第28話 飛ぶ斬撃
砂漠を暫く歩いたところで、大口ワームと遭遇した。
「あの口、よく見ると完全には閉じてないよね。」
ケイトが大口ワームを観察して言った。大口ワームの口は丸く、開くと1.5mに広がり、凶悪な鋸の様なギザギザの歯がならんでいるが、この歯が10cmぐらいの長さがあり、口を閉じると歯同時がぶつかって真ん中に隙間ができている。
「ケイト、あの隙間にウォータービーンズをぶち込めるか?」
「やってみるよ。 ・・・ウォータービーンズ。」
狙いを付けてウォータービーンズを放つ。口の中にぶち込まれた大口ワームは、怒って口を大きく開けて迫ってくる。そこに更にウォーターカッターを撃ち込んでワームを倒す。
「やったね。ケイト一人で討伐可能じゃん。」
「あぁ、2発とも当たってくれたから良かったけど、外れた時の対策も要るよね。」
「1発目が外れたら、僕が突っ込むよ。2発目はあれだけ的が大きいのだから、外れるとしたらウォーターカッターの端が引っ掛かるとかだよね。カッターじゃ無くて、マリさんのアローみたいな魔法は無いの?幅が狭ければ、引っ掛からないでしょ。」
「ウォーターランスって槍の形をしたものはあるけど、MPが6要るので外れたらもう一回ウォーターカッター撃った方がいいかな。」
「それより、ウォータービーンズの形を操作して釘のようにできない?それなら1発で仕留められそうだけど。」
「それは、良いかも。ちょっと練習してみるよ。」
そう言いながら、魔石を回収して次の大口ワームを探して歩いていると2匹の大口ワームが出てきた。
「ケイト、ちょっと試してみたい事があるから、右の方は任せてくれる?」
「じゃあ、さっきの釘をイメージして左の方をやってみるわ。・・・ウォーターニードル」
左をケイトに任せて、右に向かう。やるのは、飛ぶ斬撃だ。剣に魔力を流し、剣を振り上げて上から下に切り下げ、中断の位置で剣を止める。剣に纏った魔力を切り離すイメージで斬撃として飛ばす。
「ズバン」
うまく口に飛び込んで、大口ワームが粒子になって消える。再度、剣に魔力を流すが、MPが結構持っていかれた。ステータスを確認すると、MPの消費は8だった。
「ウォーターカッター」
ケイトの方は、1発で決められ無かったようで次の攻撃で倒していた。
「ツグト、ウォーターニードルは、尖りのイメージなのか、込めるMPが不足しているのか、まだ調整が必要だわ。」
「こっちも、倒せたけどMPの消費が大きい。もっと斬撃を小さくできないかこっちも調整が要る。」
「威力の測定ができるといいんだけどな。」
「3層のゴッグと並んでる岩、あれに撃ち込んで、撃ち込んだ所を割ったら威力がどれくらいか判るよ。」
「ウォーターカッターの威力向上の時にやったやつね。では3層に降りよう。」
3層に降りて、ゴッグならぬゴッグもどきの岩に魔法を叩きこんで、魔法の調整を行う。これらの岩を壊した場合も、ゴッグが再生されるタイミングで再生されるそうだ。
「ウォータービーンズ。・・・ウォーターニードル。」
「ズン、・・・スパン」
ケイトが2つの魔法を叩き込んだ横に、剣の先10cmに伸ばした部分だけを斬撃にして飛ばす。剣の先を伸ばした部分だけなら切り離すイメージが取りやすいため、威力を抑えるのに都合だ良いのだ。その後、それらの攻撃の深さを判定するために岩を両断した。
「ウォータービーンズが5cm、ニードルが10cm、僕の斬撃が20cmってとこだね。ニードルの深さが2倍になっているって事は、鋭さは十分に出てるのかな。」
「ウォーターカッターでも鋭さを追求したら更に2倍の深さに達した。ビーンズは、元々尖ったイメージを持って無いから、もう少し、威力は出せると思う。ウォーターカッターで、大口ワームを倒せている。ゴッグは一撃で倒せる様になったので50cm以上はある。只、2つに割れる事は少ないから70cmには達していないと思う。だから50cmを目途に威力の調整をしよう。」
その後、鋭さを追求したニードルやMP3を消費するウォーターアローを試してみたりした。僕の方は剣先20cm、30cmで深さがどう変わるかなどを検証した。
「今日はこれぐらいにして、帰ろう。」
日が暮れてからも検証していたので、帰る冒険者はほとんど帰ったようだった。3層から2層に降りた階層主エリアで、少し休憩する事にした。2層で宿泊するものは、今日は居ない様で僕たちだけだった。平原に腰を下ろして平原を眺めると真っ暗になっていた。
「ケイト、少し遅くなった。この暗闇を戻るのは、いくらマッドドッグやゴブリンとはいえ、危険だと思う。今日は、ここに野宿しよう。」
「そうだな、明日は神の日なので探索は休みにしよう。これからは、日帰りが難しくなっていくだろうし、明日は野営道具を買いに行かないか。」
「それは、良いな。パーティを組んで1週間が経ったけど、今の所うまく回っていると思う。仮のパーティって事だったが、正式なパーティにしても良いと思うんだが、ケイトはどうだ?」
「僕からもお願いしようと思ってたんだけど、決める前に少しお互いの話をしないか。」
「勿論いいけど。僕は、カール村の出身でお父さんは村のギルドマスターをやっている。ギルマスと言っても、小さな村なので、農民や少し鍛冶ができるので道具屋など何でもできる事をやっているって感じかな。お母さんは、ギルドの手伝いをしながら、薬草を薬にしたりもしている。後、2才年下の妹がいる。ランクが急激に上がったのは、訓練中に事故があったからだ。」
非常食用に持っていた乾パンを齧りながら話をする。ゴブリンの巣に落ちた顛末を話をして、僕からの話は終わった。しかし、それ以上にケイトの方が衝撃の話だった。
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