階段まで戻ってきた。

「ケイト、もうすぐ日が暮れるけど、いったん降りてみて攻略するパーティが居なければ5層の階層主エリアで休憩しながら日暮れを待とう。」


 階層主エリアは、日が暮れるまでは攻略優先で、日が暮れると攻略が禁止になり冒険者のセーフティエリアになる。5層の階段を下りていくと5層に出る直前のところで結界が張られていた。階層主を攻略しているパーティが居るようだ。結界のところで階段に腰をかけ戦闘を見守る。

「ツグト、あれドリーマーじゃない?」

 よく見ると、マリとミャオが階層主と闘っていた。ミャオが階層主の大口ワームを煽ってヘイトを取ろうとしていた。後ろではマリが弓を構えている。

「そうだよ。ドリーマーだ。」

 マリが弓を放つ。

「ファイヤーアロー」

 矢じりが真っ赤に燃えた状態の一本の弓を放つ。階層主の中心あたりに矢が突き立つ。一本に込めた火属性の魔法の矢は、硬くなった赤黒い皮膚を物ともしてなかった。

「マリのファイヤーアロー、威力がえぐいね。」

 思わず、称賛の声を上げてしまった。しかし、階層主の大口ワームは大きすぎて核を正確に射抜けなかったようだ。

「あの長さじゃ、正確な真ん中わかんないよね。」

 今度はケイトが感想を洩らした。怒った階層主の大口ワームがその名の大口を開けてマリに迫っていく。それを見てミャオが口から2mほどの所に剣を切りつける。

「カカッ・・カカッ・・カカカカカカ・・・」

 回転しながら2本のシミラーを叩きつけたと思ったら、回転がどんどん速くなり3回転目からはカカカと連続切りつけになっていた。スカートが浮き上がり傘の様になっている。

「カカカカ、ザシュ」

 暫く切りつけ続けると、剣が通った。正確に同じ所を切りつけ続ける事で、あの硬い皮膚にも剣が通る様だ。たまらなくなった階層主の大口ワームが、尻尾の様な後ろの体を振り回してミャオを潰そうとしてくる。ミャオをは素早く後退する。

「ドガッ」

 ミャオの居た所に叩き付けようとして、切り裂いた傷を直撃し、階層主の大口ワームは痛みで悶えている。

「ファイヤーアロー」

 その時、ミャオを切り裂いた傷に寸分の狂いもなくマリのファイヤーアローが突き刺さる。ファイヤーアローが突き刺さった所を中心に炎が吹いたと思ったら、階層主の大口ワームが光の粒子に替わっていった。魔石を拾って、こちらに歩いてくる。

「マリ、ミャオ、お疲れ様。」

 2人に声をかけると、向こうも気が付いたようで、マリが声を返してきた。

「ブルースカイの皆さん、こんばんわ。こちらで、野営ですか?」

「そうです。ドリーマーの戦いぶりを見学させてもらってました。」

「うちらも、ここで野営の予定なので、よろしく。一度上に昇ってきますね。」

 そう言って、上に昇って行った。


 戦闘の間に、日が暮れたので野営の準備を始める。ドリーマー達も戻ってきて、野営の準備を始めていた。マリに話しかける。

「よかったら、一緒に食事しませんか?皆で食べた方がおいしいし。ケイトも良い?」

「僕はいいよ。」

「私も、いいわよ。ミャオ、ブルースカイと一緒に食事しようって。」

「問題無いにゃ。」

 皆で食事することにして、食事の準備を始める。出来たものを持ち合って食事を始める。

「マリ、ファイヤーアローの威力はすごかったね。」

「あれ、威力あるけどMP4持ってかれるのよね。さっきのボス戦は、結構ギリギリで、ファイヤーアローだとあと一発撃てるかどうかってとこだったわ。」

「そうそう、あそこで倒れてくれてよかったにゃ。」

「ミャオの連続切りもすごかったよな。正確に同じところを切りつけて、あの硬い皮膚に通るって思わなかったよ。」

 ケイトも感想を述べる。

「あれは、尻尾?の攻撃が迫ってきてたので、結構焦ってたにゃ。諦めて、退避しようとしたときに剣が通ってくれたにゃ。」

「へー、結構余裕で切りつけてるのかと、思ったよ。ところで、ドリーマーのスープすごくいい匂いがするんだけど、何が入っているの?」

「これね。出汁に干し魚を使っているんだよ。ちょっと味見してみるかい。」

「いいの。少しください。」

 あまりに良い匂いがしていたので、感想を述べると少し味見させてくれる事になった。食べ終わっていた皿に鍋の中身を少し入れてもらう。

「うわー、おいしい。魚の出汁って、こんなにうまくなるんだ。」

「ケイトも少しどうだい。」

「いただきます。・・・確かに、これはおいしい。」

 ケイトも味見をさせてもらい、次来るときは干し魚を購入する事が決まった。


「ツグト、さっきの闘いで気になった事があったら、言ってくれないか。あんたのアドバイスは4層でずいぶん参考になったしね。」

「そうですね。・・・大口ワームは皮膚が硬いんだけど、中からの攻撃って結構通るんですよね。さっき、MPがギリギリって言ってたけど、通常のアローでも口の中にぶち込んだらダメージが与えられるし、ファイヤーアローでも口に放り込んだ方がダメージが上がると思う。MPが切れそうって言ってたけど、階層主以外の大口ワームにもファイヤーアローを?」

 先の闘いを思い返しながら気になったところを指摘する。

「そうだね、通常のアローは通らなかったからファイヤーアローを使っている。」

「僕も、ケイトもマリのアロー程度かもっと弱い攻撃を大口ワームの口に叩き込んで倒しているよ。通常の大口ワームはアローで十分だと思う。ミャオの飛ぶ斬撃も両方の剣のクロスの方じゃ無くて、片手の斬撃で倒せると思う。」

「へー、やっぱ参考になるわ。あと、6層のスケルトンなんだけど、ミャオに倒してもらったんだけど、手間取ってね。」

「そうにゃ、切っても切っても復活するので、切って崩れた所を上から何度も踏みつけてたら倒せたにゃ。」

「スケルトンは、胸の中心にあるプレートの裏側に核があるんだ。骨が崩れたら、プレートを踏みつけて、その核を潰すと倒せるよ。」

「あら、そうなの。ギルドの講習では、威力の大きな攻撃を当てると倒せるっていってたのでここもファイヤーアロー使うしか無いかとおもってたわ。さすがツグト君ね。」

「ケイトも、近接戦で倒せる様になったよね。」

 ケイトに振ると、ウォータビーンズで回転させてからの攻撃の話をして、ドリーマーの2人を感心させていた。


片付けが終わり、就寝までのひと時、マリが淹れてくれたお茶を飲みながら雑談をしていると、マリが真剣が表情で切り出した。

「ブルースカイにお願いだあるんだけど、もし良かったら、私達ドリーマーのメンバーとパーティを組んでくれないか?毎回、階層が上がる度にギリギリの状況になっている。もう少し余裕を持って攻略したいのと、ツグト達の攻略方法がすごく参考になる。どうだろうか?」

「・・・僕はいいけど、ケイトには今は話せない事情がある。お試しで一緒に攻略してみて問題なければ、ケイトの事情を話した上でってなると思うけど、ケイトはそれでいい?」

「僕の方はいいよ。」

「うちもお願いしたいにゃ。」

「ケイトの事情って、王位の第8位継承権者ってやつかい?」

「な、なんでそれを?」

 びっくりしたケイトが聞き返すと、マリがあっさりと返す。

「ギルドでは有名な話だよ。噂になっているのを知らないのは本人だけ?」

 それを聞いて、ケイトががっくり肩を落としていた。

「僕たちは明日ダンジョンから出る予定だ。マリ達は明日も泊まりだよね。今週はサイクル合わないので来週の月の日からお試しで合同パーティって事でいいかな?」

「ちょっと待って、次の月の日はD級講習会に出ろって言われているので、火の日からでもいいかな?」

「あぁ、ケイトもD級昇級だね。」

「じゃあ、火の日からね。できれば、神の日に装備や食料の買い出しに行きたいので、一緒にいきましょう。」

 マリが締めて、その日は就寝となった。

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