第27話 指名依頼

 土の日にギルドへ行くと、Dランクパーティ向けの指名依頼があるというので、話を聞くことにした。

「5層で探索していると届けが出ているのだけど、5層で採れる魔晶石の依頼があります。魔晶石は、Dランクパーティ向けの指名依頼になります。指名依頼になっているのは、パーティで無いと危険なのと実力の無いパーティだと全滅の危険があるためなの。又、ツグト君がCランクに上がるのも視野に入れて、パーティとしての実績も積んでおけば、パーティ自体がCランク認定されるようになるわ。」

 ミエラさんの説明を聞いて、ケイトと相談する。ケイトが魔晶石採取の説明をしてくれた。

「魔晶石は魔力を溜められる石で、大口ワームの巣で見つけられる。大口ワームの卵の殻が集まってできるのでは無いかと言われている。巣に居る複数のワームを討伐する必要があるので、パーティが必須と言われている。これからの修練次第で複数でも倒せるようになるとは思うこど、どうしようか?」

「魔石と魔晶石は別物なの?」

「魔石は魔物の魔力が溜まっているもので、魔道具や魔剣の燃料になる。魔石の魔力を使い切ると、再度魔力を補充する事はできない。魔晶石も使い道は同じだが、元々の魔力は溜まっていない。その代わり、人が魔力を補充する事ができる。」

「そうか、ミエラさん受けるのは良いけど期限に制限があると、ちょっと厳しいです。1,2週間かけても良いなら受けます。」

「この依頼の期限は1ヵ月なので、その間に達成してもらったら問題ないよ。」

「じゃぁ、受けさせて貰います。ケイトもそれで良い?」

「いいよ。それぐらいで倒せないとその上の層には行けないので1ヵ月中には達成しよう。」

 指名依頼を受けて、ダンジョンに向かった。


 4層まで上がってきて、キーキーと対峙していた。ケイトと順番で倒していたので、次は僕の番だ。

「次は、僕の番の番だね。」

 そう言って、剣の魔力を伸ばしてキーキーを狩る。

「スパッ!」

 単独のキーキーを切り倒して魔石を拾っていると、奥から人の気配がして来た。

「ドタドタッ」

 弓を持った17,8才ぐらいに見えるエルフの女性が走ってきた。プラチナブロンドの髪をポニーテールにひっつめて新緑の瞳と緑の上下の服が印象的な美人だった。向こうもこちらに気が付き叫ぶ。

「3匹のキーキーに追われているの。一緒に戦うか逃げるかお願いします!」

「奥を見ると、もう一人いてキーキーの超音波カッターを弾いていた。」

「カンカンカン。」

 3匹から放たれるカッターを全て弾いたところで、身をひるがえしてこちらに走ってくる。

「一緒に戦うよ。ケイト、左のをお願い。僕は真ん中のを叩く。あなたたちは、右のを担当してください。」

 担当を決めて、走り出す。向こうから走ってきたメンバーにはエルフの娘が指示を出す。

「ミャオ、こちらのパーティと共闘するわ。右のキーキーを倒すから壁をお願い。」

 そう言って、弓を構える。矢筒が無いのでどうするのかと思っていたら、右手から光の矢を出していた。

「ダブルアロー!」

 2本の矢を右のキーキーに飛ばす。右のキーキーは辛うじて2本の矢を躱す。それを見て僕は真ん中のキーキーに剣を伸ばす。

「スパッ!」

「ウォータービーンズカルテット、・ズン!」

 ケイトと僕の担当を倒したところで、再度エルフの方を見る。

「カンッ」

 もう一人のメンバーは、猫耳で15才ぐらいの金の瞳をした赤い縮れ毛のかわいい女の子で、茶色スパッツに黄色のミニスカートをはいており、赤のチョッキの下から巨きな胸が主張していた。武器は、2振りのシミラーで超音波カッターを弾いていた。

「ダブルアロー!」

「ふんっ」

 再度、エルフの嬢が2本の矢を放つと同時に、猫耳の子がシミラーに纏った魔力を斬撃に変えて飛ばす。2本のバツ印の斬撃を避けようとしたキーキーの眉間を1本の矢が射抜く。落ちてきたキーキーが光の粒に変わった。


「ありがとう、助かったわ。私たちは、Dランクパーティのドリーマーと言います。私はマリ、見ての通りのエルフよ。こちらは、猫獣人のミャオ。よろしくね。」

「助けてくれて、ありがとう。助かったわ。」

「僕たちは、Dランクパーティのブルースカイです。僕は、ツグトで、こっちはケイトです。2人とも人族です。」

「ケイトです。よろしく。」

「あなた達、それぞれ単独でキーキーを倒せるのね。本当に助かったわ。」

 マリに再度お礼を言われた。3匹に追われていたのが気になったので、状況を聞く。

「3匹の群れって珍しいですね。」

「いえ、2匹のキーキーに手間取っていたら、もう1匹が合流してきて3匹になったのよ。流石にまずいと思って、撤退してた所だったの。」

「ところでケイトさん、変わったウォータービーンズを使ってたけど秘密でなければ、どういう魔法か教えて貰えないかしら。」

 マリがウォータービーンズカルテットに食いついてきた。ケイトが答える。

「同じ冒険者なので、タメ口でお願い。僕は構わないけど、発案はツグトなのでツグト良いかな?」

「別に良いよ。それで、ドリーマーの実力が上がるなら良いことだし。」

「じゃぁ、ウォータービーンズは水魔法の初級魔法だよね。キーキーは素早いけど防御力が弱いので魔法を撃ちだしてからビーンズの粒を2つに分けることにしたんだ。これをウォータービーンズデュオって言っているんだけど、そのウォータービーンズデュオを両手で同時に撃つことでウォータービーンズカルテットって技にしている。」

「なるほど、確かに同時に4発撃てたらキーキーも簡単には躱せないって訳ね。その2つに分けるって技をアローに流用させて貰っても良いかしら。」

「使って貰っていいけど、魔法を出した後で分けるのは、制御が難しいから練習が必要だよ。」

「この4層で壁にぶつかっていたの。練習して、何としても物にするわ。」

 ケイトが説明を終えたので、僕からミャオに向けて話をする。

「ミャオさん、一言いいかな?」

「わたし?さんはいらないかにゃ。舌っ足らずにゃので、聞き取りにくくてごめんにゃ。にゃに?」

「じゃぁ、ミャオはさっき、十字に斬撃とばしてたよね。キーキーは超音波で物を判断しているんだけど、魔力の形まで結構はっきり認識しているみたいなんだ。十字斬撃も形を見極めてるので、回避できるんだ。でも、斬撃を少しずらすと、先の来た斬撃を認識して避けるので、直ぐ後を追いかけてくる斬撃は当てやすいんだ。斬撃同士が近すぎても一つの形と認識されて避けられるし、離れ過ぎても次の斬撃を認識されて避けられるので、調整が難しいけど。」

「にゃるほど、それは気が付かなったにゃ。ちょっと、試してみるにゃ。アドバイスありがとにゃ。」

「うん、頑張って。それと、あの飛ぶ斬撃を取り入れさせて貰ってもいいかな?」

「飛ぶ斬撃は、皆使っている技にゃので、別に問題ないのにゃ。」

「ありがとう。じゃぁ、僕たちは5層に向かうので頑張ってね。」

 そう言って、ドリーマーとは別れた。

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