第30話 スケルトンの倒し方
大口ワームのボスを倒して魔石を拾った後は、一度6層をのぞく。6層は墓場のフィールドで日暮れに近いととはいえ、かなり薄暗かった。日が暮れるまで6層で過ごし、日が暮れると同時に5層で野営する予定なので、時間まで、墓場を探索する。
墓の陰からスケルトンが出てきた。黒い50cmほどの骨を右腕に持ち、左手には今にも崩れそうなボロボロの木の盾を持っていた。
「ウォーターカッター」
ケイトが縦にウォーターカッターを飛ばす木の盾を構えるが、木の盾ごとスケルトンを両断していた。
「一撃だね。」
倒したと思って近寄っていくと、ケイトが後ろから声をかける。
「待て、魔物が消えていかない。まだ、倒してないぞ。」
その声に、足を止め警戒しながら近づくと、骨の塊が震えだした。
「ん?」
「え?」
骨の塊が動き始め元のスケルトンの形をかたどっていく。形を取り戻したスケルトンの左手には2つに割れたはずの木の盾も元通りの形で持たれていた。
「どうやって、倒すんだこれ?」
ケイトが後ろから声をかけてくるが、構っている暇はない。
「スパッ」
「ゴン」
今度は、骸骨の首を跳ねる。頭が音を立てて落ちるが、体はそのままだ。スケルトンが右の黒い骨を振り上げて攻撃してくる。
「カン」
骨なので切れるかと思ったが、黒い骨は結構硬い。頭が無くても目が見えるのか?一旦、後ろに下がって、頭の無いスケルトンを観察する。胸?の中心(アバラの中心だが)に、そこだけ金属のプレートがはめ込まれている。そのプレート目がけて剣を突きだす。
「カン」
これにも剣が通らない。再度、黒い骨で攻撃してきたので、今度は避けて、空ぶった腕目がけて剣を振り下ろす。
「ザシュ」
黒い骨を持った右腕の骨を切り落とした。
「ツグト、下がって、・・・ウォーターカッター」
僕が下がると同時に、ケイトが今度はウォーターカッターを水平に撃ちだした。スケルトンの胸のプレートの上を両断する。
「ガシャン」
スケルトンの上半身が吹き飛んで崩れた。しかし、胸から下は立ったままだ。左の残ったアバラめがけて蹴りを入れる。
「ガシャ」
今度は、下半身ごと倒れた。倒した方に付いている金属プレートを後ろから覗くと、赤黒く輝く小さな玉が嵌め込まれていた。親指の先ほどの大きさだ。その玉に剣を振り下ろす。
「ボシュ」
音を立てて玉が弾けた。それと同時に、骨の残骸が光の粒子に替わっていった。
「ケイト、ギルドの講習では何度か倒すか威力の高い攻撃をかければ倒せるって教わったけど、胸のプレートの裏にあった赤黒い玉を潰せば倒せるみたいだ。親指の先ぐらいの大きさ。」
「そうか、何度か倒すか威力の高い攻撃を入れると、おそらく核となっている玉ごと潰されるんだ。核の玉は的が小さいし、面倒だね。」
「まぁ、倒せる事はわかったし、日も暮れそうなので、戻ろう。」
5層のボスエリアに向けて戻り始めた。
5層ボスエリアで、夕食の準備をしながらツグトは口を開いた。
「6層では墓場エリアの先に洋館があって、そこを突破する必要がある。家の中では煮炊きができないから、砂漠のエリアが宿泊には便利だね。」
「夜になると風もぱったりやんだし、野営するには良い所だね。」
「しっかし、水重いよな。」
野営の準備の中で、一番重量お占めるのが水だ。今回は、2リットルのボトルを6個で2泊3日分の計算だ。ケイトに魔法で水を作れないか聞いてみたが、コップ一杯の水を作るのにも大量のMPが消費されるとの事で、緊急事態以外では難しいとの事だった。その水を魔石コンロにかけた鍋に入れ、干し肉、干し茸、干しフルーツを入れて塩を振りかけたスープを作る。このスープを夕食と朝食の2食×2人分作る。
「魔道コンロ高かったけど、温かいスープが飲めるのはありがたいね。」
庶民の僕は、5,000ゴルの魔道コンロを買う勇気が無かったが、ケイトがあっさり購入を決めた。薪を持って移動するわけにもいかず、現地調達できる小魔石で20回使えるコンロはありがたい。
「できたし、食べよう。」
できたスープにパンを浸して食べるが、スープに干し肉と干し茸の出汁がでておいしかった。
「色々考えたけど、荷物にならないドライ食材でできるスープは正解だね。」
「ケイトこれ、おいしいよ。」
ケイトと2人で考えたメニューを食べながら、今日の反省会をする。
「結局、大口ワームの巣って見つからなかったね。」
「ツグト、半日はここに着くまでに費やしているんだから仕方ないよ。」
「明日は、ここで1日探索ができるから頑張ろう」
「でも、むやみに探しても見つからない気がするな。」
「大口ワームの巣って、複数の大口ワームが集まって砂の窪みに固まっているんでしょ。」
「そうだね。」
「でも、その窪みでじっとしている訳じゃないよね。」
「ギルドの情報では、その中でウネウネ動いていて、虫の嫌いな冒険者とかは2度と見たくないって人も居るって言ってたね。」
「動けば、多少は砂が舞うと思うんだよね。砂が風で舞っている最中は駄目だけど、時々風の凪ぐときがあるじゃない。その時に回りに目を凝らせば、近くに巣があるとわかるんじゃない。」
「それ、良さそうだね。風のある時は移動して、凪いだら2人で背中合わせで砂の舞っている所を探す。又、風が吹き始めたら移動するでいこう。」
明日の探索の方針が決まった。
「それとさ、スケルトンなんだけどプレートの裏って、攻撃しにくいよね。ケイトは攻撃方法思いついた?」
「あれ、面倒だよね。でもやるとしたらウォーターカッターを縦に放って両断した1回目の攻撃が良かったかな。判ってれば、あの崩れた骨からプレート探して核を潰せば倒せたはずだし。」
「ぼろい盾で受けてくれたから潰れたけど、あの黒い骨で受けられたら弾かれる可能性があるよ。」
「そっか、じゃぁ後ろから玉を直接攻撃するしかないか。」
「そうだね。ぼちぼち明日に備えて寝ようか。」
食事も終わり、後片付けをしてキャンプで眠る。見張りの要らない安全ゾーンは、とてもありがたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます