第32話 6層 スケルトン

 日暮れまで3時間というところで、6層に昇った。じっくりとみると、ここの墓場は道が無く墓がランダムに置かれているので墓石を避けながら、進まないといけない。しかも、ここの墓石が歩行の障害物となるように2~3枚が隙間なく並べられており、高さも2m近くあり見通しが効かない。右によけて少し進むと又墓石を今度は左に避けてといった感じで進む。

「ここの墓場、わざと迷路になるように作られているね。」

 ケイトに話しかけると、うんざりした返事が返ってくる。

「本当に迷路を作ったって感じだね。今日は、墓場の向こうに見える大きな洋館の所までいけたらいい所だね。」

「行けても、行けなくてもあの太陽がもう半分下がったら戻るようにしよう。」

 こんな場所で日暮れを迎えるのはいやだ。ゆっくりと慎重に墓場を進む。僕が前でケイトが後ろだ。墓石の角を曲がった所などにスケルトンは待ち伏せをしていた。攻撃される前に、足を薙ぎ払う。前に倒れた所を上から核を狙って剣を突きたてる。

「ボシュ。」

 小さな音を立てて核がつぶれる。スケルトンが消えていき、残った魔石を拾って先に進む。

「遠くに出てきたら、ケイトが倒してみるか?」

「おう、ウォーターアローを胸の核に撃ち込んで効果があるか見てみたい。」

 ケイトは、水魔法でも通用することを証明するため、まずはこのダンジョンを一人でも踏破することを目標にしている。

「じゃあ、出てきたら脇に避けてケイトが魔法を撃ったら距離を詰めるようにするよ」

「うん、お願い。」

 そうして暫く出会い頭のスケルトンを僕が倒しながら進むと、少し見通しの効く通路に出た。そこに地面からスケルトンが生まれてきた。発生して暫くすると、墓石の陰に隠れたりするんだろうけど、生まれたばかりでは、隠れようもない。

「ケイト、任せた。」

 僕は、脇によってケイトの攻撃を見守る。

「ウォーターアロー」

 スケルトンの胸の中止にある金属プレートに命中する。流石のコントロールだ。金属プレートがウォーターアローに当たった衝撃で後ろに弾き飛ばされる。そのまま墓石にぶつかる。

「ガシャン、・・ボシュ。」

 核がつぶれて、生まれたばかりのスケルトンが消えていく。

「やったね。ピンポイントで当てる必要があるけど、ウォーターアローで一発だね。」

 ケイトに言うと、嬉しそうな顔でケイトが返す。

「通用するか不安だったけど、倒せてよかったよ。」


 魔石を回収して、前に出て歩こうとするとケイトが声をかける。

「ツグト、今のは偶々スケルトンが沸いてくるところに出くわしたので遠距離攻撃ができたけど、この階層って基本的に近接がメインだよね。僕のスタイルで近接戦できないかな?」

「ケイトが一番早く発動できる魔法って、ウォータービーンズだよね。それでも発動までに1~2秒ぐらいかかると思う。それではスケルトンに出会って、魔法を撃つ前に攻撃を受けるので、防御の手段が無いと難しい。魔法の盾みたいなのは出せないの?」

「ウォーターウォールは出せるけど、消費MPが半端ない上に発動にも時間がかかる。常時出しながらの移動も難しい。」

 ウォーターウォールは1.5m四方ぐらいの水の壁を出す魔法で出したまま動くことはできないとの事だった。

「それでは、僕の盾を貸すからこれに魔力を流し込んで。初撃を防御できたらウオータービーンズで攻撃して体制を崩せたら核を攻撃するって方法でどうかな?」

「やってみるよ」

 ケイトはすぐに盾に魔力を流して循環させられる様になった。盾の表面を見ると、僕の魔力を流した時とは違って、水で濡れたように光っている。

「魔力の属性が盾にも影響するんだね。ちょっと、攻撃してみるね。」

 いきなり剣で攻撃すると、防御が足りないと危険なので、まずは鞘に入れたままの剣で叩いてみる。

「カン」

 結構堅そうなので今度は、魔力を流さず剣で叩く。

「カッシュー」

 水の属性のおかげか少し角度が付くと剣が滑って流される。今度は剣に魔力を流して切りつける。

「ガッシュー」

 同じように受け流された。

「水属性の盾、最強だね。」

「うん、これなら行けそうだ。街に戻ったら、盾を買いにいくよ。」

 準備ができたので、今度はカイトが前で進んでいく。何かあったらカバーできる様にすぐ後ろを付いて行く。墓石の角を曲がるとスケルトンが待ち伏せしていた。

「ガン、スルッ」

 殴りつけられた黒い骨が滑って体制を崩す。そこに更にケイトが攻撃を入れる。

「ウォータービーンズ」

 慌てて、体制を戻そうとしていたスケルトンの左肩に攻撃があたる。すると、スケルトンの上半身がきれいに半回転して後ろを向く。下半身は動いていないので骨だけの魔物ならではの動きだ。しかし、それで核が後ろから狙える。

「ウォーターニードル」

「ボシュ」

 スケルトンが消えていった。

「ケイト、今のコンビネーション良いね。」

「ウォータービーンズをとにかく早く撃たないとと焦ったので、水滴を硬くするイメージが付加できなかった。それが逆に良かったみたい。骨を破壊せずに体が向こうへ向いてくれた。」

 体を半回転させた技は、偶然できた技のようだ。しかし、それでスケルトンとの近接戦闘ができるようになった。

「ウォータービーンズもいいけど、盾の効果で体制を崩せた時は、杖とかで攻撃した方が早くない?」

「両手で魔法を撃つこともあるから杖持ってなかったけど、殴り杖として持つのならありか。盾買う時に一緒に見てみるよ。」

 その後、ケイトが3体のスケルトンを倒した所で、洋館に辿り付いた。この中はボスエリアになるので、そこから引き返す事にする。ケイトは慣れない近接戦でかなり疲れているようなので、帰りは僕が前で進んだ。

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