第31話 大口ワームの巣

 次の日、昨日の鍋の残りを温めて朝食にする。一緒に煮込んでいた大きめに切った干し肉と干し茸をパンに挟み布で丁寧に包み今日の昼食の弁当として仕舞う。片付けをして大口ワームの巣を探す。

 しばらく砂漠を歩いて風が凪いだので、ケイトと背中合わせで回りを見渡す。これを繰り返しながら歩き回り、日が高くなったころでケイトが何か見つける。

「ツグト、あそこ砂が舞ってないか?」

 ケイトが不自然に砂の舞っている場所を見つけた。距離は大分ありそうだが、そちら向かって歩き出す。歩きだすとすぐに風が吹き出したが太陽と大きな砂の丘とで位置関係を把握しながら進む。砂漠は日が強いので直接日に当たらないよう、ローブを羽織っている。頭も砂だらけになるのでフードをかぶり、鼻に入る砂を減らす為の布を巻いているので暑いうえに息苦しい。見つけた場所には1度休憩を挟んでやっと辿りついた。見つからない様にギリギリまで近づき顔を出す。

「ケイト、やったね。やっと見つけた。」

「やっとだな。」

「これ以上近ずくと気付かれると思うけど、ここからウォーターカッター届きそうかな?」

 巣までは50mぐらいはあるが、今居る砂の丘を越えると障害物が無いので見つかってしまう。魔法での攻撃をするには30mぐらいまで近づきたい所であるが、警戒されていない今は、皮膚に魔力を流し込んでいないので皮膚に当てても魔法が通るはずだ。ちなみに、大口ワームは4匹は居るようだ。

「届かせるのは、問題ない。しかもあれだけ集まってくれているので的が大きい。外す事も無いだろう。」

「じゃあ、ここから攻撃して削れるだけ削ろう。皮膚が警戒色に変わったら、突っ込んでいこう。」

「よし、では3、2、1、ゴー」

 一斉に砂の陰から飛び出し、攻撃をする。

「ウォーターカッター」

「飛べ、斬撃」

 斬撃も大きめな50cmのものを飛ばす。手前の一匹にウォーターカッターがあたり、あたった大口ワームが奥に飛ばされる。その下にいた別の大口ワームに斬撃が突き刺さる。次の攻撃をしようとした所で、2匹の大口ワームが光の粒子に変わる。下から現れた大口ワームの皮膚が赤黒くなっていたので、巣へ駆け出した。向こうからもこちらに向かってきたので、足を止めて攻撃を始める。

「ケイト左をお願い。」

 そう言って、右の方の大口ワームの口目がけて、今度は30cmの斬撃を飛ばす。

「行け、斬撃」

「ウォーターアロー」

 2匹の大口ワームは、あっさりと討伐できた。魔石を拾いながら巣に近ずく。

「あれじゃ無いか?」

 ケイトに声を掛けながら、巣の真ん中にあった白い石を拾いあげる。

「少し魔力を流し込んだら、色が変わるはずだからわかるよ。」

「でも、僕の魔力は無属性だから色変わらないかも」

 そう言って、ケイトに石を渡す。ケイトだ少し魔力を流すと石の色が青に変わった。

「うん、魔晶石で間違いない。依頼達成だね」

「依頼は一個だけど、見つけ方もわかったのでもう少し探してみようか。」


 時間がまだあったので、探索継続を提案した。結局、昼を挟んで昼過ぎて暫く探索したところで、もう1つの魔晶石が見つかった。

「ツグト、これで2つになった。まだ探すか?」

「いや、スケルトンの方が気になるので、6層に行かないか?」

「そうだな。階層主の大口ワームも、やっかいだし早めにいこうか。」


 そうして、5層の階層主エリアに戻ってきた。

「ケイト、階層主の大口ワームって中心に核があるとは思うんだけど、スケルトンと違って生き物系魔物なので核を潰さなくても良いと思うんだ。ゴブリンやマッドドッグって首切れば倒せるでしょ。同じ様に首切ったら死なないかな。」

「やってみる価値はあるね。」

「じゃあ、ワームの一発目は正面からしか攻撃できないので、僕がやるよ。口を空けたら、2発目に角度付けれる位置からウォーターカッター入れてくれる。できれば縦で、その傷口から首切れるかやってみるよ。」

「了解、じゃあ行こうか。」

 階層主の大口ワームに飛ぶ斬撃50cmバージョンを叩き込む。怒った大口ワームが口を開いた所に右からケイトが魔法を叩き込む。

「ウォーターカッター。」

 大口ワームの体が曲がっていたこともあり、口の左後ろ2m当たりからウォーターカッターが飛び出す。大口ワームがカイトの方に向いた隙に、左から回り込む。縦に開いた傷口から上に切り裂く為に剣を突っ込み、傷口の下に足を突っ込んで上に切り上げる。上まで切り開いた所で今度は大口ワームから降りて傷口を下に切り込む。切り離しこそできていないが、大きく切り開かれた傷は半分切り離された様な状態になっている。尻尾の振り回しを警戒して一旦離脱する。

「どうだ!」

 暫くすると階層主の大口ワームは光の粒子となって消えていった。

「やったな、ツグト。」

「あの縦のウォーターカッターよかったよ。後の攻撃がしやすかった。」

「うん、できるだけ左寄りを狙って首の後ろに出るようにやってみた。」


 階層主の大口ワームを討伐して、6層に上がる。昨日は日暮れ前だったので一体しか相手できなかったが、今回は日暮れまで3時間ぐらいはあるので、いろいろと試させてもらおう。

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